「Fate/stay night」とは? 「Fate/stay night」とは、同人オリジナルゲームで史上空前の大ヒット作となる「月姫」を生み出した、伝説のサークル「TYPE-MOON」の商業ブランド移行第一弾、サバイバル伝奇活劇ビジュアルノベルです。 あらゆる願いを叶えるとされる”聖杯”を巡って、約200年前からこの冬木の地で密かに繰り広げられてきた、魔術師(マスター)達による争奪戦。本来であれば人間ごときには不可能な”英霊の召還と実体化”を行い、絶対命令権を持つ令呪をもって英霊を強力なサーヴァント(使い魔)として使役し、最後の一人になるまで殺し合い、聖杯を得るにふさわしい持ち主を定める儀式…それが聖杯戦争なのです。 10年前に勃発した前回の聖杯戦争は、その決着の地で謎の大火災を引き起こして終結した。何一つとして生を許さない赤い地獄の業火の世界の中で、幼き日の主人公:士郎は、その被災現場でただ一人奇跡的に助けられた。すべてを無くし孤児となった士郎は、自分を救ってくれた男:魔術師を名乗る衛宮切嗣の申し出を受けて切嗣の養子になることにした。切嗣は士郎が魔術師になることに反対していたし、自分でも魔術の才能がないことは判っていた。それでも…士郎は修行を続けた。いつか切嗣が自分にしてくれたように、誰かの役に立てる人間に---正義の味方になりたかったから。いや、ならなければならなかったから。あの日、自分一人だけが助かってしまったから…そして、病に倒れて死んでしまった切嗣が、自分に託してくれた夢だったから… そして現在、魔術師として半人前のまま高校2年生を迎えた衛宮士郎は、訳の分からないうちにマスターに選ばれてしまい、新たな聖杯戦争に巻き込まれてしまった。人智を超えた戦闘能力を持つサーヴァントを相手に、半人前の魔術で対抗できるはずもなく、何も知らないまま殺されそうになったその時…眩い光の斬檄とともに、月光に照らされた白銀に輝く甲冑を纏った少女が、士郎の危機を救った。 「---問おう、貴方が私のマスターか」 最強のサーヴァント:セイバーとともに、士郎は聖杯戦争による被害を最小限に食い止めるために、戦いに身を投じることになる…これが、Fateの導入部分のあらすじです。 こぼれ落ちる涙を拭うことも、目を逸らすことも許さぬ真実 まず最初にお断りしておきますが、このゲームはギャルゲーではありません。物語の必然としての恋愛要素はありますし、あらゆる萌えのツボを押さえたキャラクターが満載ですし、濃厚なエロシーンもあったりしますが、このゲームはあくまでも「伝奇活劇ビジュアルノベル」であって、メインとなるのは戦闘シーンです。 しかし、戦闘と言っても一筋縄では行きません。サーヴァントの戦闘能力は人智を遥かに超えた強大なものですが、人間であるマスターが死んでしまえば、サーヴァントは魔力の供給源を失って現界できなくなってしまいます。サーヴァント同士でも英霊の霊格によって厳然とした戦力差がありますが、英霊にはそれぞれ、そのバランスを崩壊させ得る、文字通り”必殺”の宝具という奥の手を持っています。だが、その真名をもって宝具の魔力を解放するということは、自分の正体を敵に教えてしまうことにもなります。正体が分かれば自ずと弱点も知られてしまいます。腹の探り合いとパワーバランスによる協定・敵の敵は味方、状況とシナリオの展開次第で転々とする戦況から見えてくる、本来敵であるはずの者たちに覚える不思議な共感…それは、戦場で命の獲り合いをした者にしか判らない世界であり、そこには言葉を超えた純粋な理解だけが存在するのです。 そして、命を賭けて戦うに足る動機として重要になってくるのが、ヒロインの存在です。