魔法少女リリカルなのは(コミックス)
漫画作画:長谷川光司、 原作:都築真紀
 ファンタジー  勇気と想いの魔法少女物語  全1巻 
初出:メガミマガジン、コミックキラリティ

「魔法少女リリカルなのは(コミックス)」とは?

 ”熱血魔法少女バトルアニメ”というキャッチコピーで思わぬ大人気作品となった、「魔法少女リリカルなのは」。いかにもなネームングとは裏腹に、魔法バトルアクションも背景テーマもハードな展開の連続です。届かない言葉と想い・優しいから壊れた心、痛みと絶望と涙…それでも少女たちは何度もぶつかりあう。信じた想いが強いほど、譲れない気持ちは強くなって。だけど、伝え合う事を諦めたくないから…

 めぐり合いは戦いの嵐の中。触れ合うことのできない想いも、届かない言葉も、願いも悲しみも分け合いたいと思ったから…本当の自分を始めるために… 友達になりたいと伝えた少女と、まっすぐな瞳と言葉に向き合うことを決めた少女。2人の少女の時間は、出会ってから初めてお互いの名前を何度も、何度も呼び合うことで始まりを迎えた。そんな熱く優しい気持ちになれる原作アニメ版では描かれなかった幕間:サイドストーリーをコミックス化した作品、それが今回ご紹介する「魔法少女リリカルなのは(コミックス)」なのです。

※原作のアニメ版の詳細はこちらをご参照下さい。「なのは」「なのはA's

同時展開されるサイドストーリーというもの

 このようなオフィシャルコミックスの展開は、ほとんどの場合原作を忠実に再現するものであり、原作が未完の場合は独自解釈の別の着地点を模索するなど、「似て非なるもの」という微妙な立ち位置にあるものなのですが、このなのはオフィシャルコミックスは、そのどれとも異なる展開を見せています。それは、アニメ版の放送とタイミングを合わせて本編のサイドストーリーをコミックで展開する、というものです。ゆえに、このコミック版だけを読んでもアニメ版の入門編としては全く参考にならないのでご注意下さい。

 そのような特殊な展開が可能だったのは、アニメ原作・脚本の都築真紀さんがかつて漫画家だった経歴もあって、アニメ版と同じようにコンテを切って原作を提供していたことが大きいと思います。巻末のコンテ群と、設定資料集のコンテを見比べると、同じソースからそれぞれの手法で魅力的に見せる工夫がされているのが、「なのは」が良作と言われる要素になっていると思います。そのため、読者はアニメ版と全く同じ感覚でコミック版を読むことが出来るし、コミック版ならではの長所だけをストーレートに感じられるのだと思います。

そして続いて行く、笑顔と勇気

 本編ではあまり描かれなかったフェイト視点での学園生活や、闇の書視点でのはやてと守護騎士達の穏やかな日々や、闇の書事件終結後にはやてがリインフォースを思って流した涙… そしてその中でも特にオススメしたいのが、なのはA'sの完結から半年後、時空管理局に正式に入局したなのは達の姿を描いた「Epilogue of ACES」です。ミッドチームとベルカチームに分かれてのチームバトル訓練や、なのは達の管理局の制服姿もさることならが、忙しくも楽しくてどこまでも前向きで、それぞれの新しい夢と未来に向かって行く笑顔は…公式でここまで素晴らしい「その後」を描かれてしまったら、同人者にとってはもちろん嬉しいんだけど、描く側としてはハードルが上がってしまうジレンマあったりもしますが(^^;

 私は本来、原作とその他の展開は別物として楽しむべきだけど、それぞれがそのメディアの特性を生かした独自の魅力を発揮できていなければ評価しない、という主義ですが、この作品に限ってはメディアの枠は何ら関係ありません。サウンドステージであれ、小説版であれ、すべてが笑顔と勇気の「なのはオリジナル」なのですから。アニメ版が面白いと感じた人には、ぜひ楽しんで欲しい逸品です!

First written : 2006/06/29