Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.108
2004/06/06


【News Headline】
  • 佐世保の小6女児同級生殺害:ネットの中傷書き込みが殺意に…
  • 【mini Review】
  • DVD
  • : 君が望む永遠DVD(4)
  • DVD
  • : マリア様がみてる コレクターズエディション2
  • 雑誌
  • : 週刊ファミ通 6月17日号(vol.809)
    【Weekly Column】
  • Xboxユーザー期待の「TFLO」開発中止が決定

  • ■News Headline

     【佐世保の小6女児同級生殺害:ネットの中傷書き込みが殺意に…】 
     長崎県佐世保市の小学校で6年生の御手洗怜美さん(12)が首を切られ死亡した事件で、長崎県警佐世保署の事情聴取に対し加害者の女児(11)は、怜美さんと交換日記やホームページの掲示板でのやりとりのトラブルが原因だったと話した。家裁送致された女児は、死亡した御手洗怜美さんら同級生から「重たい」と言われたことをきっかけに怜美さんとの亀裂を深めていた。女児は、怜美さんに謝罪を求めたが、逆に「ぶりっこ」とホームページの掲示板に書き込まれて腹を立てていたという。最終的には事件4日前、体重に関する内容を書かれ「殺そうと決意した」という…

     今回の事件については、小学校から情報教育をするなら、ネットが持つの危うさも併せて教えるべきだったとか、命を尊重する道徳教育が必要であるとか、映画「バトル・ロワイアル」を参考にして犯行に及んだという証言との符合など、様々な角度から問題が指摘されています。大学の偉いセンセイは「会って話せば、表情や身ぶりから、相手の真意を測れるが、文字だけのネット上のコミュニケーションは、表現が稚拙だと、感情の行き違いが生じやすい」と指摘しているが、そんなのは当たり前のことである。だからこそ、意志疎通の難しいネットでのコミュニケーションというのものにおいては、対手に対して過剰と思えるほど遜って気を遣い・自分の発言に対して細心注意を払って責任を持たなくてはならないし、それだけやっても真意が必ずしも伝わるとは限らない、という大前提を知っておかねばならないのです。

     あるいは、本来顔が見えないはずの相手とのコミュニケーションであるなら、そう割り切ることもできたのかも知れません。しかし、今回のケースのように、相手が学校内というごく身近で手の届く存在であった場合、ネット情操形成の未熟な子供が、誹謗中傷に対して平静でいられるとは考えにくい。明確な殺意を抱いて表沙汰の事件になるケースは少ないかもしれないが、程度の差こそあれ、無視されたり嫌がらせを受けたり、いじめに発展することも想像に難くない。

     事件が起きた大久保小学校でも、道徳の時間に「ネット上で人を中傷してはいけない」と指導している程度だったというが、それが「マナー」だと考えている時点で大間違いなのです。なにしろ、子供というものはオトナの話なんて聞いちゃくれません。転んで怪我をしてみて初めて痛みが分かり学習する、子供のその本質は、IT時代の今も昔も変わりません。厳格な「ルール」として危険性を含めて実体験として教えるような教育プログラムが必要なのではないでしょうか?(もっとも、その役割は本来、親や教師たちの不文律的な人間教育が担うべきものなんですけどねぇ…)


    ■mini Review

     【君が望む永遠DVD(4)】 メディアファクトリー / アージュ 
     前回のミニレビューでは、DVDの1巻〜3巻までを一気に鑑賞&執筆したため、異常に高いテンションで盛り上がってしまいましたが、1ヶ月近く間を空けてしまった今回は、気持ちがリセットされてしまって、感情が沸点に達する前に2話分が終わってしまいました。まぁ、エピソード的にも第4巻に収録されている7・8話は「つなぎ」としての位置づけなのは本当なんですけど。嵐の前の静けさというやつでしょうか。原作ゲーム版を知っている人間にとっては、ところどころ胸に「ぐさっ」と来るシーンはいくつかありましたが、これはまだ伏線段階なので涙爆発堤防決壊には至りません。基本的に遙ルートなので、茜ちゃんの複雑な心理葛藤が説明不足になってしまうのは仕方が無いですけど…敢えて駄目出しするとすれば、3年前と同じシチュエーションでの「俺たちにはいくらでも時間があるんだから」というセリフを、昔とオーバーラップさせて、もうちょっと効果的に演出して欲しかったですね。

