マイクロソフトは6月3日、2004年冬に発売を予定していたXbox用MMORPG(大規模多人数参加型ロールプレイングゲーム)「トゥルーファンタジーライブオンライン」(以下、TFLO)の開発を中止すると正式に発表した。「TFLO」は、「ドラゴンクエスト8」の開発も担当しているレベルファイブが開発していた注目作。“魔法使いがほうきにのって空を飛び、王宮騎士団が甲冑に身を固め、モンスター討伐の遠征に向かうファンタジックワールド”を舞台とした、Xbox Liveのボイスチャット機能を使った新機軸の純国産のMMORPGとして、発表当初から人気を集め発売が待望されて、βテスト開始まで秒読み段階に入っていただけに、突然の開発中止の決定が残念でならない…
開発中止の理由として,マイクロソフト側は「今冬発売を目指し開発を続けてきたが、斬新なオンラインゲーム体験を提供できる状態への進捗がいまだ見込めない」などとコメントしている。開発担当のレベルファイブ代表取締役社長・日野晃博氏は、「TFLOの世界はすでに完成しており、ある程度の仮想生活を送ることは可能だった。斬新な試みを数多く含んだゲーム内容と格闘しながら、開発スタッフ自らがプレイしてみたいネットワークゲームを目指して開発を続けてきたが、予想以上の開発期間を要してしまった。現状のさまざまな要因を踏まえて熟考した結果、『TFLO』の発売を見送るという判断にいたった。発表当初より支援してくれたユーザーには心からお詫びするとともに、このことを教訓に自分たちの技術をさらに磨き、新たな挑戦を続けていきたい。」と自社HP上でコメントしている。
さて、この一連の報道をどう受け取るべきか…裏にどんな事情があったのかは、イチユーザーに過ぎない私には皆目検討も付きませんが、この発売中止が日本におけるXboxの事実上の撤退宣言と解釈されても仕方無いくらい、重大な意味を持つものであることは確実です。「ドラクエの開発担当が作ったオンラインゲームが遊べるのはXboxだけ」という最強のプレミアムカードを失っただけではなく、同時に、TFLOが発売されることを見越してXboxを買って待ってくれていたユーザーからの信頼をも失ってしまったのです。数にしてみれば10万人にも満たないかもしれませんが、もっとも購買力があり個々の影響力が強いマニアからの支持を失ってしまえば、それは回復不可能な痛手となるでしょう。
ここから先は完全に私の想像でしかありませんが、今回の開発中止はやはり「ドラクエ8」が無関係であるとは思えません。おそらく、2004年度内(2005年の1月〜3月)に「FF12」を発売し、2005年度内に「ドラクエ8」を発売したい、と考えているスクウェア・エニックスが、ゲームの発売後も世界の維持管理と、継続的な修正パッチの提供に多くの開発要員を割かなくてはならないMMORPGと、ドラクエ8の開発を掛け持ちすることに、難色を示したのではないだろうか?
ソフトの開発とサーバー環境の整備に莫大な投資をしてきたマイクロソフトが、ここまでスッパリとした幕引きを承認した裏には、どんな生臭いやりとりがあったのかは不明ですが、ひとつ読み違いがあったとすれば、今回の件での悪役は完全にマイクロソフトだ、という印象を与えてしまったことです。多くの日本人は、「やっぱり、TFLOとドラクエの両立は無理だよね。どっちかを取るしかないなら、断然ドラクエだよ」と答えますからね。開発元のレベルファイブに同情こそすれ、強く非難する理由なんてありません。非難の矛先はすべてマイクロソフトに向いてしまうのです。事実であるかどうかは問題ではなく、それが企業のイメージバリューというものであり、日頃の行いというやつですよ(笑)
マイクロソフトのユーザーを舐め切った今回の一件のツケは、相当高く付きそうですね…
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