Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.65
2002/09/28


【News Headline】
  • マイクロソフト、レア社買収について正式発表。
  • 【mini Review】
  • DVD
  •  : あずまんが大王(1年生)
  • 雑誌
  •  : 電撃萌王vol.3
  • 雑誌
  •  : ドリマガ 10月11日号(vol.366)
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 10月11日号(vol.721)
    【COLUMN】
  • 続:最近の同人誌事情について

  • ■News Headline

     【マイクロソフト、レア社買収について正式発表。】 
     米マイクロソフトは、イギリスのゲーム開発会社のレア社を3億7,500万ドル(約465億円)で買収したことを発表した。レア社とは、任天堂のセカンドパーティとして活躍していたゲーム会社で日本ではあまり馴染みがないなのだが、海外市場での知名度は抜群。『スーパードンキーコング』『スターフォックス』『ゴールデンアイ007』『パーフェクトダーク』…長年、任天堂の3Dゲームの屋台骨を支えてきたビックメーカーなのである。

     今回の買収により、レア社はMicrosoft Game Studiosの開発チームに入ることになる。Xbox用のタイトルは2001年のE3でGC用タイトルとして発表されていたアクションRPG『Kameo』が2003年春に発売される予定であり、今後2年間でXbox向けに最低5タイトルを開発することが決定している。※『ドンキーコング』『スターフォックス』など任天堂が知的所有権を保有している作品はXboxで発売されることはない。

     マイクロソフトのお家芸「買収拡大戦略」の本領発揮ですな。圧倒的な資金力に物を言わせて、会社を丸ごと乗っ取ってしまうその戦略の有効性は、パソコンアプリケーション業界での成功(支配)を見れば明らかである。いよいよ巨人が形振り構わず牙を剥き出しにしてきたのか… まぁ、今回の件については任天堂も株の譲渡に賛同したのだから、この売却にはそれ相応の理由があったのだろう。

     これは邪推だが、任天堂には「次の一手」によほどの自信があるのだろう。恐ろしいスピードで進化するゲーム業界の中にあって、泰然自若とした姿勢で理想を追求する任天堂が、海外のゲームファンから愛される理由はそこにあるのかも知れません。勝った負けたとかハード戦争とか野次馬根性で煽るばかりで、理想を追わなくなってしまった日本市場。油断していると、とんでもないことになりうやもよ?


    ■mini Review

    DVD 【あずまんが大王(1年生)】 テレビ東京 
     短編劇場版「あずまんが大王」を見た時は、そのあまりのクオリティの低さに、思わずちゃぶ台をひっくり返してしまうほど激怒させられたものです。私の住んでいる奈良市は、テレビ大阪のチャンネルはあるのに映らないという特殊な一部の地域であり、テレビアニメシリーズはまったく見れません(生駒山のバカヤロー!)

     アニメ版「あずまんが大王」に対しては、そんな最低のイメージしかなかったのですが、初回出荷分2000円OFFキャンペーンにつられて、ファンアイテム程度の気持ちでDVD版を買ってみると…あれ?意外と面白いぞ?(あくまで比較級)原作漫画版を暗唱できるほど読み込んだ私にとっては、原作ネタを再現する場面での詰めの甘さが気にならないわけではないし、声優配役の違和感と演技力のなさは否めない。でも、所々「アニメ版ならでは」の演出が新鮮に思える場面もあるので、別物と割り切れば「これはこれで」と許容できないこともない(かも)

    雑誌 【電撃萌王vol.3】 メディアワークス  
     良くも悪くも「現状維持」ですねぇ…安定していると言ってよいのか、変わり映えしないと言うべきなのか…(私的には、田中久仁彦先生のB2ポスターだけでも"買い"なのですが)。連載企画「同人ソフトをつくろう!」では夏コミでの戦果報告が載っていましたが、非常にリアルな数字(大赤字)で現実の厳しさを目の当たりにすることに。まぁ、いかに全国誌の企画と言えども、体験版に500円出すほどオタクの財布は緩くありません。(委託価格700円などもっての他です)

     ebのマジキューも隔月刊になり、ますます激化する萌雑誌戦争ですが、作家の取り合いになって作品のクオリティの低下が心配されます。実際に同人活動に支障をきたしている作家さんも何人もいます。同人活動が単なるステップの場になってしまうとしたら、それはとても寂しいことだし、同人系市場の縮小につながりかねないのではなかろうか?