主人公の衛宮士郎の行動理念は「正義の味方になること」なのですが、それだけでは遊び手へのアピールとしてはチト弱いですからね。最初の取っ掛かりは、ヒロインの魅力に引きずられるくらいの気軽さがちょうどいい。しかし、何度倒れても士郎を守ろうと立ち上がるセイバーの悲愴な勇姿を目の当たりにして、損得勘定抜きで士郎を助けてくれる、遠坂凛の判りづらいお人好しさ加減に微笑ましさを覚え、深すぎる闇の中で自分だけを頼りにしてくれている間桐桜の無限の信頼に触れていくうちに、邪な気持ちはすっかり消え失せ、誰のために何のために剣を取るのか自ずと見えて来て、遊び手の目線と衛宮士郎の目線はひとつになって行きました。 強大な敵との絶望的な戦力差を覆すために、限界を超えた魔術を行使して、その代償として神経を焼き切り、大切な人の名を思い出すことさえ出来なくなって…それでも、ただ「守りたい」という信念だけが体を突き動かす。ただ己が理想と信念をぶつけ合う、荒々しい肉体の限界を超えた魂の剣戟の中で、不意に溢れこぼれ落ちた涙。しかし、目の前にあるのは目を逸らすことも許さない真実。こぼれ落ちる涙を拭うことなく、この作品のすべてを受け入れて傷つく覚悟がある者だけが、大切な人と自分の信念を最期まで守り通すことができるのですから… 圧倒的かつ破壊的なクオリティの追求がたどりついた場所 「月姫」での成功のイメージがあまりにも強すぎたため、発売前までは、ファンの間でのFateの評判は、期待と不安が入り混じった複雑なものでしたが、それらはすべて杞憂でした。1000を優に越える豊富な立ち絵のパターン、OEM供給で商売ができてしまいそうなほど洗練されたシステムインタフェース設計、極限の心象風景を効果的に演出するエフェクトの斬れ味、生き生きと描かれたキャラクターたち、そのすべてが商業界においても、最高レベルのクオリティを発揮してくれたのですから。 そして、この作品の最大の魅力であるシナリオも、半端な覚悟では乗り切れないほどの凶暴なパワーと破壊的なクオリティに仕上がっていました。平均プレイ時間は約60時間。ビジュアルノベルとしてはこれは破格の長大さです。しかも、Fateの大半は殺し殺される極限の緊張感の只中に終始放り込まれっぱなしなので、精神的な疲労は相当なものです。中弛みは一切ナッシング。むしろ、シナリオを書いている人間の正気を疑いたくなるような陰惨テキストの持続力と破壊力は、「狂ってる、壊れてる」としか思えません。(これはサバイバル伝奇活劇としては最高の褒め言葉ですよ)。 「セイバー」 → 「凛」 → 「桜」、という一直線のルート設計になっているのは、アドベンチャーゲームの構造的としては少々面白みに欠けますが、この手法には、シナリオの見せ方に紛れが起きないことと、余計な説明や前提条件を省くことが出来るというメリットがあります。おそらく、1周目に凛ルートのバトルロワイヤルのめまぐるしい展開や、桜ルートのドロドロした展開を見せられたら、引いてしまっただろうし、セイバールートで強く凛々しくセイバーが王の誇りを貫き通した姿を見てからでなければ、凛ルートで自分自身の願望の成れの果てに苦しみ悩み戦っていく主人公も、桜ルートですべての信念を曲げてまでして、ただ一人だけを守るために戦った主人公を理解することも難しいでしょうし、それらの葛藤と理解の果てにこそ、真の意味でヒロイン達の想いを受け止めることができ、心の底から笑うことが出来たのですから… ファンの熱すぎるほどの期待を遥かに超える傑作を生み出したTYPE-MOONの更なる飛躍に期待せずにはいられない、PCパソゲー界に永遠に名を刻むであろう、紛う方なき名作です!
