会場評
今回から会場を池袋から東京ビッグサイトに移したわけだが、前回の総申し込み数を上回る約4000SPへと規模を拡大し、カタログも約1.5倍に増量になりました(価格は据え置き)。りんかい線が全線開通したといっても、交通の利便性の低下は否めない。早朝組みの話によると、最初から館内通路に引き込んで行列を形成していたらしく、東と西をつなぐ連絡橋通路は人で溢れかえって空気が澱みきっていました。今までは狭い敷地で何回も行列を折り返し4館に分散させていたので全体像をつかめなかったのだが、よくもまあ、こんな人数があの狭い池袋の会場に収まっていたものだと、今更ながらCレヴォスタッフの優秀さを痛感。コミケでは移動する事さえ一苦労だった最大手の葉鍵系や月姫エリアも、通路の間隔が広くて人口密度も高くなくて非常に移動しやすかった。今までは4館に分散して入場制限もあり会場移動が難しかったため攻略ルートの設計が重要だったが、単館になって全サークルが横一線スタートになったため、いつもと勝手が違って戸惑った方も多かったみたいですね。外周が使えるので大手の混雑のとばっちりを喰うこともなかったが、会場比のスタッフ数が少なすぎたようで、オープニングラッシュで突撃ダッシュする一般参加者を制止する声も聞こえなかったのは、今後の課題と言えるだろう。でも、次回からはまた池袋に戻ってしまうのが残念です。
ちなみに、同日、東4・5・6ホールでは、Cレヴォと同じ団体が運営する「コミックルネッサンス」という創作系の即売会も行われていたようですが、5000SP募集と公言している割にカタログが100円だったりして「ダメな空気」が漂っていたわけですが、聞くところによると「来場者よりもスタッフの方が多いくらいだった」という閑古鳥っぷりだったようです。やはり餅は餅屋。赤豚が青豚に偽装して男性向けに復帰しようとして軽くあしらわれたように、レヴォも露骨に助平根性を出していると信用を無くしかねないですよ。
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ジャンル評
ジャンルとしては、「マリア様がみてる」の躍進が目覚しい。流行に敏感な準大手サークルが続々と参戦し、ジャンル登録していないサークルもコピー本を製作したり、ネタとして使ったりしていて、そのうち単独ジャンルコードが出来てしまいそうな勢いです。しかし、何しろ本編はコバルト文庫なので、その手のノリが駄目な人は体が受け付けないみたいです。私も同人誌のネタとしてしか本編を知らないのですが、面白い部分を抽出したネタばかりを先に読んでしまったので、今更本編を読んだら期待しすぎもあってガッカリしてしまうかもしれない。それが怖くて、未だに本編はチェックできないでいます。流行に乗り遅れるというのは、こういうことなのか…
ネット廃人を量産中の「ラグナロクオンライン(RO)」も続伸を続けているが、サーバーが落ちていても利用料金はちゃっかり徴収するガンホー(ネット用語では「癌呆」)の運営体制への不満がもう爆発寸前であり、今後のなりゆきによっては減少に転じる可能性も否定できない。ROの同人誌は、ネタが激しく被ってしまうし、専門用語が多すぎて何がどう面白いのか分からない事が多くて、同人からの啓蒙にはあまり役に立ちそうにありません。むしろ敷居の高さを感じてしまうだけです。
最大手ジャンルの葉鍵系も、さすがにネタ的に苦しくなってきたようで、オリジナル路線を突き進んでいるサークルが多くなってきたようです。私としてはその方が面白いわけですが…浮かばれないのが、いつまでたっても発売されない「CLANNAD」で申し込み続けているサークル達です。ギャルゲー界のドラクエにも困ったものですなぁ…Leafも「うたわれるもの」が作品的には評価されたものの、失墜した信用を回復するまでには至らなかったようで、過去の遺産に頼らざるを得ない状況が続いています。両社ともに言えることですが、どうしてゲームを出さないゲーム会社をブランドを神聖視するのか、私には理解できませんな。
TYPE-MOONが商業化宣言をしたことだし、月姫ジャンルの隆盛は今回がピークかもしれませんね。いや、今後は葉鍵系に並ぶ「月姫系」としてジャンルコードとして存続するのかも知れません。月姫同人で名を上げたサークルも活動の延長線上として「Fate」同人に流れるだろうし、次回作「Fate/stay night」は同人界からの期待という追い風を受けているので、商業的にも成功すると予想されます。しかし、それが同人の枠内でのヒットに止まる「メジャーマイナー」になってしまっては意味がない。誰に対して、何を目的とするか、それを銘菓うにしないと、商業化宣言をした意味がなくなってしまいます。商業でやる以上、きちんとしたプロモーション戦略を示していただきたいものです。
