「さよなら絶望先生」とは? 糸色望は、すべての物事をネガティブに捉えて絶望してしまう高校教師である。名前を横文字で書くと、文字通り「絶望先生」。何かにつけて絶望しては自殺未遂を繰り返す割には、本当に死にそうになると「死んだらどーする!」と逆ギレ。そんな心の弱い大人な絶望先生と、さらに個性的な(不安定な)生徒達が出会ってしまったのです。 何でもポジティブにしか取れない傍迷惑な暴走少女:風浦可符香(P.N)、不登校→不下校ひきこもり少女:小森霧、ストーカー少女:常月まとい、しっぽフェチ少女:小節あびる、人格バイリンガル少女:木村カエデ(楓)、もじもじ毒舌メール少女:音無芽留、几帳面だが粘着質少女:木津千里、不法入校・難民少女:関内・マリア・太郎(女性)… そんなちょっと(かなり)危ない学園”異”風景を、ネガティブギャグ漫画の第一人者:久米田康治が描くギリギリの綱渡り喜劇、それが「さよなら絶望先生」なのです。 マガジンでも久米田節は健在なり 26巻もの単行本巻数を重ねながら、とうとう最後までアニメ化の浮いた話もないまま、不可解なタイミングで週刊少年サンデーでの連載を終了した「かってに改蔵」。その経緯には様々な憶測がありましたが、真偽のほどは別としても、あのブラックでかつ小人者な独特の自虐ネガティブギャグの斬れ味を惜しむ声が、漫画マニア層から上がっていたのは事実であり、数ヶ月後週刊少年マガジンでスタートした本作は、主にマニア書店界隈から意外すぎるくらい熱烈歓迎されたものです。 ラブコメ又聞き場外戦(通称)でも色々と噂のあった、赤松健先生と同じマガジンで学園モノ…ということで、どうなるのか不安もありましたが、蓋を開けてみれば普段着のままの久米田節が健在でした。むしろ、際どい時事小ネタにすべてを賭ける不安定さではなく、キャラクターとテーマの中での小ネタという位置づけで「丸ごと不安定」な作風へと進化?しているように感じます。特定のキャラ(改蔵で言えば地丹)でオチに駆け込むこともなく、1話1話の不安定さそのものをギャグとして読めること、それが久米田節がマニアに支持されている所以なのかも知れませんね。 ギリギリの綱渡り喜劇 そんな風に、漫画の中では不安定である事をしっかりとギャグに昇華させている本作ですが、そのバックボーンにある暗黒面がいかほどのものなのかは、単行本の巻末に収録されている書き下ろし「紙ブログ」から読み取ることができます。「三生のお願いだからアニメ化してください」「日陰権を主張します」「打ち切りの場合は黒い煙を上げてください」などなど…読んでいると本当に心が不安定になりそうなエッセンスが満載です。漫画本編とは違って笑いの救いはどこにもありませんが、こういう暗黒面からあのネガティブギャグが生まれると考えれる方には、マニアックな楽しみ方のひとつとして是非オススメしたいですね。決して一般受けする作品ではありませんが、少数派であることに面白さを見出せる方・普通の王道漫画の大人しさに物足りない方に、是非オススメしたくなる、そんな逸品です。 First written : 2006/01/15
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