フランスで開催中のサッカーのコンフェデレーションズ杯で、6月26日にリヨンで行われた準決勝カメルーン―コロンビア戦の試合の後半72分、カメルーンのMFマルク・ビビアン・フォエ選手(28)が突然、プレーと関係ところで意識を失って倒れ、担架で運ばれて心臓マッサージなどを約45分間受けたが、そのまま意識は戻らずスタジアムの医務室で亡くなった。長くフランスリーグでプレーし、昨シーズンからはプレミアリーグで活躍していたフォエ選手の突然の悲報を受け、3時間後に行われたフランスVSトルコでは試合前に黙祷が行われ、フランスの選手の中には泣き出してしまう選手もいたほど。この試合でゴールを決めたアンリ選手は、天に指を差すポーズでフォエ選手への哀悼の意を示し、フランスは試合には勝ったものの、そこに笑顔はなかった。
サッカーの国際試合中に選手が亡くなるのは異例の事態で、その死因については心臓発作とされおり「試合前から気分がすぐれなくて薬を服用していた」といわれているが、異常気象による猛暑と高い湿度、そして1日おきの開催という過密日程、この2つの要素を無視する事はできない。給水タイムを設けないなど、大会運営側の気の利かない部分もあったようだし、最悪のピッチ状態だったし…いくらアフリカ人が暑さに慣れているといっても、彼らは何年もヨーロッパのプロリーグのスケジュール(秋→春)に合わせた体作りをしてきた。本来、6月というのはフルシーズンを戦い抜いて疲労の極地にある状態であり、この時期に行われる国際大会やW杯だけを見て世界の頂点を見た気分になっている人はとても御目出度い人だと言わざるを得ない。
FIFAというのは巨大な利権団体であって、サッカーの普及と発展に対して特別に何かをしてくれるわけではない。現在も、2006年のW杯出場枠を巡って、開催国のドイツの意向を無視して36カ国への出場枠増加案を押し付けようとしたり、集客力のないコンフェデを日本で永年開催しようとしたり…余計な事ばかりしてくれています。今回のコンフェデで中1日の強行日程を組んだのも、大会会期を圧縮して経費削減を狙ったものだったし、フランスが製作する国際映像はカメラ数が少なすぎてゴールシーンを満足に追えないという有様…フランス戦をゴールデンで(EU時間)流したいから、この試合は真昼間に行われたわけで…せめて、これがちょっとは涼しくなるナイターの試合だったら、こんな悲劇は起きなかったかもしれないのに…
カメルーンという国は、W杯の中津江村遅刻騒動で日本ではすっかり有名な国になってしまったが、その実態は、さしたる資源もなくサッカー選手として以外に成功する道はない貧困に喘いでいる国である。陽気な人が多いアフリカ人にしてはシャイで温厚なフォエ選手は、この試合のハーフタイムの時、チームメイトに対して「この試合は死んでも勝たなくてはいけない」と檄を飛ばしていたそうだ。彼らにとって国際試合とは、日本代表のような曖昧な帰属意識による誇りなどではなく、国の威信と個人の生活と未来を賭けた戦争なのだ。
今回の事件は不慮の事故で片付けてしまって良い問題ではない。選手の疲労を無視した人災というべきものであり、それは一歩間違えば日本代表にアクシデントが起きていても不思議ではない状態だった。中1日を固定メンバーで戦う事がいかに無謀な事か…ジーコ監督は象徴としては有効かもしれないが、指揮官として有能であるとは言えないかもしれない(長嶋監督みたいなもの?)。いずれにしても、このような不幸な事故が二度と起きないよう、機構や運営側も選手のコンディションというものに細心の注意を払っていただきたいものである。
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