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週刊GM研 Vol.56
2002/07/20


【News Headline】
  • 新指導要領初の通知表、絶対評価に悲喜こもごも
  • 【mini Review】
  • CD
  •  : ファイアーエムブレム 封印の剣 オリジナルサウンド・トラック
  • 書籍
  •  : ラブひな∞
  • 書籍?
  •  : コミックマーケット62 カタログ
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 8月2日号(vol.711)
    【COLUMN】
  • 「コミケ狩り」事件について

  • ■News Headline

     07/19 【新指導要領初の通知表、絶対評価に悲喜こもごも】 
     文部科学省は、今春の新学習指導要領の実施に合わせ「他人との比較による相対評価ではなく、個人の力をきちんと見る絶対評価で、基礎・基本の確実な習得を目指す」との方針を決めた。相対評価では、1つの教科について、「5」と「1」の割合がそれぞれ7%、「4」「2」がそれぞれ24%、「3」が38%とされていたが、絶対評価に変わって、そうした配分は無くなることになる。

     テストの点だけではなく、普段の授業の態度や意欲も考慮することで、生徒の学習意欲の向上を図ろうという狙いのようだが、現場を預かる教師達にとっては大きな負担を強いられることになる。絶対評価には継続的なデータ分析が必要となるが、美術とか音楽教師の場合、生徒とは週に1回顔を合わす程度だし、1学年だけで何百人にものぼる生徒たち一人一人の目標と現状を完璧に把握することなどできるわけがない。文部科学省は「採点に教師の主観を入れないようにしてる」と言っているが、では、客観に徹した継続的に採取したデータで判定するということなのだろうか?教師は生徒を日頃から「見張る」ようになり、生徒は教師に「媚を売る」ようになる。そんな上辺だけ繕った授業なんて、私は真っ平ゴメンだね!

     とどのつまり、高校受験の際に「内申書」という得体の知れない監視記録が使われている以上、学校の学力レベルから生徒個人の実力を推察できる相対評価がなくなるのであれば、ますます内申書への評価比重が重くなる恐れがある。いくら教育現場を改革しようとしても、水源(教育界)自体が汚染されているのだから効果が上がるわけがないのになぁ…


    ■mini Review

     【ファイアーエムブレム封印の剣オリジナルサウンド・トラック】
     GBAの「ファイアーエムブレム封印の剣」のオリジナルサウンドトラックです。ファミコン版のCM以来、実に12年ぶりの再作詞によってフルサイズ化された「ファイアーエムブレムのテーマ・オペラヴァージョン」はファン必聴! また、CDのタイトルこそ「オリジナルサウンドトラック」となっていますが、収録されているのはゲームのオリジナル音源ではなく、シンセサイザーによる原曲が収録されています。ゲーム上のBGMでは省かれた音を聴き比べるマニアックな楽しみ方もできますが、GBAのサウンド性能はお世辞にも良いとは言えないし、闘技場とバトルシーンがプレー時間の大部分だったので、ほとんどの曲を覚えていないのが難点です。2500円という微妙に安い価格設定なので、ファンアイテムとして買うにはいいかも。

     【ラブひな∞】 赤松健&週刊少年マガジン編集部 
     「ラブひな」の最終公式研究本となる本書は、「「ラブひな0」からお値段据え置きで200ページ増量」B6単行本サイズで450ページという問答無用の分厚さで、これでもか!と言わんばかりに情報が詰め込まれています。赤松先生のロングインタビューあり、カラー傑作名画選あり、背景資料ロケハンあり、用語辞典あり、しのぶクッキングレシピあり、果ては連載前の初期設定資料・ネーム・シナリオのラフまで収録されていて、タイトルの通りまさに∞(無限大)な内容になっています。読んでも読んでも終らない(レビュアー泣かせな本です…)

     赤松先生もインタビューの中で語っていましたが、「ラブひな」はとても幸せな作品だったと思います。ラブコメとしては十分にキャラの魅力を引き出せたと思うし、出来や良し悪しは別問題として、アニメ化もゲーム化もされたしグッズも山ほど発売されました。結果的に、赤松先生も結婚できたしね。(ある意味では、これが一番の戦果だったのでは?)。WEB日記によると、すでに次回作のネームが動き出しているようなので、新たな赤松ワールドの始まりにも期待したいものです。

     【コミックマーケット62 カタログ】  
     カタログのレビューを書くのも妙な気もしますが、ネタとしては十分に面白いので書いてしまいましょう。まず表紙ですが、なんともコミケらしからぬ涼を誘う爽やかなデザート群…技術レベルが高いのはよーく分かりますけど、どんなに爽やかさを装ったところで、約1400ページという電話帳並のブ厚さと重さは隠せません。これで頭をカチ割られたら必死(訳:必ず死ぬ)ですなぁ… 最近は書店独自特典による販売合戦も過熱気味。でも、「特典をつけるくらいなら100円でも安く売ってくれ!」というのが、購入者の大半の意見なのでは?

     私はいつも、本ベースのカタログ以外に、CD-ROM版のカタログも購入しています。私のようにチェックサークルが300以上あったりする同人ヘビーユーザーの域に達すると、お目当てのサークルの配置を捜すだけでも大仕事です。その点、CD-ROM版なら検索機能で一発で捜せます。サークル名が変更されていても、作者名で検索できるし、自分のチェックサークルだけを抽出して印刷すれば、自分仕様カタログの出来上がり!荷物もかさばらないしね。でも、本ベースでペラペラとページをめくっていて偶然に新しい出会いが見つかる魅力も捨てがたいので、両方買っているわけです。それに、最近はこの凶悪に重いカタログを買わないと「夏が来た!」という気がしませんしね!

