プロ野球の2004年のペナントレースが開幕してはや1ヶ月が経過しましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?阪神一色に染まった昨年とは違い、今年のセリーグは大混戦模様です。5月9日現在も団子状態が続いていて、数日前まで首位だったチームが、翌週には最下位に転落していたりするなど、この先の予想は非常に困難です。開幕前ならなんとでも予想できますが、いざ始まってしまうとデータが揃い過ぎて、逆に予測は難しくなる一方です。そこで、今年はこの際、恒例の順位予測は放棄して、各球団の戦力分析による傾向と対策をまとめるだけに止めておこうと思います。
まずは、巨人について。ローズと小久保の新加入により「史上最強打線」と持て囃されて、開幕前には野球解説者の大半が巨人を優勝予想したにも関わらず、蓋を開けてみれば一発でしか点の取れない繋がりの無い打点(打線とは言えない)と、中継ぎ・抑えの相変わらずの投壊で、いまひとつ波に乗り切れないでいます。NHKの解説者になった広澤も「今年の巨人ファンの楽しみは、連続試合ホームランの記録が何試合までのびるかだけ」と言い切っていますしね。そもそも、エース級の投手がちょっとでも調子が良ければ、おいそれと大量得点なんて望めません。ホームランは最も効率の良い得点方法ですが、それは相手投手にとっても同じ事で、後に尾を引くようなダメージが少なくて容易に気持ちの切り替えができてしまうのです。ホームランによる1発を恐れず、ガンガン攻め込んでくるピッチングされたら、ヒットの連打なんてできなくなります。むしろ、目先の1点を恐れるプレッシャーを掛け続けて行く方が、相手投手にとっては嫌な攻め方なんですけどねぇ…もっと深刻なのは投手陣。終盤に継投ミスで試合をぶち壊すいつもの巨人の姿は健在です。ストッパー不在のチームが優勝したケースなんて、近代野球ではほとんどないですけど…こんな酷い防御率なのに、この順位に止まっていることの方が不思議なくらいですよ。まぁ、元々打のチームというものは、打ちまくって勝ちまくるか、打たれまくって伸び悩むか、そのどっちかしかない博打みたいなものですからね。優勝か下位転落か?もっとも、そのくらいの方が野球本来の面白さがあっていいと思いますよ。ナベツネみたいに優勝することだけを脅迫観念にして野球を観るよりずっと楽しい。そういう点では、今年の巨人というものは妙に親近感が湧いてくるのですが…
次に、阪神について。開幕前には、鳥谷やキンケードの新戦力の充実によって、巨人に次ぐ優勝候補の筆頭に挙げられながら、どうも波に乗れなくて混戦から抜け出せずにいます。1+1が2にならないのが、野球の恐ろしさというものですね。岡田新監督の采配については、まだキャラクターを掴みきれていないので何とも言えませんが、思いの外柔軟な考え方の持ち主のようですね。まずは、ゴールデンルーキー鳥谷の起用に固執しなくなったこと。同じポジションのライバル:藤本の充実振りを見れば、鳥谷が控えに回らざるを得ないのは誰の目にも明らかなことなのですが、スタメンを確約して獲得競争に勝ったという経緯や、グッズの売り上げに関する球団サイドの突き上げなどもあるので、ここまでスパッと見切りをつけることができるのは、なかなか大したものですよ。「1番:赤星、2番:藤本、3番:今岡」の新打順への切り替えも大当たりでした。「1番:今岡、2番:赤星、3番:キンケード」という打順では、外国人特有の早打ちが赤星の盗塁をスポイルしてしまうし、長打力のある今岡を1番にしておくのはもったいない。いくら先頭打者ホームランを打っても、1点にしかならないんでうsから。また、右打ちが格段に上手くなったアリアスは打率も残せるようになったし、控え選手も充実しているので、この先怪我人が出ても極端な戦力ダウンはないでしょう。心配なのは投手陣。スロースターターの井川はそのうち復調するだろうけど、伊良部の復帰はいつになるか分からないし、前川もまだセリーグの野球に馴染めていない。昨年は磐石を誇ったリリーフ陣も、安藤とウイリアムスにキレが戻らなくて、ストッパーを固定できないでいるし…優勝争いに踏みとどまるには、いかに接戦をものに出来るかどうかに掛かってくるでしょう。
次に、中日について。落合新監督の「オレ流」で注目…というより奇異の目が注がれていたものの、シーズンが始まってみると、その采配は思いの外オーソドックスで分かり易いものでした。投手交代の際に必ず自分でマウンドに行くなどして、とにかく選手が気持ちよく試合に臨めるようにする。元々、投手力については球界トップクラスの実力あるチームなのだから、後は万年貧打の打線強化が課題だったのですが、福留の新4番と左投手相手でも先発起用してもらえるようになった井上によって、全体の打力は確実にアップしていますが…まだまだ迫力不足という感は否めません。大きな連敗はしないけど、連勝街道まっしぐら!というほど勢いに乗り切れていないので、優勝…となると少々厳しいかもしれません。
横浜については、何と言っても、大魔神佐々木の復帰効果が大きいですね。確かに、全盛期のようなスピードボールが投げられるわけでもなく、圧倒的な威圧感があるわけでもないが、大リーグ仕込みの投球術と抜群のコントロールで、打者を抑えるかけひきは、さすがの一言。勝ちゲームに持ち込めば佐々木がいる、そうチームが信じることによって、先発投手陣は0に抑えることに気負うことなく、6回7回でゲームを作ることに専念し、打線も「終盤に1点でも勝ち越せば勝てる」と考えることができる。負け癖が染み付いていて低迷するチームにはなによりの薬である。金城と石井の復調に、古木・村田の若き大砲、ここに不振のウッズの調子が上がってきたら、他チームにとっては大きな脅威となるでしょう。少なくとも、ここ数年のように「横浜銀行」と呼ばれてカモにされるようなことはないでしょうね。
ヤクルトは…ちょっと苦しいかな。大物が抜けるたびに、若手が台頭してくる「意外性のチーム」と言われ続けてはやウン年。昨年のオフには、取り立てて何の動きも無かったことが、現在の苦境を招いている…かどうかは定かではありませんが…とにかく先発投手の駒が足りないし、ストッパー高津の後継者として期待していた石井と五十嵐がともに調子が上がってこないし、頼みの大砲ラミレスもホームランが減ってしまってし、チームの大黒柱である古田のリードとキャッチングに衰えの影がちらつくようになってきたし…騙し騙しやりくり上手で凌いできていますが、この先上位を狙っていくのはしんどいかも知れません。意外性のある若手がどれだけ出てくるか鍵となるでしょう。
いつも春先だけは調子が良くて「鯉の季節」と呼ばれてきた広島ですが、今年も連休前くらいまでは絶好調でした。その原動力のなったのが、「赤いゴジラ」こと10年目の嶋。投手から野手に転向し、今年ようやくレギュラーの座を掴んだ苦労人の思い切りのいいバッティングに引っ張られて、チームの連勝を重ねていましたが、やはり投手陣への不安がつきまとっています。昨年のストッパー永川の乱調で勝ちゲームを落とすこともしばしば。広島市民球場の狭さでは、打撃戦に持ち込むしかないとはいえ…選手層の薄さも相変わらずであり、主力に怪我人が出ないことが優勝の大前提になってくることでしょう。新井のスランプ脱出にも期待。
※来週はパリーグ編。
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