Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.85
2003/03/15


【News Headline】
  • 「売れる」の魔法にかかった!? ハリポタ 35万在庫に悲鳴
  • 「ルパン三世」ハリウッドで実写化
  • 【mini Review】
  • 漫画
  •  : まほろまてぃっく(6)初回限定版
  • DVD
  •  : まほろまてぃっく 〜もっと美しいもの〜(4)
  • 雑誌
  •  : ドリマガ 3月28日号(vol.378)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 3月28日号(vol.745)
    【COLUMN】
  • 連載:ギャルゲーは倒れたままなのか?(第4回)

  • ■News Headline

     【「売れる」の魔法にかかった!? ハリポタ 35万在庫に悲鳴】 
    http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2003mar/13/W20030313MWE1Z100000087.html

     出版不況のこのご時世に、350万部販売というのは化け物じみた数字ですね。ミーハーな日本人は「ベストセラー」とか「全米NO.1ヒット」とか「全世界1億部突破」とかいう宣伝文句に極端に弱いしねぇ…「返品を認めない代わり、注文数を必ず書店に届ける買い切り制」というのは、一般流通ではむしろ当たり前のシステムですが、再販制度による規制が適用されている書籍では珍しいケースです。ローリスク・ローリターンでも安定した委託販売料収入に長年胡坐をかいてきた書店は、他の本と同じ感覚で多めに仕入れてしまい、大変な焦げ付きを出してしまう事になったわけです。熱しやすく冷めやすい、というのも日本人の体質ですからねぇ…

     【「ルパン三世」ハリウッドで実写化】 
    http://www.sponichi.co.jp/entertainment/kiji/2003/03/10/03.html

     「ドラゴンボール」に続いて、今度はルパンですか?ハリウッドのジャパニメーション漁りは止まる事を知りませんなぁ。原作のモンキーパンチ氏は「原作にこだわらず、ハリウッドらしいものを作ってほしい。007シリーズのように長く続いてほしいですね」と言っていて、ハリウッド側の完全委任で製作される模様。スタッフにスピルバーグの名前がありますが、あれはあの監督のいつもの手口である(むしろ、あの人が本腰を入れた作品の方が面白くない気がする)。「脚本に1年かける」という力の入れようなので、それなりのレベルの映画にはしてくれるでしょうけど…でも、ルパン三世のスケベでお調子者な「三枚目の美学」をアメリカ人に理解できるのか…心配です。


    ■mini Review

     【まほろまてぃっく(6)初回限定版】中山文十郎/ぢたま某  
     おまけ付き特装版商法が花盛りの出版業界ですが、そのおまけの質はピンからキリまで様々。しかし、この「まほろ6」の初回限定版についてくるフィギュアは別格です。2ヶ月近い延期をしてまでクオリティに拘っただけあって、+1350円を払うだけの価値は十分にあると思います。しかも、コミックガム本誌で始まる3号連続応募者全員フィギュアプレゼントサービスに連動させた10体のフィギュアの台座をつけて、マニアのコンプリート魂を煽って悪の道に誘い込もうという、えげつない作戦を…

     箱の中からハラリと出てきたチラシを見て凍り付いてしまいました。「速報!コナミからPS2でゲーム化決定!」って…ぐああ!3Dポリゴンまほろさん(裸にエプロン)のバトルシーン?背景負けしてるヘッポコな潜入作戦シーン?恐ろしく読みにくいフォントの色使い………ラブひなといい、最終兵器彼女といい、あの会社は何本の作品を台無しにすれば気が済むんでしょうか?(メタルユーキのKCETではなくKCEJが担当しているのがせめてもの救いか?)

     【まほろまてぃっく 〜もっと美しいもの〜(4)】BS-i/GINAX 
     第2期TVシリーズの第7話「おととい来やがれっ!」と第8話「祖父と孫と」の2話を収録。第7話では「緋立暗黒武闘祭り」が描かれていましたが、原作とはかなり変わっていますね。というか、この話だけ妙に作画も演出も力が入りまくっている気がします。式条先生の「裸心活殺術」ロゴの入り方とか、戦闘力測定スカウターとか、劇画チックなモブ(群集)シーンとか…贅沢を言えば、「貧乳アタック」のシーンを第1期ラストの「SHINING OF THE DARK」の発動シーンと重ねた演出が欲しかったなあ…(出番は少ないけど、セラ役の田中かほりさんの声もお気に入り)