First written : 2004/02/20
Last update : 2004/08/18 [GM研ゲーム大賞2004] 「Fate/stay night」ヒロイン選評 ※この選評は重度のネタバレで構成されています。ゲームの楽しみを致命的に損なう恐れがありますので、ゲーム本編をすべてクリアした方、もしくは多少のネタバレも読み流せるという方のみ、白文字で隠されている部分をマウスで選択反転させてお読みください。なお、この注意書きを無視してネタバレ部分を読んでしまった場合の不利益に対して、GM研は一切責任は取りかねますので、くれぐれもご注意ください。 セイバー セイバーのシナリオは王道中の王道であり、このシナリオを最初に持って来て他のルートへの派生を許さなかったことも、このシナリオに安易な大団円ハッピーエンドを用意しなかったことも、そのどちらも高く評価したいと思います。なぜなら、最後までセイバーと共に戦い抜くことを選び、彼女の望みを真の意味で理解したのであれば、選択肢によるED分岐などという可能性なんて必要ないのですから。たとえ、彼女の宿願がもたらすものが自らの全存在を消し去ることであったとしても、彼女の代わりに王になる人間が彼女より優れた王になれるとは限らないと判っていても…それが、騎士王である彼女が世界に魂を売り渡して、英霊として使役されてでも叶えたいと欲した願いであり、士郎と共に生きたいと望む想いを押し殺し、最後まで信念を貫いて誇り高く戦い抜いた彼女に対して、現世に止まり人として二度目の生を受けることを望むことなど出来ようはずもない。それだけは死んでもしてはいけない。そして、後悔もしてはいけない。あの別れにはすべてがあったのだから…
その神聖なる高潔な騎士王の魂の前には、恋愛感情を抱くことすら罪悪感を感じてしまうほどでした。もっとも、セイバーのシナリオは、その葛藤こそがメインテーマになっているのであって、これは製作側の狙い通りなんでしょうね。
”夢の続き”というTrueEndのタイトルにもなっているエピローグのエピソードで、騎士王(セイバー)がすべての戦いから解放され永遠の眠りにつくシーンでの穏やかな顔を見た時…これまでずっと我慢してきたはずの涙が溢れてしまいました。聖剣エクスカリバーのように眩い煌きを失わない魂を持ったセイバーは、非の打ち所のない傑作キャラクターだと思います。公式人気投票でも当然の如く1位でしたし…でも、同人誌では単なる腹ペコ大食いキャラでお笑い担当なんですけど、そこはキャラクターは愛されているということで好意的に解釈しましょう。
遠坂 凛 凛の主観で進行する体験版(プロローグ)をやったときから、このキャラクターにただならぬ潜在能力をビシビシと感じていましたが、実際に本編をやってみると…こ、このキャラクターは「反則」だ!そう感じてしまうほど強烈な存在感がありました。いわばもうひとりの主人公です。この「遠坂凛」というキャラクターを生み出した時点で、「Fate」はギャルゲーとしては勝ったも同然ですよ! セイバーは確かに強く凛々しく可憐だったけど、彼女はあまりにも誇り高く高潔で神聖で…恋愛感情を抱くことそのものに罪悪感を感じてしまうので、等身大のヒロインとして見れなかったんですよ。その反動もあってか、凛ルートで描かれる遠坂凛という”判りづらいお人良しさ加減”にものの見事にノックアウトされてしまい、心の底から笑うことができたのでしょう。
もっとも、凛ルートは「アーチャー&士郎ルート」と言うべきものなのですが、凛の個性はセイバールートでも凛ルートでも桜ルートでも、全編を通して遺憾なく存分に発揮されています。凛ルートの派生GoodEnd「sunny day」で描かれた、セイバーを現界させたまま終える大団円も高く評価したい。これは前述のセイバーの項での論旨と矛盾すると思われるかもしれませんが、実はそうでもないんですよ。ちょっとだけ視点を変えることで、その事象が持つ意味は全く異なる解釈が可能になります。それは、遠坂凛という人間の特性をどこまで理解しているか、ということでもあります。散々文句を言い倒した挙句に強引に手を取ってずんずん前を歩いてくのが、遠坂凛なのです。だからこそ、アーチャーの魂は最期の瞬間に彼女に救われ、彼女に”自分の未来”を託して初めて素直に笑うことができたのですから… ああ、それにしても、この短い文章の中にこれほどまでに「遠坂凛」という単語を連呼させてしまったのは、彼女は本当にすごすぎる存在感があるキャラクターだという証拠なのでしょう。そんなあなたに惚れました!公式人気投票でも人外以外では最高位の2位に堂々君臨。同人でも欠かすことのできない美味しい役ドコロのキャラとして重宝されているようですね。
間桐 桜 発売前に行われた公式人気投票では、バーサーカーと同票であり、発売後には自分のサーヴァントであるライダーに追い越されてしまうという、メインヒロインにあるまじき”不名誉な伝説”を作ってしまった桜さん。今回の薄幸娘”さっちん”は君だ!…もとい、シナリオ担当の奈須きのこさんが”脱稿に5ヶ月もかかった難産の”Cルート”は、聖杯戦争の真実と真っ向から対峙することになる桜ルートですが、あまりにもドロドロした重苦しい展開であり、このルートでのセイバーはどうあっても救われないし、桜というキャラクターに萌えを期待していた世間一般の層ではあまり評判がよろしくないようですね。まあその気持ちも判らないでもないけど、私の場合はこの時点でもう、Fateを「ギャルゲーだとは思わない」ようになっていたので、そういう立ち位置でこのシナリオを評価しようとは思いません。だって、勿体無いじゃないですか。こんなパワーを持ったゲームを”ギャルゲー”の枠の中でだけ論じるなんて!
