ミッシングパーツ ザ・探偵ストーリーズ
MISSING PARTS とは?
FOGとは、「久遠の絆」を代表作とするゲームメーカーであり、知名度は低いけど陰陽道や旅行記を純和風テイストで丁寧に仕上げて、ゲームマニアを唸らせる良質な作品を世に送り出してきました。そんなFOGの最新作「MISSING PARTS the TANTEI stories(通称:ミパたん)」は、従来のFOG路線とは違って、都会的に洗練されたスタイルで描かれた本格推理アドベンチャーゲームです。しかし、発売前の印象はあまり良くありませんでした。システムはコマンド総当り式のクラシカルスタイルだし、今時のアドベンチャーゲームと違って、主題歌もなければキャラボイスも入っていません。短編2話で5,800円という価格設定である上に、すでに生産を中止してから1年が経過したDreamcastでの発売(しかもシリーズもの)は如何なものか?…と思わないでもありませんでしたが、そんな不安はすべて杞憂でした。 旧くて新しいアドベンチャーゲーム 「ミパたん」は推理モノのゲームとしては、「トリックや謎を解き明かす」というよりも、「推理ドラマを観て楽しむ」というタイプですが、その塩梅が実にちょうどいい。「推理小説」というよりは「サスペンス劇場」に近いかもしれません。犯人もトリックも想像するのは難しくないけど、犯行に至るまでの動機をドラマチックに魅せてくれます。軽妙な笑いあり、連続殺人事件のスリルあり、ほのかなロマンスあり、そして涙あり… 今回収録された全2話を終えた頃には、本気でこのシリーズ(全6話)の継続に期待したくなってきました。 伏線の複雑さでは、第二話「赤いカメオ」の方が上だけど、緊迫感は第一話「鳴らないオルゴール」の方が上のように感じました。その辺は好みの問題でしょう。どっちも推理モノとしては、水準以上の出来栄えであることは間違いありません。第一話が火曜サスペンス劇場だったとすれば、第二話は正統派の推理モノです。犯人像が浮かび上がってこないのに、次々と状況証拠だけが出てきて、捜査は更に混乱してしまいます(だからこそ、推理の断片(パーツ)がつながって謎を解けたときの快感も大きくなります)。肝心な部分の推理は探偵(見習い)の真神恭介がやってくれるので、推理音痴の方でも問題なく楽しめることでしょう。このゲームはあくまで「推理の雰囲気」を楽しむものなので、このくらいの難易度がちょうどいいのでしょうね。 推理も確かに良く出来ていますが、このゲームの最大の魅力は、あまりにも面白すぎるキャラクターたちにあると思います。何気ない言葉のやりとりの端々に詰め込まれた、笑いの地雷がドッカンドッカン爆発しっぱなしなのです。森川刑事を新たに「下僕3号」に命じてさらにエスカレートする成美姐さん、昼行灯不良刑事ぶりを如何なく発揮する氷室刑事、どんな食材でも組み合わせで最終兵器ランチにしてしまう奈々子、いつもハイテンションな相方の哲平(下僕仲間)…などのレギュラーキャラは勿論のこと、エピソードごとのゲストキャラもいい味を出してます。第一話のゲストヒロイン「嘉納潤」ちゃんには「ときメモ3」のどのキャラよりも萌えてしまいました… キャラボイスもポリゴンモーションも無くてもキャラクターは成立するという、当たり前のことを再認識させられました。 マイナーなりの戦い方 少ない制作費でも良いゲームは作れる。「ミパたん」は、その見本のような作品だと思います。2D絵でもズーム機能やカメラ位置を変化させる工夫で動きを表現してみせて、キャラボイスは一切使用しないけど、その代わり、シナリオとキャラクター作りという、アドベンチャーゲームの根幹要素に全力を傾けることで、非常に高い完成度を実現しています。製造が中止になったハードなので、セールス的には大化けは望めないだろうけど、セガへのロイヤリティが限りなく無料状態になったDreamcastならばこそ、マイナーにはマイナーなりの戦い方ができるのです。 問題は、全六話(つまり3本)構想をどのようなペースでリリースできるかどうかにかかっている。いかに熱心なFOG信者といっても、何年も待ってくれないだろうし(と言うより、Dreamcast本体を箱にしまってしまうだろう)、1話完結方式とはいえ、、あまり時間を空けてしまうと全体の本筋を忘れてしまいますからね。理想では半年間隔、悪くても1年半で完結させて欲しいものです。
※画像使用許諾:2002/04/12
First written : 2002/04/12
Last update : 2003/11/03 キャラクター選評 真神恭介 鳴海京香 月嶋成美 嘉納潤 春日野唯 白石哲平 鴨居奈々子
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