     第8話では美里優の祖父:近衛優一郎(ヴェスパーの首領)が登場。単行本では6巻に収録されているネタですが、原作とはセイントと管理者に関する展開が大幅に変更されているので、単行本との違いを読み比べてみるのも一興かと。秘書の椎名さんの出番が無かったのが残念ですが…「エッチなのはいけないと思います!って言ってるアンタが一番エッチなんじゃないのかい、まほろさんよぉ!」と詰め寄るオリジナルカットはかなりお気に入りです。

     【ドリマガ 3月28日号(vol.378)】 ソフトバンク パブリッシング 
     「シスタープリンセス2」のレビューで、ドリマガとファミ通で笑ってしまうくらい面白い傾向が出ています。ドリマガでは「9・8・9・8」という大絶賛だったのに、ファミ通では「7・6・6・5」という平凡な点数でした。ファミ通のレビュースタンスについては今更言う事は何もないので、ドリマガのレビュースタンスについて。誰が何点をつかたか分からないし、編集者が誌面に出ないのでレビュアーの好みや基準も図りかねる。一応点数の指標として「9〜10点…このソフトは買い!他の人にもオススメできる」とありますが、「シスプリ2」はどう考えても他の人にススメてはいけない劇薬なのではなかろうか?

     「鬼武者3」は、金城武とジャン・レノの競演とな!…2005年にはハリウッド映画公開?ふーん…いや、今更あのシリーズがどうなろうと知ったことではありませんが、こうも露骨に世界市場を連呼されると居心地が悪いですな。金城武のあの活舌の悪い喋りが日本人のスタンダードだと誤解を与えかねないし、日本絡みの仕事(ポカリとか広末とか)が増えてからジャン・レノの俳優としての運気は急降下している気がしてならないのだが…

     「新世紀エヴァンゲリオン〜綾波育成計画・アスカ補完計画〜」来たーーーーッ!しづきみちるさんの同人誌「アスカ&綾波育成計画 Princess Princess Maker」を読んだ時から「こんなゲームがあったらいいのに」とは思っていましたが、まさか本当に実現してしまうとは。でも、ブロッコリーのヘッポコなゲームデザインは相変わらずみたいだし、前作の使いまわしの部分が多すぎるような気がする…「鋼鉄のGF2」といい、エヴァ再起動はいいけれど、これではリニューアルじゃなくて、単なるリサイクルなのでは?

     【週刊ファミ通 3月28日号(vol.745)】 エンターブレイン 
     「FFX-2」をまだ1秒たりともプレーしていないのに、北瀬さんのインタビューを読むのは少々気が引けたのですが、立ち読みではそんな贅沢は言っていられません。遊べないジレンマもあって相当ひねくれた先入観を「FFX-2」には抱いていたのですが、このインタビューを読んでみると「意外とゲームとして面白そうじゃないか」と好感が持てる内容でした。それに「悲しくて泣ける物語よりも、笑える物語の方が作るのは難しい」というセリフは、奇跡と感動がインフレを起こしているギャルゲーメーカーどもに聞かせてやりたいくらいです。

     「スターオーシャン3」のフリーズ疑惑は、SCEが提供したソフトウェアライブラリに不具合があった、と公式に発表されましたが、どうも説明不足の点が多すぎるような気がします。ソフトウェアライブラリに問題があるなら、同様にそのライブラリを使用して開発された他のソフトでも、同様のフリーズが起こる可能性がある。fromファミ通.comにも多くの意見が寄せられていたし、現に2週目のSO3の販売本数は前週比82%減と急ブレーキがかかってしまった。その辺をちゃんと報道してくれないと、メーカーとユーザーの距離は開くばかりですよ。(その間を取り持つはずのNo.1情報誌がこんな体たらくでは致し方ないが…)


    ■COLUMN

     【連載:ギャルゲーは倒れたままなのか?(第4回)
    「メディアミックスがギャルゲー業界を滅ぼす?」】
    前回の記事

     ここに興味深いデータがあります。ファミコンは国内で約2000万、スーパーファミコンは国内約1800万台、プレイステーションは国内約1600万台…というように、着実に時代の支配者だった標準ハードの国内市場は縮小を続けています。市場は縮小していく一方なのに、ハードの性能は加速度的に向上し、それとともにソフトの開発費も高騰の一途を辿っている。それなのに、なぜゲームがビジネスとして成立しているのでしょう?