    雑誌 【ドリマガ 10月11日号(vol.366)】 ソフトバンク 
     「ドリマガ読者レース for ドリームキャスト」は今回でいよいよ最終回!最後の最後で40位から13位に大きくランクキングを上げた「EVER17」が大きく扱われていたのが、個人的にとても嬉しかったし、レビュアーさんの「再評価レビュー」にも頷くばかり。自分が名作と信じる作品が正当に評価されていくというのは、本当に嬉しいものですね。

     付録の「東京ゲームショウ20002最新ラインナップ映像DVD」では、セガ系列開発会社の新作ゲームの映像がテンコ盛り。PS2、Xbox、GC、GBA…いずれもグラフィックは驚くほど綺麗だし、数もすごい。でも、「あいかわず売れそうにはないなぁ」というセガ伝統(?)の確信めいた予感だけは、昔から変わりませんでした。世界市場を意識しすぎたソフト展開にも不満が…

     P16に、かつてゲーム業界の風雲児と呼ばれた飯野賢治氏の記事が小さく載っていました。いつの間にかまた会社が変わっているけど、スーパーワープって一体何だったんでしょう?完全に「あの人は今」状態です。嗚呼、諸行無常…

    雑誌 【週刊ファミ通 10月11日号(vol.721)】エンターブレイン 
     「ファミ通EXPRESS」の東京ゲームショウレポートを軽く読み飛ばす。いやはや、あまりにもネタが寂しくて目にも止まりませんでした。(これはファミ通が悪いのではなくて、ゲームショウがつまらなかったという意味です。ある意味では現場の状況を正確に伝えているとさえ言えます。”色がない”のがファミ通の良い所であり、悪い所でもあるんですけどね…)

     「読者が選ぶTO20」では「街(サターン版)」が再び3位に急上昇!期待はずれだった「かまいたちの夜2」が圏外落ちしたことから分かるように、チュンソフ党サウンドノベル派が再び一致団結したようです。「ユーザーからの強い要望があれば続編も考える」というのはゲームメーカーの常套手段だが、これほどの期待に応えないでどうする!

     P194の「ベストプレープロ野球(GBA)」の広告に失笑。せっかく、今もっとも輝いているグラビアプリンセス「小倉優子」をイメージキャラクターに起用しているのに、こんな写真しか使えないセンスでは売れるものも売れません。P196には「機動新撰組 萌えよ剣」の広告が…あぁ、本当に発売しちゃうんですね、ピッポッパッ(壮絶な負債の計算中)…うっ、げほげほ…そもそも、高橋留美子絵で「萌えろ」と言われても無理がある。時代劇ファンも新撰組の女性ファンを敵にまわして、一体どんな客層に売る気なのだろう?


    ■COLUMN

     【続:最近の同人誌事情について 】   
     前回は同人誌専門店における問題点を書きましたが、今回は空前の記録的ヒットを続けている同人ゲーム「月姫」について考察してみたいと思います。

     同人をやってる人間で知らない者はいないと思いますが、一応解説をしておきましょう。「月姫」とは、同人サークル「TYPE-MOON」が製作した同人アドベンチャーゲームです。その製作は、99年の夏コミの頃からひっそと始まりました。今や400万ヒットにも届こうという公式HPも、当時は1日わずか4ヒットでした。その後、2000年冬コミで遂に「完全版」の完成に漕ぎ付けました。シナリオ枚数5000枚、イベントグラフィック150枚。同人ゲームの限界に挑戦したその圧倒的なクオリティは、徐々に口コミで瞬く間に噂が広まり、一気に人気に火がつきました。

     現在も未だにロングヒットを続ける「月姫」の実売本数は、もはや計測不能ですが、一説には3万本とも5万本とも云われています。この数字は「1万本が関の山・3万本で大ヒット」と呼ばれる不況のどん底に喘ぐ商業ギャルゲージャンルでは、驚異的な数字なのです。

     その高いクオリティは多くの同人誌作家の琴線に触れ、「同人の同人」という珍しい現象を生み、今や同人誌界では「key」「Leaf」に次ぐ最大手ジャンルにまで成長しました。同人業界を巻き込んで次々に販売されるグッズ、出版界を巻き込んだアンソロジー、同人ゲームサークルの頂点「渡辺製作所」とのコラボレーションまで実現し、そして遂には、アニメ化まで決定!嘘のようなホントの話です。

     まさに同人誌界のアメリカンドリームであり、現在進行形ですでに伝説となった「月姫」。その華々しい成功は、技術偏重で量産消費されるだけの商業ゲーム界の深刻な病理への痛烈なアンチテーゼと言えるでしょう。「個人レベルでもここまでできてしまうのだ」そう証明して見せてくれたことは、業界の行末を憂う者の1人として、1ユーザーとして素直に感謝したい。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

    GM研TOPページに戻る