間桐桜というキャラクターは、良くも悪くも”弱い”存在です。それは戦闘能力や魔力のことではなく心の在り方です。主張しない健気さは”自分”を持たない危うさの裏返しであり、姉である凛への慕情と矛盾した劣等感であり…だからこそ、初めて自分が望んだ他者である主人公を欲することは、自分らしくあろうとすることは、今まで抑えてきた自分自身の心の闇に喰われてしまうことなのですから…桜はとても損な役回りを引き受けることになりましたが、しかし、その罪深い存在を愛してしまったから、正義の味方になるという信念を捨てて、桜ただひとりを最期まで守ると誓ったから…大切な者の名前さえ思い出せなくなるほどの限界を超えた戦い、その果てに勝ち取った結末であるからこそ、この物語は真の意味で終わることができたのです。ちなみに、TrueEndでライダーが掛けていた眼鏡は、志貴と同じ魔眼を抑制するマジックアイテムと思われます。シナリオの中にも”アオザキ”という名前が一回だけ出てきましたし…関連をさりげなく匂わせつつも多くは語らない、まったく粋な演出ですね。 イリアスフィール・フォン・アインツベルン(イリア) 構想当初はメインヒロイン扱いだったものの、2003年2月の時点でイリア専用ルートがカットされたことで脇キャラに転落。セイバールートでは”残虐娘”扱いで最期には聖杯として磔にされるわ、凛ルートではギルガメに生きたまま心臓を引っこ抜かれるわ、最強の戦闘能力を誇るはずのバーサーカーも桜ルートでは形無しで、もう散々です。このように、本編での扱いがあまりにも”アレ”なので、お助けお笑い脱線ヒントコーナー「タイガー道場」での、ロリっ子ブルマの反則技で弾けまくるイリアの自由奔放な狂態には、むしろ清々しささえ感じてしまいました。「助演」という役回りを逆手に取った「なんでもアリ」の芸風で、Fateの世界観に不足しがちな要素(お笑い)への貢献度を高く評価するべきだと思います。
その点では、後述の藤ねえも同じなのですが、イリアの場合はちゃっかりと本編でも、バーサーカーとの不思議な絆といい、自分でも持て余している切嗣への愛憎といい、桜ルートの最期で「天の衣(ヘブンズ・フィール)」を纏った姿で登場したりと、美味しいところを全部持っていってしまっていて、専用ルートを持たない助演ヒロインなのに、実質では主演ヒロイン級の印象を残してくれました。その証拠に、公式人気投票ではメインの桜を差し置いて5位に入賞しています。このようなヒロインの作り方も出来たTYPE-MOONというブランドは、本物の実力を持ったギャンルゲーの作り手と言えるのではないでしょうか? 藤村 大河(藤ねえ) 藤ねえと言えば、「人間ジェットコースター」「冬木の虎」「タイガー」など、いくつもの異名を持つ愛すべきお姉ちゃんですが、どのシナリオでも戦いが激しくなるにつれて、一般人の安全を確保する都合上”自然退場”させられてしまうため、出番がとっても少なくなってしまいました。まぁ、その分タイガー道場では出ずっぱりだし、戦い戦いでギスギスした空気を一瞬で不思議ワールドに変えてくれるし、あまりにも多くの物を失って終わった戦いの果てに、笑顔で皆を迎えてくれる”日常の象徴”でもあるわけですから、やはり、藤ねえはこのゲームに必要不可欠な存在だと思います。
ゲームに先立って先行発売された「プレミアムファンブック」の中にも書いてありましたが、藤ねえは原作のFateには影も形もなかったのに、突然変異的に現れたキャラクターだったそうです。狙ってもなかなか出来ませんよ。あそこまでリアルに”困った姉貴だと穏やかな笑顔で言える”お姉ちゃん像を書き切ることは。下手にお色気サービスカットを入れなかったことも、実は○○だったのです!的な展開で人外の戦いに巻き込んだりしなかったことも、あくまでも姉代わりとして士郎の幸せを願ってくれたことも…すべてを含めて、これ以上の助演女優の役割は望みようがありませんよ。