Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.107
2004/05/31


【News Headline】
  • winny開発者逮捕の余波
  • 【mini Review】
  • 漫画
  • : エマ(4)
  • 雑誌
  • : ドリマガ 6月4・18日号(vol.404)
  • 雑誌
  • : 週刊ファミ通 6月11日号(vol.808)
    【Weekly Column】
  • F1佐藤琢磨から目が離せない!

  • ■News Headline

     【winny開発者逮捕の余波】 
     ファイル共有ソフト「winny」の開発者である東京大学助手の金子勇容疑者(通称:47氏)が、著作権法違反幇助の容疑で逮捕されたことは、大きな波紋を呼びました。ソフト開発者が著作権幇助で立件されたケースは世界でもほとんど前例がなく、ネット社会やソフト業界、法律関係者の間でも激しい議論になっています。

     ソフトが無料で手に入り、暗号化されたP2P通信で解析も解読も難しいということで、折からのブロードバンド化の波にも乗って爆発的に広まったwinnyの利用者は少なく見積もっても200万人以上と言われています。あらゆる映画・音楽がボタン一つと数秒で手に入ってしまうという、利用者にとっては夢のようなツールでしたが、それは同時に産業界にとっては大いなる脅威となりました。そのあまりにも大きくなりすぎた影響力は、映像・音楽ファイルの著作権侵害に止まらず、通信回線帯域の占有、個人・企業情報の流出や、winnyのみに感染するウイルスが蔓延するなど、深刻な社会問題になっていました。

     しかし、ネットエージェンシーなどのセキュリティソフト企業によってwinny暗号通信の全容が解明されるに至り、事態は大きく動き始めました。昨年11月には二人のwinny利用者が「みせしめ」として逮捕されました。しかし、利用者は一向に危機感を抱くことなく、それどころか、ソフトに摘発されないための新たな改良が加えられる始末。痺れを切らした警察が、「開発者の逮捕」という最もインパクトのある非常手段に打って出たのは、必然の流れだったと言えます。

     ただし、法律専門家に言わせると「幇助の成立には確定的な故意が必要」との見方が多く、また、ネット上での47氏の発言が間違いなく本人によるものであると特定できなければ、有罪の根拠が成立しなくなってしまいます。取り調べでは「コピーが簡単にできるネット社会が放置されているのは疑問。変えるには著作権法違反状態を蔓延させるしかないと考えた」と供述していたが、警察の劣勢を見て取るやいなや一転して容疑を否認。開発者の権利保護を目的として名乗りを挙げた弁護団とともに、徹底的に抗戦する構えを見せています。

     裁判の行方がどうなるかは、現時点では何とも言えませんが、では、「捕まらないwinny」などの特集を組んで隠蔽テクニックを掲載して人気を煽ってきた、アングラ系のネット雑誌などには、まったく責任が無いと言えるのでしょうか?幇助という意味では、こちらの方が大いに問題だと思いますよ。どんなに素晴らしい技術でも、どんなにご大層な理想を掲げようとも、使い方を間違えればそれは犯罪であり、詭弁でしかありません。デジタル時代のモラルというものを、教育レベルでもっと真剣に考えていく時代なのかも知れませんね。


    ■mini Review

     【エマ(4)】 森薫 / 月刊コミックビーム 
     5/29に高田馬場の芳林堂書店で開催された、「エマ4巻発売記念・森薫先生サイン会」に参加してきたので、サイン入りの単行本をGETできました。サイン会の順番待ちの間暇だったので、さっき買ったばかりのエマ4巻を読んでしまうことに…ぐはぁっ!なんて切ない再会(泣きそうに)…このマンガは、人前で読むもんじゃありませんね。森薫先生は、作品のあとがきでは「あんな自画像」ですが、どうやら「美人らしい」と噂には聞いていました…はてさてその真偽のほどは…「かなりの美人」でした。この美人さんの頭の中がメイドさんで一杯だと思うと、とてつもない違和感が…でも、そのギャップがまたイイのかも。美人の種類としては宝塚系というか…エマでいうとドロテアさん似、というと褒めすぎですか?ちなみに、隣に控える大場さんは、桜玉吉さんのマンガに出てくるキャラそのまんまでした(笑) サインは購入した本の表紙裏に、名前入りで筆ペンでエマを描いてもらうというものでした(今回は絵柄の指定は不可)。巧みな筆ペン捌きでスラスラとエマのイラストを描いていただきました。筆ペンでメイドキャップのフリフリとメガネをデフォルメして描く技を生で拝見できて、大変勉強になりました。

