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「MISSING PARTS 3」とは？

　「MISSING PARTS 3」とは、長編本格推理アドベンチャー三部作の完結編にあたる作品です。システム的には、「移動」「話を聞く」「虫メガネ」という極めてオーソドックスなクラシカルスタイルの推理ＡＤＶであり、美麗なポリゴンムービーもキャラボイスも皆無ですが、２Ｄ演出の妙を尽くしたキャラの動きでカメラワークを表現する独特の演出技法、ここに極まれり！　トリックや謎を解き明かすというよりも、推理ドラマを観て楽しむ「火曜サスペンス劇場」タイプだった「１」。探偵には出来ないことがあると痛感し、また、探偵にしか出来ないこともあることを見出した「はぐれ刑事純情派」タイプだった「２」。そして、裏切りと硝煙と痛い雨の果てに、すべての謎が解き明かされる「３」へ…　ＤＣのハード生産中止からはや２年…　ＦＯＧにとってＤＣでの最後を締めくくるに相応しい名作ＡＤＶです。

探偵、真神恭介絶体絶命！

　パッケージの帯にも「探偵、真神恭介絶体絶命！」とあるように、今作は「探偵（見習い）」の見習いの部分がようやく取れて、一人前の探偵として認められたわけですが、しかし、それは巨悪の存在を追うために・娘を守るために失踪した鳴海誠司と同じ場所に辿り着いてしまったいうことでもあった。敵は警察もマスコミも国家権力さえも影で操る途方もない巨悪である。決して踏み込んではいけない危険な領域…しかし、探偵としての真実を求める心が、これまで失われてきた守れなかった者たちへの想いが、徐々に犯人達を追い詰めていく。たとえ、それが認めたくなかった・知りたくもなかった現実だとしても…再び真神恭介の前には危険極まりない”あの男”が…突きつけられた銃口を前にして「探偵：真神恭介」はすべての謎を解き明かし、この絶体絶命の危機を切り抜けることが出来るのだろうか？

　「３」では、探偵の基本である地道な聞き込みと調査も当然必要ですが、それ以上に、誠司所長が残した訳の分からない資料と格闘する際には、記憶力と注意力と判断力が必要だし、重大な推理の時も主人公主導で推理を進める事になるため、難易度の高い選択肢の連続に迫られます。推理レベルと難易度は確実に上がっていますが、真神恭介の探偵としての成長と共にプレイヤーの推理力も上がっているので、相手にとって不足はないでしょう。すべての謎が解けていく気持ちよさよりも、すべてを知ってしまったことで信じたくない現実と向き合う事になり…構えた銃の重さに戸惑い、撃鉄を起こす音の大きさに驚き、銃口の先に対峙する相手の現実感のなさ…それでも、最後まで「真神恭介」であることをやめないこと。それだけが、この事件を本当の意味で解決することができるのですから。

大団円、そして、今こそ悲しみに凍らせたその名を…

　　第５話「迷いの懐中時計」では、偶然遭遇したタクシー運転手殺害事件を追っている内に次々と別件の事件に行き着いてしまい、その関連性を追って見え隠れする失踪中の誠司所長の足取りを追っていくうちに、いよいよ一連の事件の裏に存在する巨悪組織の存在が明らかになっていきます。ラストシーンの「Painful Rain」はあまりの事態に戸惑ってしまい涙はすぐには出ないかも知れないけど、後からじんわりと効いてきます。そして、完結編となる第６話「追憶のペンダント」では、第１話に登場した盲目のピアニスト：嘉納潤ちゃんも、第２話に登場したアイドル：春日野唯ちゃんも、第４話に登場した朱原まどかちゃんも、歴代ゲストヒロインの懐かしい顔が全員揃い、国際福祉団体コンティニューのイベント「Ａｉｍ」を舞台にして、組織を叩く唯一にして最後のチャンスが訪れます。その結末は…どうか自分の目で確かめてください。

　このシリーズの魅力は、本格的な推理部分はもちろんのことですが、物語の脇をしっかりと固めてくれた脇役の存在を抜きにして語る事はできないと思います。「３」でも相変わらず、哲平のハイテンションなじゃれっぷりも、奈々子の最終兵器ランチも、サミーの破壊的な音痴も、エミーさんのオカマっぷりも、氷室刑事の不良刑事っぷりも、成美姐さんの女王様っぷりも健在です。しかし、彼らの協力なしでは決して事件は解決できなかったし、本人はさぞ不本意かもしれないが、これだけ多くの特殊な人々から信望を得ることができた、これこそが、探偵：真神恭介の最大の才能だったのかもしれませんね。

　すべての事件を解決した大団円、そこで、恭介の口から出た今は亡き女性（ひと）の名前…救えなかった後悔と罪の意識に苛まれ…悲しみに凍ったその名を、今ようやく笑顔で思い出すことができた。「警察は、事件は解決出来てもそれ以上のことは出来ない。探偵には法的な制限がないぶん、人の心の中だけにある事件だって解決できるんだ」その言葉どおり、プレイヤーの心の中のわだかまりをも解決してくれた、この作品に深く感謝したいと思います。