     穂村さんが相変わらずセリフ無しなのは良しとして(いいのか?)、天川さんと文緒っちのやり取りは、とても微笑ましかったですね。文緒っちのダイナマイトナースっぷりは過剰すぎるかもしれませんけど…ところで、妙に水月の上司の出番が多いのは気のせいでしょうか?香月先生より目立ってる?(次回のミニレビューは、最終巻が出てからにした方がいいかもしれませんね)

     【マリア様がみてる コレクターズエディション2】 アニメ公式サイト 
     「マリみて」のアニメDVDには、予約限定版のコレクターズエディション(以下、CE)と通常版とで、シリーズナンバリングが違うので大変紛らわしいのですが、CE2に収録されているのは、第4話「黄薔薇革命」と第5話「戦う乙女たち」の2本であり、通常版の第三巻と同一の内容です(映像特典も同一のものです)。違いといえば、LPサイズの巨大なケースと中開きの原寸カラーイラストが付いて来るくらいのものです。CE2の表紙は祥子様。でも、通常版の第三巻の令&由乃の方が内容には合っているような気がします。このままで行くと、CE版は通常版より1回分少なくなるけど、そのイラストはどうするんでしょう?「マニアなら両バージョン買って当然」ということなんでしょうか?

     さて、肝心の観感はというと…1〜3話に比べて、祐巳ちゃんの百面相の演出に、格段に力が入っていると感じるのはなぜでしょう?バス停での祥子様とのやりとりの百面相は漫画的演出でとても面白かったし、お腹の虫がなるシーンでも大笑いさせてもらいました。今回の話の主役は、前エピソードでは一言しかセリフの無かった由乃さんだけど、猪突猛進・先手必勝の由乃さんの本領発揮はむしろこれからだから、この先の活躍に期待していましょう(ちゃんと声優さんが「病弱由乃さん」と「鉄砲玉由乃さん」の演技を使い分けてくれる…かな?)。欲を言えば、由乃煩悩な令様の狼狽振りがチト物足りなかったのと、黄薔薇さまの奇行が省略されて伏線として弱かったことくらいですかね。それにしても、リリアンかわら版ってカラー印刷で何気に豪華ですね(笑)築山美奈子様もいい味出してるし。「タクヤ君」のエピソードでの抜けっぷりはアニメでもちゃんと再現されるのかなぁ…原作を知っていると先の事を考えて楽しめますが、原作を知らない人にとっては、普通の中継ぎエピソードにしか映らないかもだ。やはり黄薔薇さん家は地味なのであろうか?

     【週刊ファミ通 6月17日号(vol.809)】 エンターブレイン 
     巻頭の「PSPとニンテンドー・ディーエス(以下、NDS)はゲーム開発者の目にどう映ったのか?」がとても興味深かった。PSPでは、液晶の綺麗さを上げる声が多かったものの、バッテリー駆動時間やUMDメディアの普及問題など、不安要素が多く指摘されていました。それに対してNDSは、多くの驚きを持って迎えられたようです。ダブルスクリーンであることよりも、タッチパネル機能が搭載されたことが、開発者のアイディアを強烈に刺激したみたいですね。ただし、その開発意欲が会社の経営判断を動かすほどのものになるかどうか、そこが問題なのですが…

     桜井政博さんもコラムでNDSについて採り上げています。さすがは元任天堂(正確にはHAL研)のゲームデザイナーだけあって、「玩具ならではの手触り感」を追求したNDSの理想をしっかりと汲み取ってくれています。ただし、この新しい感覚を楽しむためには「基本的にDS専用ソフトであることを前提にしなければならないのは、サードパーティーにとってリスクが高い」と冷静な分析もされています。NDSの課題は、サードパーティーがNDS専用ソフトを作れるだけの市場をどれだけ早期に立ち上げることができるか?ここに掛かってくるのかもしれませんね。

     まだまだ続くNDS旋風。ファミ通の浜村編集長も興奮冷めやらず、この新しい遊びの提案に夢を広げているようです。何しろ、ビジネス関係者しか入れないE3なのに、NDSの試遊台には90分待ち以上の行列ができ、コナミの小島さんのような大物でも人が多すぎて遊べないくらいのフィーバーぶりでしたからね。報道写真だけでは伝わらない「異質な遊びの可能性」の本質を、ゲーマーの視点で適確に捉えていると思います。来週のPSP分析との温度差は必見?