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注目作品ミニレビュー
今回最大の大当たりの1冊です。ひとことでジャンルと内容を説明するのは難しいのですが、作者本人の言葉を借りると「妄想絵日記浪漫譚」ということになるみたいです。これは、HP「美月亭」でほぼ毎日更新されているWEB絵日記「がんばれ美月さん」を本にまとめた物です。これはあくまで実在する人物とは一切関係がない「はず」ですが、あまりにリアルすぎる修羅場の進行と逃避と資金繰りは、同人に携わる者なら誰しも通った道であり、つい目を細めてしまします。でも、さすがに預金通帳は常に△(つまりマイナス)、家賃を印刷代に使い込んでしまった、「貯金は計画的に、同人は犯罪的に」という件(くだり)は笑うに笑えませんが、口コミでジワジワと人気が出てきているしショップ委託も好調なので、そのうち活動も軌道に乗る…はずです。その経過も含めて暖かく見守って行きたい逸品です(TLD制作進行に余裕ができたら正式レビューも書くかも?)。
イベント前日、同僚のI氏とカタログの最終チェックをしている時、私が「明がときメモGSの本を出すらしい。しかもギャグらしい。」と言うと、ものすごく驚いていました。確かに、明はときメモ本や久遠本の古豪サークルで通ってきたし、ギャグというイメージもないから無理からぬ話だけど。私も、ときメモGSの本編はやったことがないのだが、サギリックのGS本(ギャグ)を読んでいたので、あのゲームがギャグとして成立する余地が十分にあることは分かっていたんです。でも、明のGS本には予想を遙かに超える面白さがありました。コナミ(&メタルユーキー)が大嫌いの私でさえ、うっかりゲーム本編をやりたくなってしまうくらいです。主人公(つまり女の子)が主役でありネタの中心という構図であり、「主人公=目線隠し」という文法を逆手に取ってギャグキャラに仕立て上げる事で、一般的なギャルゲー愛好者に対しても「女性向けゲーム」という違和感をまったく感じさせません。なるほど、こういう楽しみ方もあんるですねぇ〜
エヴァのアスカ本を中心に活動してきた、電波塔(もりのけつね)・PEPPY ANGEL(桜月りん)・Monkey's taste(曙はる)、この3つのサークルの合同誌、それが「アスカ三昧」です。普段はシリアスなシリーズものを書いているその反動もあり、今回の企画モノ読み切りは非常にリラックスして描けたようですね。この3氏共通のファンである私にとっては、それぞれの作風を生かしたそれぞれのアスカが生き生きと描かれている様は、何度読んでも読み飽きないですねぇ。桜月さんの(白黒でも感じられる)色彩豊かな絵柄と自由奔放なアスカも好きだし、曙はるさんのギャグテイストなタッチと素直じゃないアスカも好きだし、もりのけつねさんの墨絵っぽい画風と愛想のないアスカも好き。そんなアスカ好きなら大満足の1冊といえるでしょう。
原作の自虐的でアブノーマルなギリギリの芸風が大好きな私は、イベントでは必ず「改蔵」本をチェックしてきたわけですが、納得できる作品には1冊たりと出会えませんでした。しかし、今回ようやく「これは!」という1冊にめぐり合えた気がします。やはり、原作がとっても「アレ」なので、正攻法でパロディにしてもしょうがない。Kanonのキャラクターをベースにして、ギャルゲー界のタブーを改蔵の肝とも言うべき小ネタとして効果的に使用しています、(例:裏切られた人々の痛み「2003年夏コミをCLANNADで申し込んでしまった37サークルの皆様(うちひとりは友人)」、ダメ反逆者の数々「鯖落ちしても金は取る癌呆」「同人活動否定で某板で叩かれても自分のアニメでは「ヲマエモナー」」「年に何も出なかったくらいでがたがた騒ぐな。我々は2年も待たせたのだ!」、フラグ管理失敗「新刊落ちました(でもラグナはやってました)」、etc...)。その上、ぐだぐだなオチまで見事に再現しています。奇跡的な一発芸の切れ味を是非お楽しみください。
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