     その答えは2つあります。1つは世界進出によるマーケットの拡大戦略、もうひとつは、メディアミックスによるゲーム外産業の活用です。ゲームが世界を相手にすることによって引き起こされた弊害については、後日の論文で考察することにして、今回はメディアミックスの実態について考えてみたいと思います。

     メディアミックスという言葉が生まれたのは、PCエンジンROM2やメガCDなどのように、ソフトの媒体にCD-ROMメディアが使用されるようになった頃でした。巨大な容量を生かすために導入されたのが、声優によるキャラクターボイスであり、そこから自然発生したのが「ゲームのおまけ」としてのドラマCDでした。そして、その「おまけ」を圧倒的な物量でキャラクタービジネスとして成立させてしまったのが、これまで何度もこのコラムで取り上げてきた「コナミ商法」でした。

     この事業展開には功罪の両面があるわけですが、この時点ではまだ「ゲームが先にありき」という考え方が根底にありました。「ときメモ1」しかり「TLS」しかり「サクラ大戦」しかり…まずゲームとして面白い事が前提条件であり、メディアミックスの展開は「サービス」的な意味合いが強かったわけです。しかし、その様相を一変させたのが、いわゆる「センチメンタルグラフィティ・ショック」でした。

     「センチメンタルグラフィティ」は、まずディープなギャルゲーマニア専門誌に絞って原画師の甲斐智久氏の流麗なキャラクターデザインを公開して、読者に強烈なインパクトを植えつけた。そして、声優の公開オーディションで話題を作り、全キャラのシングルCDなど関連グッズを売りまくり、ゲーム各誌でプロデューサーが大ホラを吹きまくり、何度も発売日延期を繰り返して予約数を集めまくり…人気絶頂のまま遂に迎えたゲーム本編の発売日…だが、そこに待っていたのはかつてない惨劇でした。

     実際に発売されてみたゲームを観て、ファンたちの期待は完膚なきまでに打ち砕かれてしまった。原画と全く似てない画面上のキャラと、「暗黒太極拳」「死霊の盆踊り」とまで形容されたオープニングムービー。設計した人間のセンスを疑いたくなるようなインターフェースと、穴だらけのゲームシステム…その悪評は、まだ2chもなくてインターネットの普及率も低いあの時代にもかかわらず、瞬く間に千里を奔ることになった。その上、大量の予約に気を良くしたNECインターチャネルとセガが、後先考えずに増産して事実上の「売り逃げ」を行ったため、ショップ側は「発売後1ヶ月で新品980円」という前代未聞の叩き売りしてでも処分しなければならなかった。中古価格は5円〜280円まで下落し、もはや産業廃棄物扱いとまで呼ばれる事に…この1件でセガはショップから多大な反感を買ってしまい、これがサターン戦線の敗北の決定打になり、セガは天下獲りを目前にしながら転落への道を再び歩む事になるのです…そして、後に「センチ商法」としてギャルゲー業界を瞬く間に覆い尽くしたこの手法は、その程度の差こそあれ、ほぼ全てのギャルゲーにおいて現在に至るまで続いているのです。

     メディアミックスとは、最早「おまけ」ではなくプロモーションに必要不可欠な要素であり、「後付のプラスアルファ」ではなく最初から利益の一部として当て込んだ戦略商品と化しています。ゲームで本数が捌けないなら、少数でも強力な購買力を持つファンを”信者”化して、多機種移植や大量のグッズでゲーム本編の発売前から囲い込んで、何度でも甘い蜜を吸い上げればいい。最悪の場合でも、ゲーム本編を発売して化けの皮が剥がれてしまっても、発売前にグッズを売ってしまえばそこまでの利益は確保できる。いや、市場規模としては既に「ゲームの方がおまけ」と言われてもしょうがないくらいです。

     今では、ソフトパブリッシャーにコネクションを持たないブランドや、発売前にプロモーションを行えないブランドは、陽の目を見ることさえできず世間に名も知られぬまま消え去り、メディア展開の前提条件がなければ企画すら通せない、そんな本末転倒状態で「ゲームとしての面白さ」を追求した作品がこのジャンルから生まれるわけがない! 疲弊しきったファン層の購買力と、萌えの奔流で曇ってしまった眼…ギャルゲーに未来(あした)はあるのだろうか

     次週、「終論:ギャルゲーに未来(あした)はあるのか?」へ続く


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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