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週刊GM研 Vol.88
2003/04/05


【News Headline】
  • 猛威を振るう重症急性呼吸器症候群(SARS)
  • 【mini Review】
  • 漫画
  •  : エマ(1)(2)
  • DVD
  •  : まほろまてぃっく〜もっと美しいもの〜(5)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 4月18日号(vol.748)
    【COLUMN】
  • TYPE-MOON商業化宣言!

  • ■News Headline

     【猛威を振るう重症急性呼吸器症候群(SARS) 】 

     世界各地で猛威を振るっている重症急性呼吸器症候群(SARS) 。2002年11月中国・広東省で異型肺炎が報告されるようになったが、2003年2月下旬に香港でその治療にあたっていた病院で集団感染が起きる至って、世界的に大きなニュースとして取り上げられるようになりました。4月4日現在、世界保健機関(WHO)の集計によると、SARSの患者は17カ国、2353人、死者も84人に上っている。現在、日本国内での発症は確認されていないが、感染の疑いがあるとされる人がすでに14人いるとされており、依然予断を許さない状況が続いています。

     この新型肺炎の恐ろしいところは、感染力が極めて強力で、なおかつ現段階では抗生物質による予防法や治療法が存在しないことである。発見当初は病院などで患者と直接接触した場合に感染すると考えられていたが、村やマンションの住人がまるごと感染したりするなど、空気感染の危険性も指摘されています。何かにつけて対応が遅い厚生労働省の公式発表なんてあてにできないので、パニックになって密閉型のマスクが品切れになる前に準備しておいて、各自が自衛する他ありません。

     イラク攻撃と時期が重なったため「生物テロなのでは?」という見方もされているが、発信源とされているのがイラク擁護派のなのでその線は薄いだろう。むしろ、エボラウイルスのように「人間以外の何か」から持ち込まれたウイルスである可能性が高いと言われている。空前の好景気に沸く中国が推進する開発政策が、知らず知らずのうちに自然界の禁忌を犯してしまった、という話は考えられなくもない。この地球上には最早人類未踏の地など存在しないが、人間が住むべき場所ではない土地はいくらでもあるのだから…


    ■mini Review

     【エマ(1)(2)】森薫 / コミックビーム 
     さる信頼する漫画読みの方から「面白いメイドさん漫画がある」と何度もこの作品の名前が挙がっていました。私は取立ててメイドさんが好きというわけではないし、その時は話半分に聞き流していたのですが、行きつけの漫画専門書店で平積みにされている、この単行本の表紙を見て一発で惚れてしまいました。メイドで無口で美人メガネで照れ屋、という属性持ちのツボを突きまくりの主人公(エマ)のキャラ設定もさることながら、あとがきの作者のコメントにもあるように、作者の趣味丸出しの無駄に力の入りまくった主観描写が素晴らしい!(1巻のP77なんかはその最たる例です)

     と、ここだけクローズアップすると普通の萌え漫画のように思えますが、そこはそれ、漫画界の独立愚連隊:月刊コミックビームの連載作だから一味違います。物語の舞台は、産業革命の転換期真っ只中の、伝統と革新が共存する19世紀末のロンドン。鉛筆画による陰影や空の描写が不機嫌なロンドンの空気を上手く表現されています。物語は、メイドのエマと上流社会に名を連ねる青年ウィリアムスとの「身分不相応の恋」を描いているのですが、「階級の違いが恋の障害になる」というのは、現代の恋愛観では障害の克服が絶対正義と解釈されてしまうため、その障害の真の意味を理解できません。しかし、現実にその恋を押し通すことが、当時どれほど困難で厳しく苦しい選択なのか、この作品では克明に描いています。先祖が築き上げてきた家の歴史と格式と伝統、親兄弟や100人もの使用人を養っていくという当然の責務、それを放棄することに他ならないのだから…つらいです。切ないです。ああ、続きが気になるぅぅぅ!

     【まほろまてぃっく〜もっと美しいもの〜(5)】GAINAX/TBS-i 
     第2期TVシリーズの第9話「愛より甘し ちょびっと苦し」と第10話「わたしの好きなもの」を収録。バレンタインデーネタを収録した第9話では、原作とは多少構成が変わっていましたが、夕日をバックにしてみなわちゃんが浜口(はまぢ)にチョコを渡すシーンは、「369との約束」と絡めてあってとても良い演出だったと思います。あ、でも、みなわちゃんの前にフェルドランスが現れた場面は、もう少し激しく動揺してくれたほうが良かった気がするんだけど…