     【週刊ファミ通 8月2日号(vol.711)】 エンターブレイン 
     今週のファミ通はツッコミどころがないので、何も書くことがありません。以上! …って、このネタは何度も使っているので信憑性が疑われそうですが、私にとってファミ通というものは「新聞」のようなものなので、少々のことでは驚かないし腹も立てません。日々平穏、世は全て事も無し。それが本当は一番いいんですよ。

     では、ツッコミではなく「分析」をしてみましょう。「ファミ通.com ユーザーの意見箱」の調査「スーパーマリオサンサインを購入しますか?」では、「購入する:32.5%、本体と一緒に購入する:12.2%、購入しない:55.3%」という結果が出ています。数字だけ見れば購入派は過半数を割っていますが、ファミ通読者のゲームキューブ所有率(約25%)を考慮すると、「ゲームキューブを持っているけど購入しない:約14%」→「ゲームキューブを持っている人の購入率:約86%」となり、一転して圧倒的な支持率を弾き出します。しかも、単純に計算して業界全体で20%近くキューブの所有率が上がることになります。現在のキューブの普及台数を150万台とすると、86%で約130万本、ここに新規ユーザーの+αが加わるのだから、机上の計算だけでも大ヒットは間違いない。「ロングセラーになりやすくて良作を高打率化する」という特殊なキューブ市場が拡大することは、キューブの今後の展開に大いに有利に働くことであろう。

     と、えらそうに分析しておいてナニですが、私はマリオは買いません(ええっ?)。キューブは買いましたが、それは「パワプロ9」のためです(PS2版のパワプロ9も同時発売されたが、どうしてもキューブのアナログスティックで操作したかった)。キューブの中古市場は値崩れしにくいので、中古でマリオをやる機会はいつ巡ってくることやら…(今回の最新作は良くも悪くも「旬モノ」なので、時期を逃すとますます入りにくくなるやも…)


    ■COLUMN

     【「コミケ狩り」事件について】 
     警視庁少年事件課と練馬署は7月16日までに、漫画やアニメの愛好者が集まる同人誌即売会「コミックマーケット」(通称コミケ)の参加者から金を奪ったとして、強盗致傷などの疑いで私立大2年生と都内の中高生ら計13人を逮捕。リーダー格の1人の22歳の男を同容疑で指名手配。彼らは「マニアは金を持っている」と考えて、昨年12月29,30日に開かれた冬のコミケに合わせて犯行を計画。彼らは、これを「コミケ狩り」と呼んでいた。

     このような徹夜組を狙った恐喝事件は今に始まったことではありませんが、こうして大規模な摘発が行われたのは非常に稀なケースだと思います。確かに、同人誌即売会はすべて現金取引なので、参加者は大金を携帯しています。しかも、深夜の会場周辺は明かりも少なく、例え誰かに助けを求めても巻き込まれるのを恐れて見て見ぬフリをされてしまう。特に、単独行動をしている人は、恐喝グループの格好の獲物になってしまうわけです。

     しかし、コミケでの徹夜行為は禁止だとカタログに明記されており、徹夜組は規則違反者であって、厳密な意味では保護の対象にはなりません。過去、何度も繰り返されてきた恐喝行為の被害者の大多数が、泣き寝入りを強いられる結果となってしまったのは、被害者側にも後ろ暗い負い目があったからなのでしょう。

     しかし、昨今の同人誌市場の急激な拡大によって、様々な形で社会的影響が取り立たされるようになってくると、どんな些細なことであっても、それは同人業界全体のイメージダウンに繋がり、常日頃から偏見を持って同人業界を叩く機会を虎視眈々と狙っているマスコミ共の餌食にされてしまうでしょう。

     「コミケがなくなってしまうかもしれない」という警告は、決してありえない話ではないのです。公権力によってNGが出たら会場すら借りることができないのですから。(過去、性表現問題で同人業界が戦々恐々していた時期、コミックシティが実際に開催中止に追い込まれた前歴があるくらいですからね!)

     それにしても、どうして昨年末の事件なのに立件まで8ヶ月もかかったのか、不思議でならない。夏のコミケカタログが発売されて同人業界が盛り上がり始めた、この時期をわざわざ狙っていたとしか思えないような、絶妙のタイミングである。警察の警戒態勢も強化されるだろうから、他の恐喝グループに対しては大きな抑止力になるだろう。しかし、徹夜組への抑止効果はあるのだろうか?「警戒が強化されて、むしろ安全」などと考える不埒者が出る可能性もありえる。

     実際に徹夜を取材した事のある私にとってはよく分かることですが、どうしても徹夜で並ばなくてはならないメリットというのは、大多数の人にとっては実はあまりないんですよ。一般の徹夜で並んだって、サークル入場して「シャッター待ち」をしている連中には絶対に勝てませんし、大手サークルの希少本がどんなに希少価値が高かろうとも、趣味が合わなければただの本に過ぎませんからね。彼らもそれは承知の上で徹夜をイベントとして考えているようですが、それが同人誌文化全体にどんな悪影響を及ぼすのか、今回の事件を機によく考えていただきたいものです。


    文責:GM研編集部編集長 gonta

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