     内容のほうでは、いつにも増してビクトリア朝のメイドへの愛執が溢れています。やはり一番のお気に入りのシーンは「着せ替えエマさん」でしょう(笑)今までずっと地味なメイド服ばかりだったので、華やかな衣装とのギャップがまた…イイ!涙の再会、そして溢れ出たホントの気持ち…ああ、続きが気になるぅぅぅ!

     【ドリマガ 6月4・18日号(vol.404)】 ソフトバンクパブリッシング 
     合併号という名の月刊化が遂に始まってしまった「ドリマガ」。今号のレビューは発売から1週間が経過してからになってしまいましたが、これは、雑誌がどの書店でも入手できなかったからです。付録にPSO BB(ファンタシースターオンライン・ブルーバースト)のオープンβテストを無料で遊べるディスクが付いているとはいえ、ここまで品薄になるのは解せません。変則日程による発注ミスか?それとも、発行部数が極端に少なかったのか?謎は尽きません。緊急手段としてソフトバンクのSBPストアにオンライン注文して入手しましたが、何が悲しゅうて雑誌をネットで3日かけて買わにゃならんのか…ふつふつとやり場のない怒りがこみ上げてきます。

     事実上の月刊のため?本誌の方も多少リニューアルされています。定位置だったアンケートハガキページに、「ゼゲいち」が載っていなかったときは、目の前が真っ暗になりましたよ(滝汗)。Column&Comicのコーナーがまとめて移動になっただけで、半ページのまま掲載されていたので、安堵しましたが…その代わりに始まった連載が、あかほりさとるの小説「サクラ大戦・巴里前夜」というのは…内容については敢えて語りませんが、とんでもなくスペースを無駄にしているあのレイアウトはどうにかからないんでしょうか(怒)?それ以外にも、DOAのグラビアやスペースハリアーのペーパークラフトなど、やたらと付録が多くてとっても読みにくいんですけど(怒2)。そのくせ、「ラズベリー」との連動テレカ応募者全員サービスでは、ドリマガ作家独自のテレカはゼロ…って、全然連動してないじゃないですか(怒3)!…ホンマに大丈夫なのか、ドリマガよ!

     そんな中、SIMPLEシリーズの「双葉理保」特集は面白かった。巨大化して暴れるグラビアアイドル双葉理保を、自衛隊のヘリや戦闘機を操って保護・鎮圧するという「大美人」のあまりものバカバカしさに、もうメロメロです。CLANNADの次にやるゲームとしてはギャップが大きすぎますけど(笑)

     【週刊ファミ通 6月11日号(vol.808)】 エンターブレイン 
     先日のE3で発表された、SCEと任天堂の次世代携帯ゲーム機、PSPとNDSについて、ソフトメーカーとユーザーに行った緊急アンケートの結果は、とても興味深いものでした。PSPについては、メーカーの90.7%が「魅力を感じる」と回答し、NDSについても87%が「魅力を感じる」と回答し、ともに高い支持率を見せました。しかし、ユーザーの意見では、魅力を感じたのは、PSPが59.3%、NDSが73.3%、というように大きく異なる結果が出ました。また、「PSPとNDS、どちらに魅力を感じるか?」の直接対決では、メーカーの53,7%がPSPを支持、NDSは27.8%だったのに対して、ユーザーでは、PSPは42.4%、NDSは57.6%というように、正反対の結果が出ています。改めて、作り手側(といより販売側)の論理と、ユーザーが実際に求めている遊びの質との意識の乖離が、より顕著になったと言えるデータだと思います。任天堂の岩田社長も言っていましたが、ゲーム業界はイノベーションの危機に瀕しています。必要なのはメディアの革命ではなくアイディアの提言だというのに…新しい種類の娯楽に飢えているユーザーの欲求に、メーカーの意識がまったく追いついてこない状況がいつまでも続くなら…ゲーム以外の娯楽に人々が流れて行ってしまうのも必然と言えよう。

