ハヤテのごとく!
漫画作者:畑健二郎
 ギャグ  愛と流血の執事ライフコメディー  1〜10巻 
連載:週刊少年サンデー

「ハヤテのごとく!」とは?

 綾崎ハヤテ(16)は、年齢を偽ってバイトをしながら無職で博打三昧の両親を養っていたが、クリスマスの日に両親はプレゼント(1億5千万の借金)を残して去っていった。あまつさえ、息子の臓器をヤクザに売り飛ばす約束までして…自分が助かるには悪事に手を染めてでも借金を返済するしかない…そう決意したハヤテは、夜の公園でひとりでいた金持ちっぽい少女:三千院ナギを誘拐しようとするが…一足早く誘拐しようとした別の誘拐犯の手から(獲物を取リ返そうと)少女を救い出したことで、また「君が欲しいんだ(人質として)」「君をさらうと決めていた(人質として)」など微妙な言い回しが、思い込みの激しい少女に愛の告白だと誤って伝わってしまったため、その後の二人の関係は決定的に非常にややこしいことになってしまうのでした。借金を帳消しにする代わりに、三千院家の執事となったハヤテとナギの、愛と流血の執事ライフコメディー(ラブは薄め)、それが「ハヤテのごとく!」なのです。

借金執事の愛と流血の執事ライフコメディー

 身分の差を越えて愛し合う二人が…いましたっけ? 二人を襲う数々の試練!それを乗り越えていく二人の愛が…ありましたっけ? といった具合に、一見すると萌えマンガのように見えても、ラブコメ度はかなり薄めです。「年下は可愛いとは思うけど、恋愛対象にはならない」と少年誌らしい(らしからぬ?)健全なハヤテと、ハヤテが自分のことを好きだと信じて疑わないナギ(の思い込み)。二人の間にある勘違いという爆弾は日々大きくなるばかりです。しかし、二人がめでたく相思相愛になれたとしても、それは幼女性愛者への目覚めだったりして…それはそれで何かとアレです。

 そんな中、三千院家の財産を狙ってナギを亡き者にしようと企む親類縁者たちからナギを守るため、成り行きでハヤテは先代当主が残した条件を「綾崎ハヤテを倒してからにしろ」に変更してしまう。ハヤテにとっては執事として・命の恩人として盾になったつもりが、ナギの瞳には自分だけのナイトに映っているわけで…ふたりはさらにすれ違う。果たして、この恋は報われる…のかなぁ…

随所に盛られた”久米田イズム”の継承者

 この作品は、ともするとお約束なおいしい設定やキャラ人気に目が行きがちですが、この作品の本質的な魅力はそこにはありません。これはただのお約束萌えマンガにあらず!「日本の生活防水はぁぁ!世界一ィィイイイ!」「いつの間にかマリアさんEDのフラグが立った?」(背景にさりげなく置いてあるコナンの胸像)など、随所に盛り込まれた小ネタやセリフ回しの斬れ味は、大きな子供のマニアックな読者層を中心にして「かってに改蔵」の久米田先生直伝(?)との高い評価を受けて、単行本発売ともに人気爆発で売り切れ店続出。思わぬ出世作となりました。

 ネタをシャウトして掘り下げることがメインだった改蔵とは違い、読みきりのストーリーに自然に小ネタを織り交ぜる(一服盛る)ことで、分かる人にだけはブラックジョークが理解できる。あざとさを感じさせることなく、読者の趣味の引き出しをくすぐることができるのです。そのあたりのバランス感覚がとても優れている作品だと思います。週刊少年サンデーの読者層にあっているかどうかは未だに謎ですが、きっかけは普通のギャグマンガとして読んでみると、自分の中に思わぬ発見があるかもしれない一冊です。

First written : 2005/06/19
Last update : 2005/08/18