製作スタッフも遊び手も、この長大な物語に息切れしつつも、最期まで走りきることが出来たのは、藤ねえの存在があればこそだったのかもしれませんね、ホンマに頭があがりませんよ…公式人気投票でも9位に入賞。大したものです。 アーチャー ぶっきらぼうで、いつも小言がひとこと多くて、肝心な事は言葉にしない。それでいて、不意打ちのようにキザなセリフを照れもせず口にする。体験版をやった時のアーチャーの第一印象はそれほど良いものではありませんでした。攻略対象になるはずの凛といい雰囲気になるのでは?という嫉妬みたいな感情もあったのかもしれません。しかし、凛ルート(UBW)でのアーチャーの活躍を目の当たりにして、印象がガラリと変わりました。背中で語る闘う漢の姿には、男でも惚れてしまいますよ。事実、人外男性キャラであるにも関わらず、公式人気投票でも堂々の3位入賞を果たしていますしね。ちなみに、「月姫」の男性キャラの最高順位は、遠野志貴の8位でした。ギャルゲーにおいてアーチャーがこの順位を獲得したことは奇跡と言っていいでしょう!
同人誌ではアーチャーと凛のカップリングを「弓凛」と呼んでいますが、割合的にもこの組み合わせが一番多いみたいですね。叶わなかった未来図を描きたいと欲するのが、同人作家の本能というやつですから。Fateのベストカップと言ってもいいんじゃないんでししょうか?Fateのすべてを体験した後では、もうアーチャーに嫉妬するようなことはありません。なぜなら、自分(衛宮士郎)にとって、アーチャーは追いかけるべき背中であり、自分自身で変えていかなくてはならない未来でもあり、そして、今の自分も未来の自分も、遠坂凛という魅力的な個性によって救われたという事実には変わりはないのですから… ライダー 桜ルートに入るまでは、まさかライダーの人気がこんなにすごいことになるなんて、予想だにしていませんでしたよ。公式人気投票では、マスターの桜を差し置いて4位に入賞して、下克上を果たしてしまいました。人気投票の結果解説をしていた奈須きのこ氏も、「Fate最大のイレギュラー」と語っていましたしねぇ…最後の数シーンだけでこれほど評価が大逆転してしまったキャラなんて、前代未聞だと思いますよ。おそるべし!メガネと綺麗なお姉さんの合わせ技!(魔眼ではなく、メガネに魅了された人が多かったみたいですね)
クラスはライダーということになっていますが、宝具をやたら滅多に使うわけにも行かず、騎兵らしからぬ騎兵という印象に。でも、エクスカリバーとベルレフォーンとの宝具激突シーンには、鳥肌が立つほどゾクゾクしましたよ。あのシーンのBGM(約束された勝利の剣)を聴くたびに、興奮が甦ります。あ、でもあれはライダーさん敗退シーンだからここで書くのはチトまずいですね(笑) 冷酷なようでいて、実は冷静かつ忠実に主人の身を案じていたりと、なかなか掴みきれない思考の持ち主だったりもしますが、桜TRUE後の平和な日々でも、案外上手くやっていけるんじゃないでしょうか?どんな問題でも大人の女性の余裕で軽くいなしてしまいそうな「姉御」的な頼もしさが素敵です! ランサー ゲーム開始早々、主人公を殺してしまう厄介な敵だったわけですが、話が進むに連れて、だんだん「気のいいニイちゃん」としか思えなくなってしまいました。言峰の偵察約としてこき使われて、まともに戦うことさえ禁じられていたわけであり、なんだか不憫な英霊さんだといえるでしょう。凛に惚れてしまったため、マスターの命令にさえ背いて自分の心のままに生きる飄々とした姿にも、共感する諸兄が意外と多かったようです。公式人気投票でも8位に入る大健闘を見せました。
