「マリア様がみてる」とは? 純粋培養の箱入り乙女達が集う、私立リリアン女学園。主人公の福沢祐巳は、この高等部に通うごく平凡な生徒にすぎなかったが、ある日、全校生徒の憧れの的である”紅薔薇のつぼみ”こと小笠原祥子さまから、突然「妹」になるように求められた祐巳は… ”乙女の聖域”と呼ばれていた少女向けライトノベルの世界を、全性別全年齢分け隔てなく、誰でも読めるようになったのは、同人誌の世界を震源とする「マリア様がみてる」の大ヒットがあったからと言えます。その功績は文化史のターニングポイントとして後世でも高く評価されることでしょう。原作小説についての細かい説明は、GM研通信vol.2の「小説版マリみて」レビューに譲るとして、今回はその「マンガ版マリみて」についてご紹介しましょう。 マンガという手法ならではのアレンジの妙 原作が小説であり、イラスト点数が非常に限られている作品だからこそ、全編を視覚的に表現する必要があるアニメやマンガへの展開は非常に難しいものです。実際に、マリみてのアニメ版は及第点ではあるものの、それ以上でもそれ以下とも言えない微妙な出来でした。相当力を入れた第1巻の内容でも、25分x3で表現しきらなくてはならないわけですから、どうしても限界がありますからね… 一方、月間誌連載で5ヶ月もかけて第1巻の内容を丁寧に描き切ったマンガ版のマリみては、マンガならではの手法をふんだんに使って、マリみての魅力を引き出すことに成功したと思います。マンガ版の最大の魅力は、祐巳ちゃんの百面相です。原作の文章から表情を想像するのも楽しいけど、少女漫画独特の心象描写効果を多用したカット割の中で、漫画的デフォルメと擬音と背景トーンの合わせ技で描かれた祐巳ちゃんの百面相は、あまりにも効果絶大です!原作でのセリフにもあったように、こんなに見ていて面白い祐巳ちゃんを嫌いになれる人なんてなかなか居ませんよ。マンガという手法ならではのアレンジの妙をお楽しみ下さい。 原作者もホロリときた!これがプロの底力!! すでに数々の同人誌作家さんの絵柄と作風によってアレンジし尽くされている中にあっては、いかにプロの少女漫画家を起用したとはいえ、目の肥えたファンを満足させられるのか懐疑的だったのですが…その懸念は見事に打ち消されました。これまで原作小説つきのマンガ化の例を数多くありましたが、成功例と言えるものはほとんどありませんでした。しかし、この1冊は別格です! 小説原作者の今野先生が単行本第1巻の帯に寄せた「思わず、ホロリときてしまいました…原作者なのに。」というコメントは、読者にとっては、まさにその通りの真実でした。 多少の補完的なアレンジが加えられているシーンもありますが、基本的には忠実に原作を再現してあるので、次にどのセリフが来るのか、ファンなら完璧に把握できているはずです。しかし、紙の上で語られるその言葉は、頭の中に自分で想像して描いていたどの記憶よりも鮮明なので、戸惑いさえ覚えてしまうかもしれません。知っているからこそ最大の効果を発揮できる構図…これがプロの漫画家の底力なのでしょう。ファンだからこそ心の底から楽しめる。マリみての世界が持つ魅力と、自分がどれほどその世界が好きなのかを再確認できる、至極のファンアイテム!ファンなら是非読んでおいて欲しい逸品です! First written : 2004/11/14
Last update : 2004/12/25 |