「かってに改蔵」とは? ”爽やか青春漫画路線”全盛の週刊少年サンデー連載陣の中にあって、例外的にひねくれた異彩と妙なオーラを放つ”自虐系ギャグ漫画”、それが「かってに改蔵」です。主人公の「勝改蔵」は、ちょっと思い込みが激しい高校生。ある日、運悪く落ちてきた人体模型と正面衝突してしまい、科特部の部室ですず部長に介抱してもらったのを、改造されてしまったと勘違い!改造人間になったからには、正義のために悪と戦わねばならない!と決心をした改蔵は、今日も敵を探し続ける…あらすじを真面目に書くとこうなりますが、99%本筋とは全く関係ありません。あぁそういえば、そんな前振りもありましたねぇ(遠い目)、という程度の設定に過ぎません。作者自身がその設定をほじくり返して笑いを取ったりするくらいだし、そもそも、改蔵の「悪との戦い」の実態とは、世の中の矛盾を正すという大義名分の元に、調査という名目で他人の秘密や恥を暴露しまくるという、他人にとっては非常に迷惑極まりない存在だったりするんですがねぇ… 「調査」という名の「暴露」 前述のように、この漫画の最大の魅力は、「調査」という名のもとに列挙される小ネタによる「暴露」にこそあります。ディープなオタクでもなかなか通じない、恐ろしくマニアックなゲームネタや漫画ネタを連発したり、どんな事象でも強引にガンダムネタに変換して例えてみて、さらに問題をややこしくしてみたり、絵にも描けない某有名アメリカねずみや某大企業をギリギリの線で茶化してみたり、サンデーで連載を持っている同業者(漫画家)の、恥ずかしい話(万乗先生のパンツ(別名:BP)へのコダワリ)を暴露してみたり、何かにつけて藤田和日朗先生を引き合いに出してみたり、そして、単行本の巻末に収録されている「今巻の反省文」では、自分の漫画家としての恥ですら惜しげもなく披露してしまいます。 W杯サッカーの人気に便乗してみたり、話題の某超大作アニメをネタにしてみたり、時事ネタを取り入れてみたり…時流にはトコトン迎合しよう! 笑いが取れるなら魂すら売り渡しましょう!お隣の子供にセーラームーンのサインをねだられたことも、一向にアニメ化されないこともネタにしてしまいます。たまに巻頭カラーページをもらったりすると、浮かれてカラー自体をネタにして「巻頭カラーなんて器ではございません!」と言ってみたものの、単行本になるとモノクロになってしまってネタの意味が分かりづらくて余計みじめな気分になったり、自分の過去作品を「間違っちゃったラブコメ」と言ってみたり…痛い!痛すぎです!時には痛すぎて、笑いどころで笑えないことさえも… でも、1話完結のギャグ漫画を週刊連載で維持するということは、まさに身を切り売りするような過酷なものなのです。 エスカレートする放し飼いギャグ漫画 しかし、何だかんだ云っても、この作品は週刊少年サンデーの中で独特の存在感を発揮して、マニアックなファンと定位置を確保して、いつの間にやら立派な長寿連載作品になってしまいました(久米田氏本人は「連載まんがの引き際は10週まで。それ以上は引っぱりすぎ」と小ネタで言っていますが…)。この作品は恐ろしく読み手を選ぶ漫画ですが、ひとたびこのギリギリの際どいセンスを味わってしまうと、この言いたい放題・やりたい放題の芸風がクセになってしまいます。(でも、小ネタの元ネタがほとんど理解できるということは、社会的には少々”アレ”なのかもしれませんが)。このエスカレートする放し飼いギャグ漫画はどこまで行ってしまうんでしょうねぇ…麦は踏まれて強くなる?
First written : 2002/09/06
Last update : 2003/10/27 |