    ■COLUMN

     【Xboxユーザー期待の「TFLO」開発中止が決定】
     マイクロソフトは6月3日、2004年冬に発売を予定していたXbox用MMORPG(大規模多人数参加型ロールプレイングゲーム)「トゥルーファンタジーライブオンライン」(以下、TFLO)の開発を中止すると正式に発表した。「TFLO」は、「ドラゴンクエスト8」の開発も担当しているレベルファイブが開発していた注目作。“魔法使いがほうきにのって空を飛び、王宮騎士団が甲冑に身を固め、モンスター討伐の遠征に向かうファンタジックワールド”を舞台とした、Xbox Liveのボイスチャット機能を使った新機軸の純国産のMMORPGとして、発表当初から人気を集め発売が待望されて、βテスト開始まで秒読み段階に入っていただけに、突然の開発中止の決定が残念でならない…

     開発中止の理由として,マイクロソフト側は「今冬発売を目指し開発を続けてきたが、斬新なオンラインゲーム体験を提供できる状態への進捗がいまだ見込めない」などとコメントしている。開発担当のレベルファイブ代表取締役社長・日野晃博氏は、「TFLOの世界はすでに完成しており、ある程度の仮想生活を送ることは可能だった。斬新な試みを数多く含んだゲーム内容と格闘しながら、開発スタッフ自らがプレイしてみたいネットワークゲームを目指して開発を続けてきたが、予想以上の開発期間を要してしまった。現状のさまざまな要因を踏まえて熟考した結果、『TFLO』の発売を見送るという判断にいたった。発表当初より支援してくれたユーザーには心からお詫びするとともに、このことを教訓に自分たちの技術をさらに磨き、新たな挑戦を続けていきたい。」と自社HP上でコメントしている。

     さて、この一連の報道をどう受け取るべきか…裏にどんな事情があったのかは、イチユーザーに過ぎない私には皆目検討も付きませんが、この発売中止が日本におけるXboxの事実上の撤退宣言と解釈されても仕方無いくらい、重大な意味を持つものであることは確実です。「ドラクエの開発担当が作ったオンラインゲームが遊べるのはXboxだけ」という最強のプレミアムカードを失っただけではなく、同時に、TFLOが発売されることを見越してXboxを買って待ってくれていたユーザーからの信頼をも失ってしまったのです。数にしてみれば10万人にも満たないかもしれませんが、もっとも購買力があり個々の影響力が強いマニアからの支持を失ってしまえば、それは回復不可能な痛手となるでしょう。

     ここから先は完全に私の想像でしかありませんが、今回の開発中止はやはり「ドラクエ8」が無関係であるとは思えません。おそらく、2004年度内(2005年の1月〜3月)に「FF12」を発売し、2005年度内に「ドラクエ8」を発売したい、と考えているスクウェア・エニックスが、ゲームの発売後も世界の維持管理と、継続的な修正パッチの提供に多くの開発要員を割かなくてはならないMMORPGと、ドラクエ8の開発を掛け持ちすることに、難色を示したのではないだろうか?

     ソフトの開発とサーバー環境の整備に莫大な投資をしてきたマイクロソフトが、ここまでスッパリとした幕引きを承認した裏には、どんな生臭いやりとりがあったのかは不明ですが、ひとつ読み違いがあったとすれば、今回の件での悪役は完全にマイクロソフトだ、という印象を与えてしまったことです。多くの日本人は、「やっぱり、TFLOとドラクエの両立は無理だよね。どっちかを取るしかないなら、断然ドラクエだよ」と答えますからね。開発元のレベルファイブに同情こそすれ、強く非難する理由なんてありません。非難の矛先はすべてマイクロソフトに向いてしまうのです。事実であるかどうかは問題ではなく、それが企業のイメージバリューというものであり、日頃の行いというやつですよ(笑)

     マイクロソフトのユーザーを舐め切った今回の一件のツケは、相当高く付きそうですね…


    文責:GM研編集部編集長 gonta