ちなみに、女運が悪いと知っているくせに、追いかけるのをやめないというのは、アイルランド神話上でのクフーリンそのまんまです。もっとも、神話のように主役にはなれなかったので、その好意が身を結ぶことはありませんが、脇役だからこそ潔いカッコ良過ぎる最期に、「兄貴!」と呼びたくなるほどの、漢気を感じることができたとも言えます。誰よりも純粋に戦うことを欲し、ゆえに駆け引きや思惑ではなく自分の意思で戦った姿には、清々しいものでした。 キャスター 『裏切りの魔女』と呼ばれる半面、悲劇のヒロインとしても扱われている彼女は、ゲーム中においても、悪女(魔女)を演じながらも、根は一途で幸せな家庭を夢見るお嬢様、という美味しい役どころで、公式人気投票でも10位に食い込む大健闘を見せてくれました。宗一郎様ラブな夢みるエプロン姿の主婦、のネタで描かれた同人がいかに多いことか…実際にゲームでは、そういう平穏な日々への憧れに言及することはあっても、シーンとして描かれることがなかったから、それが尚更想像力を掻き立てて人気に繋がっているのでしょう。
愛称は”キャス子”が一般的になっているようですが、私の場合どうしてもセゲいちの”キャス子”とイメージが被ってしまうわけですが…それにしても、ローブで目線を完全に隠しているのに、口周りだけの露出で「とんでもない美人」だと思わせてしまう、キャスターさんの作画に込められた愛は凄まじいですね。葛木先生とのカップルは、実はこのゲームのベストカップルなのかも?
バーサーカーバーカーカーは強大なパワーと引き替えに知性を奪われてしまっているので、セリフのひとつさえないわけですが(文字にならない咆哮ならいくらでもありましたが)、戦う男は背中で語るというやつでしょうか…かなり存在感があったと思います。あまりにも相性が悪すぎるギルガメッシュに13度殺されて、不死の宝具が失われたにも関わらず、主の危機を救うため、理性でも命令でもなく、本能でもう一度立ち上がったその勇姿に、大いに心打たれました。冬の森でのエピソードで語られたイリアとの絆…もし、彼に言葉が通じるなら、最期の瞬間、小さき少女に何と伝えようとしただろうか?誇り高き武人の魂よ、安らかに… アサシン想像上の人物であっても、その土地の人々に信仰され伝説となった存在は英霊になってしまう…という設定上のイレギュラーさ(複雑さ)を演出する上で、とても尾面白い存在だったと思います。物干し竿と呼ばれる長刀の武器特性有利不利を生かしきった階段戦での位置取りと、秘剣ツバメ返しの瞬間的解釈も興味深いものでした。キャスターが柳洞寺の門番として召還したため、門から離れられず出番は少なくなってしまったけど、命令がどうこうではなく、ただ単純に剣士として剣を交え、美と風雅を慈しむ、ただそれだけ。そのシンプルさが人気につながったようで、あれだけ派手な活躍を見せたバーサーカーより人気投票の順位は上だったとは… ギルガメッシュ初見のセイバールートでの印象は絶対的に強大な敵だったのに、凛ルートでは”うっかり属性”を発揮してしまい、人間の士郎を相手に敗退してしまい、桜ルートでは何の盛り上がりもないまま闇(アンリマユ)に飲み込まれてしまい、黒グルとして使役されることもなく終わってしました。ゲーム終了後のギルガメッシュの印象は、「金ピカ」という程度の印象しかありませんでした。前回の聖杯戦争から10年も出番を待っていたというのに、同人誌では、言峰の激辛麻婆の被害者という微妙な役回りばかりですし…そう考えると、なんだか不憫ですねぇ… 言峰 綺礼最後の最後に士郎の前に立ちふさがる、善悪の概念を超越した男です。ですが…あの最後の戦いで、実は私は言峰が何を言わんとしていたのか、よく思い出せないんですよ。限界を超えた魔術行使で士郎の記憶が擦り切れていくように、私の思考回路も限界を迎えていたようです。そこには善も悪もありませんでした。なぜ?理由を考える必要もなく、信じたもののために、迷うことなく戦った。言峰を恨む気持ちも、考え方を否定する気もありませんでした。立ちふさがるから倒す。ただそれだけでした。人気投票にもその影響が出ているのか、サーヴァントのギルガメよりも1ランク上の12位を獲得しています。個々の要素をよく考えてみると、どう考えても悪党なのですが、ここまで「まっすぐに歪んでいる」と、かえって悪党のダンディズムがカッコ良く見えてしまうから不思議なものですね(笑) |