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週刊GM研 Vol.32
2002/01/21


Index
【News Headline】
【mini Review】
  • 漫画
  •  : ラブひな(14) 赤松健
  • 同人誌
  •  : Colorful 01 NECO清龍
  • 雑誌
  •  : PALETTA vol.2
  • 雑誌
  •  : 週刊ファミ通 vol.685
    【COLUMN】


    ■News Headline

    【漫画規正法の脅威 】  

     行きつけの作家さんの掲示板で興味深い書き込みを見つけたので紹介しておきましょう。それは、今年の5月に議会提出される予定の「漫画規正法」と呼ぶべき法案です。これは現在施行されている「児童ポルノ禁止法」の強化案であり、今年11月から「絵」の規制も新たに取り入れるというものです。現在検討されている条項は以下の2つです。

    1.あらゆる「絵(漫画・CGも含む)」において、18歳未満と見て取れる人物(絵のみで判断。設定は関係なし)の『性描写』『キスシーン』『水着姿』を描くことを禁止する。
    2.(1)の規定を守らない創作物を製作・販売・所持した者は逮捕・刑罰の対象とする。

     規制対象となる漫画や絵が掲載された出版物・ゲームは、販売や製造だけでなく、持っているだけで「犯罪」になるという法律です。つまり、「学園ラブコメ」すら犯罪扱いになるという法案なのです。しかも、絵が18歳以下に見えるかどうかは政府が判断する…つまり、漫画を読まない&知らない役人が決めるわけですから、場合によっては「ラブひな」が本棚にあるだけで処罰の対象になる恐れすらあります。当然、関連業界からの激しい反発が予想されますが、大手各社が自社作品への法適用を回避するために裏取引をして賛成派に回る事態も十分に考えられる。いずれにしても、オタク産業と同人誌業界が受けるダメージは計り知れないものとなるだろう。

     日本は世界最大の「オタク先進国」である。日本製のゲームが全世界を席巻し、日本製のアニメーションはハリウッド映画に大きな影響を与え、日本製の漫画は文化圏を越えて広がっている。今や、これらは日本が世界に誇るべき文化産業なのである。だが、世界からの高い評価に比べて、日本国内ではサブカルチャーとしか認識されていないのが実情である。未だに「日本文化とは相撲や侍精神に代表される伝統芸能である」という発想から抜け出せない人たちが権力を握っているのだから始末に終えない。時代錯誤も甚だしい!その認識の甘さが、韓国のようになりふり構わず国策としてIT革命を推進する国に遅れをとる事態を招いてしまった。日本がIT後進国に転落しかねない未曾有の危機に直面しているにも関わらず、さらなる規制によって文化の芽そのものを潰しにかかっているのだ。これを悪法と呼ばすにいられようかっ!

     この法律が倫理として正しいかどうかは問題ではない。倫理面だけなら「生類憐れみの令」ですら素晴らしい法律と言える。だが、清すぎる水には魚は住めないように、人間は奇麗事だけでは生きていけない。必要以上の規制は文明の退行をも招きかねない危険性を孕んでいるのだから。

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    ■mini Review

    【ラブひな(14)】  赤松健/講談社/週刊少年マガジン 

     「ラブひな」もついに最終巻!言いたいことは色々あるけど全ては言えない、だから電話74364(悩み無用)!(C)リーブ21………コホン、冗談はこのくらいにしておきましょう。いや、でも、冗談のひとつでも飛ばさないとやってらんない困った状況になってしまいました。2月4日にはレビューを上げる予定を立てていますが、現時点でどうレビューを書いたらいいのか分かりません。私が好きなのは「ラブひな」という作品だったのか、それとも「赤松健」という漫画家だったのか?ファンとしてではなく、批評家の端くれとして作品を見ることができるのか?紹介者として何を伝えるべきなのか…悩みは尽きません。はてさて、どうなることやら…

    【Colorful 01】  NECO清龍/矢野芳典&阿茶 

     気持ちいのいい同人誌に出会った。と言ってもエロくて気持ちがいい…という下品な意味ではない。「自分が好きなこと」を貫き通したその姿勢が気持ちいいのです。この同人誌は、1人の読者として好きな作家さんの作品を多くの人に見てもらいたい。好きな作家さんに好きなように書いてもらった絵を集めて発表したい。ジャンルがバラバラな本を売るのは大変です。A4フルカラーは印刷代もかさみます。でも、「自分で読みたい同人誌を自分の手で作りたい」という信念を貫いています。その姿勢はレビュアーとしても深く共感するものがありました。

    収録作家: 都月りこ(ポッピーバス)/うえののぱんだ(ぱんだ万歳)/ゆーのす(ゆーのす通信)/小山田ラブ子(フリキュラマシーン)/月読さじん/DATE(星狩座)/すたひろ(すたひろBOX)/おがこういち(エグザイルEvolution)/西俊秀(ばっすん工房)/かき氷屋ほっそー(かき氷なし夢本店)/竜騎士07

