ファイル共有ソフト「winny」の開発者である東京大学助手の金子勇容疑者(通称:47氏)が、著作権法違反幇助の容疑で逮捕されたことは、大きな波紋を呼びました。ソフト開発者が著作権幇助で立件されたケースは世界でもほとんど前例がなく、ネット社会やソフト業界、法律関係者の間でも激しい議論になっています。
ソフトが無料で手に入り、暗号化されたP2P通信で解析も解読も難しいということで、折からのブロードバンド化の波にも乗って爆発的に広まったwinnyの利用者は少なく見積もっても200万人以上と言われています。あらゆる映画・音楽がボタン一つと数秒で手に入ってしまうという、利用者にとっては夢のようなツールでしたが、それは同時に産業界にとっては大いなる脅威となりました。そのあまりにも大きくなりすぎた影響力は、映像・音楽ファイルの著作権侵害に止まらず、通信回線帯域の占有、個人・企業情報の流出や、winnyのみに感染するウイルスが蔓延するなど、深刻な社会問題になっていました。
しかし、ネットエージェンシーなどのセキュリティソフト企業によってwinny暗号通信の全容が解明されるに至り、事態は大きく動き始めました。昨年11月には二人のwinny利用者が「みせしめ」として逮捕されました。しかし、利用者は一向に危機感を抱くことなく、それどころか、ソフトに摘発されないための新たな改良が加えられる始末。痺れを切らした警察が、「開発者の逮捕」という最もインパクトのある非常手段に打って出たのは、必然の流れだったと言えます。
ただし、法律専門家に言わせると「幇助の成立には確定的な故意が必要」との見方が多く、また、ネット上での47氏の発言が間違いなく本人によるものであると特定できなければ、有罪の根拠が成立しなくなってしまいます。取り調べでは「コピーが簡単にできるネット社会が放置されているのは疑問。変えるには著作権法違反状態を蔓延させるしかないと考えた」と供述していたが、警察の劣勢を見て取るやいなや一転して容疑を否認。開発者の権利保護を目的として名乗りを挙げた弁護団とともに、徹底的に抗戦する構えを見せています。
裁判の行方がどうなるかは、現時点では何とも言えませんが、では、「捕まらないwinny」などの特集を組んで隠蔽テクニックを掲載して人気を煽ってきた、アングラ系のネット雑誌などには、まったく責任が無いと言えるのでしょうか?幇助という意味では、こちらの方が大いに問題だと思いますよ。どんなに素晴らしい技術でも、どんなにご大層な理想を掲げようとも、使い方を間違えればそれは犯罪であり、詭弁でしかありません。デジタル時代のモラルというものを、教育レベルでもっと真剣に考えていく時代なのかも知れませんね。
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