     桜井政博さんのコラムでも、タイムリーに「ゲームを作る動機とエゴ」について語られていましたが、今のゲーム業界というものに、どれほど製作者のエゴを貫いた作品があるかというと、甚だ疑問です。開発者のこだわりや作品への愛が感じられるような、生臭い…けれど一度知ったらもう離れられない、そんな強烈な魅力を持った作品が目に見えて減ってしまったのは、ある意味必然だと言えます。もはや、ひとりの天才と少数のチームでゲームを作れる時代ではなくなり、高度に分業化されすぎた製作工程と、失敗しない商品としての論理が現場に染み付き、ごく少数の売れっ子クリエイターは、プロモーション活動に製作時間と労力の多くを奪われ…こんな環境では、出る杭も出ようがありません。だからこそ、GBAの「逆転裁判」のようにわずか6名前後の少数精鋭だからこそ出来た作品作りができる(かもしれない)、NDSには是非頑張っていただきたいものである。


    ■COLUMN

     【F1佐藤琢磨から目が離せない!】
     F1の日本人ドライバー:佐藤琢磨(BARホンダ)から目が離せない。欧州GP(ドイツ)では、予選では日本人ドライバー最高位の2位を獲得する快挙を達成し、レース中もタイヤ交換の間隙ながら途中トップを走行。日本人ドライバーでは鈴鹿での鈴木亜久里の3位以来、14年ぶりとなる表彰台圏内を確実な3位で終盤まで走行していたが、さらに上を目指して2位のR・バリチェロとのバトルの末に接触。5位でコースに復帰するもエンジントラブルで無念のリタイアとなってしまいました。しかし、タクマの速さには赤き皇帝:M・シューマッハも惜しみない賛辞を送り、完全に同格のライバルとして意識させるだけの存在感を示してくれました。

     ホンダの黄金時代とともに、かつて日本にも訪れたF1黄金時代…ミーハーな私もこの時にF1を知った口でした。しかし、バブル経済の崩壊によるジャパンマネーの失速によって、スポンサーの旨味の無くなった日本人ドライバーは徐々に居場所を失って行き、ホンダのF1撤退表明、そしてアイルトン・セナのレース中の事故死…F1デビュー戦からずっとファンだったM・シューマッハに訪れた無敵の時代も、ライバル不在の虚しい勝利でしかなく…急速に冷めていくF1人気と同じく、私のF1に対する興味も薄れて行きました。

     しかし、今年のF1はとても面白い。その話題の中心は、もちろん佐藤琢磨である。かつて、セナに憧れてレースの世界に徒手空拳で飛び込んだ若者が、わずか8年で自力で掴み取ったチャンス。日本人ドライバーだからということではなく、単純にそのクレイジーな果敢な走りに引き付けられたのです。解説者は五月蝿いくらいに結果ばかり求めるけど、琢磨が3位を安全にキープすることしか考えられないドライバーなら、そもそもこんな順位で走行できるポジションには到達できなかっただろう。自分の前に自分より遅い奴がいるならブチ抜くだけ…それがレーサーの本能というものです。接触で順位を下げたことよりも、エンジンを壊してしまったことを悔しがる琢磨の姿は、本物のファイターそのものでした。

     淡々と優勝回数を重ねてきた無敵の王者ミハエル。ここ数年は、勝ち続ける事に虚しささえ覚えて引退説も何度も囁かれていた。しかし、今シーズンのミハエルの目は生き生きとしているように見える。長らく出会うことの無かった真のライバルを見つけた子供のように…セナとバトルを繰り広げていたあの若かりし日々のように…セナの事故死から今年でちょうど10年…セナとホンダの姿を見て育った世代が、かつてセナさえも勝てなかった最強の王者と対等に渡り合う!これを痛快と言わずに何と言おう!私のように長い間F1から離れていた人も、是非今年のF1は見て欲しいものです。


    文責:GM研編集部編集長 gonta