    【PARETTA vol.2】  エンターブレイン 

     「げーむじんPARTNER」の休刊から誌名を変更して新創刊した「PARETTA」の2号目は、相変わらず無闇やたらに豪華です。堀江由衣、フルーツバスケット(の担当編集者)、樋上いたる、星界の紋章(赤井孝美&森岡浩之)…マニアには辛抱堪らん、えげつないラインナップです。「ときメモ3」のプロデューサー:メタルユーキ氏のインタビューも予想外に面白かったです(その理想が「ときメモ3」で実現できたかどうかは別の問題ですが)。個々のコーナーは見所満載なのですが、全体的にちょっと有名どころを狙いすぎている気もしないでもない… やっぱり、どんなに金をかけて豪華ゲストを囲ったとしても、藤島康介先生がいないと「げーむじん」らしいとは言えないのかもしれないなぁ…

    【週刊ファミ通 vol.685】  エンターブレイン 

     あの「続編企画」が再び!大手各社が「参考にはなったが現実的に製作に移すのは困難」という前回と同じ感触を示したが、そんな中でナムコの広報:ベンジャミン田中氏が「7650票集まったら開発に持っていって頼んでみる」という好意的発言をしていた。ただし、1人1票という制限があるので組織票は不可能。締め切りは特に設定しないそうだが、達成は困難か? そしてチュンソフトの「街2」は製作者の意欲は十分だが、やはり制作費の問題が浮上。そこで、制作費を抑えるためのアイディアを広く募集することに。スポンサーの獲得やタイアップ広告をゲームに登場させるなどのマクロな案から、撮影班の弁当代を安く上げるなどのミクロな案までなんでもありです。締め切りは特にありません。私も「街2」を待望する者の一人として、秘策をひとつ提案してみたいと思います(その具体的な中身は内緒です)。

     話は変わってPS2の「鉄拳4」のオマケモード「TEKKEN FORCE -ASSAULT-」が非常にいい感じです!これ単体で3Dアクションゲームで発売できるほどのチカラの入りようは尋常ではない。あぁ、しばらく格闘ゲームの一線を退いていた私だが、「鉄拳4」を契機に復帰することになるかも?「鉄拳3」のボスコノビッチ博士のようなお気に入りキャラが見つかるといいなぁ…(バーチャ派ではないので「バーチャ4」は保留します)

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    ■COLUMN

    【ときメモ3、出荷と実売の虚々実々】  

     プレイステーション2用ソフト「ときめきメモリアル3 約束のあの場所で」の出荷本数が12月末の段階で「193,260本」であることが発表された。しかし、1月6日までの実売本数は、わずか「89,578本」(電撃オンライン調べ)。電撃がネットできない店舗販売分約15%を考慮したとしても「103,014本」でしかない。実に、50%近くがデットストックとして売れ残るという凄まじい光景が小売店で繰り広げられているわけである。

     ソフマップでは予約特典の目覚し時計が余っており、他店でも新品価格が軒並み5000円を割り、中古買取価格は暴落を続ける…発売から1ヶ月で3880円という中古価格まで飛び出しました。東証平均株価もビックリな大暴落です。100万本・50万本タイトルの同時多発出現という空前の年末年始好景気に沸くゲーム業界を尻目に、見事なまでに問題児振りを如何なく発揮しています。1月13日付の最新データによると、「ときメモ3」の累計販売本数は「114,625本」。15%の誤差を考慮しても「131,818本」でしかない。先日私はMAX18万本と予想したが、それすら下回りそうな気配である。

     コナミ側からしてみれば記録的大敗である。しかも、これは「ときメモ3」単体の不振にとどまらず、コナミそのものの信用問題に発展することは確実だろう。コナミは強力な自社流通網を持っており、問屋を通さずに小売店と直接取引きをしている。小売店からの信用を失えば、小売店はリスクの少ない商品のみを余らないように発注量を抑えることとなる。そうなると潤沢なソフト供給が途絶え、売り切れによってビジネスチャンスを逸することとなる。これらはやがて消費者にコナミブランド全体への不信感を植え付けることとなるだろう。

     そして、約7億7千万円を集めた「ときメモファンド」の償還率も元本割れは確実な情勢である。「ときメモGirls Side」がまだ発売されていない(本気で出すのかどうかも怪しいものだが)とはいえ、お気の毒にとしか言いようのない無残な結果です。ただし、このファンドは「実売本数」ではなく「出荷本数」が対象なので、コナミが損失を隠すために強引な出荷をして小売店に更なる不良在庫を押し付けて、表面上の信用問題を回避する可能性もありえないとは言い切れません。しかし、現実問題として取引停止をちらつかされたりしたら、小売店は泣き寝入りするしかないでしょうね。コナミ製品を店に置かないわけにもいかないですし。でも、消費者は嘘の上塗りに騙されるほど馬鹿ではない!私は「ときメモ3」をゲームとして決して低く評価していません。それだけに、コナミの醜聞が残念でならない…

    ときメモファンド償還率表

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    文責:GM研編集部編集長 gonta

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