     第10話では、管理者のメフリス教授が「V1962:まほろ捕獲作戦」をついに実行。…したわけですが、うーん、こんなにあっさりと管理者ネタを終わらせてしまっていいんでしょうか?教授はマッドサイエンティストというよりも単なる浅はかな危ない人になってるし… 教授に背いてまほろさんを助けたために撃たれたみなわちゃん、力を使いすぎて意識を失ったまま落下していくまほろさん、まほろさんを助けようと身を投じる優、爆発炎上する業火へと落下していくふたりは…つづく

     ぬぉぉぉぉ!(ちづ風)こんないい場面で来月まで待てとおっしゃるので?(すでに放送が終了しているTV版の構成を見てみたら、何をどうやったら第11話とつながるのか皆目見当がつかないんですけど…)

     【週刊ファミ通 4月19日号(vol.748)】 エンターブレイン 
     あまり評判の良くなかった「やっちゃった同盟」の後釜記事として今週から連載が始まったコラム「桜井政博のゲームについて思うこと」について。桜井政博、と聞いて誰なのか分かる人はあまりいないかも知れませんが、分かりやすく一言で説明すると、「カービーィやスマブラを作ったHAL研の人」です。(あ、一般のゲーマーはHAL研究所が何なのか知らないかも?任天堂現社長の岩田さんもHAL研出身なんだけどなぁ…) 桜井さんは、私が認める数少ない本物のクリエータでであり、ゲーム誌の誌面にあまり露出して来なかったので、こうして毎週その考え方を読むことが出来るのは本当に楽しみです。今回は自己紹介だけで文字が尽きてしまいましたが、これからどんな話が読めるのか楽しみです。

     「携帯遊戯」のコーナーで紹介されていたiアプリ用「ときめきメモリアルLIVE」ですが…う、羨ましい(TLSサポーターの魂の叫び)…ま、それはさておき、いくつか腑に落ちない点がいくつかあります。どうして今更「2」のキャラを引っ張ってくるのか?(いくら「3」が不評だからといっても、ナンバリングもなしに「2」をフューチャーするのは何か違くない?)。しかも、ヒロインの人選の基準が良く分からないんですけど…(人気キャラを分散させて12人を4回に分けて配信しようという魂胆?月額300円x4=1200円、いやはや美味しい商売ですね!(呆))


    ■COLUMN

     【TYPE-MOON商業化宣言!】
     同人活動の終了と、今後の活動について(※このお知らせは期間限定です。)

     同人ゲーム界に激震奔る! 未だにメガヒットを続ける同人ゲーム「月姫」を世に送り出したあの「TYPE-MOON」代表の武内崇氏が、ついに同人活動の終了と商業化宣言を行いました!もう4月2日なので、これはエイプリルフールのネタではありませんよ。まだ商業化は決意の段階で具体的には何も決まっていないようですが、一大ブランドへと成長したTYPE-MOONを、周囲の業界各社が放って置かないでしょう。

     個人的には作品のクオリティを追求するための商業化は避けられないものだと思うし、巨大化したメディア展開に対応しつつ作品製作に専念するためにも、商業化は時間の問題だと思っていたのですが… かなり長い時間をかけて悩んだ末の決断だったようです。商業化は単純に「する」か「しない」かという問題から、するならば時期はどうするのか等含め、かなり前から直面していた問題だったようです。膨らみ続ける周囲からの期待に応えるために、作品に対して注がれる「想い」や「熱量」も段違いになってしまった。それは最早「仕事」と「趣味」の区別をつけられないほどになってしまった。

     「月姫」は同人が自らの手で生み出し、ヒット作品へと育て上げた、極めて稀な成功例です。作品に共感した同人サークルの間で口コミで評判が伝わって、じわじわと人気が出てきて、今では「葉鍵系」に次ぐ第3の単独巨大ジャンルにまで成長し、単純な販売本数でも、作品のクオリティの面でも、下手な商業ギャルゲーメーカーを遙かに凌駕してしまったのです。

     同人をプロモーションの一部やステップ・通過点としか考えていない「プチ野心家」なら掃いて捨てるほどいますが、TYPE-MOONのようにユーザーの総意に背中を押される形で、自然に商業に移行して行ける幸福なケースは滅多にありません。願わくば、既成の商業ギャルゲーが歩んだ破滅の論理に惑わされる事無く、同人の頂点に君臨したという狭い市場での栄光に慢心・満足することなく、これからも「まず作品ありき」というスタンスと、同人の原点であるサービス精神を忘れないで欲しいものです。同人が生んだオリジナルの才能がどこまで行けるのか、GM研は今後も暖かく時には厳しく見守って行きたいと思います。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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