Weekly Web Magazine
週刊GM研 Vol.105
2004/05/16


【News Headline】
  • E3:任天堂vsSCE 仁義無き次世代携帯ゲーム機戦争開戦
  • 【mini Review】
  • 漫画
  • : せんせいのお時間(5)特装版
  • 漫画
  • : おみたま通販便
  • DVD
  • : マリア様がみてるDVDコレクターズエディション1
  • 雑誌
  • : 週刊ファミ通 5月28日号(vol.806)
    【Weekly Column】
  • プロ野球2004の展望(パリーグ編)

  • ■News Headline

     【E3:任天堂vsSCE 仁義無き次世代携帯ゲーム機戦争開戦】 
     アメリカで開催された世界最大のゲーム展示会「E3」において、任天堂とSCEの次世代携帯ゲーム機が相次いで発表され、ハード戦争は俄かに活況を呈してきました。

     まずは、任天堂の次世代携帯ゲーム機「ニンテンドーディーエス(以下、NDS)」について。先行発表されていた上下2つの画面を持つという仕様は、かつてのゲームウォッチを髣髴とさせるデザインに。注目されていたGBAとの互換性についても、デュアルスロットとデュアルCPUで完全互換を実現。また、新たに液晶のタッチパネル機能、マイク入力機能、無線LAN機能の搭載を発表。任天堂の社長の岩田氏は「馬力の時代は終わった。NDSは真のニューハードだ」と発言し、任天堂のソフト部門の中核を担う宮本茂氏も「高性能化による進化を見直す時期。NDSを任天堂の”第三の柱”に育てる」と発言。業界の覇権の論理に振り回されて、既存のハードの枠組みで実現できるアイデアの頭打ちや、複雑化によって生じたゲーム離れに悩まされてきたゲーム業界が、この現状を打破する可能性として、ゲームの本質を追及する機能を満載したNDSを、単なるGBAの延長としてではなく、任天堂の主力ハードとして、サードパーティから高い支持を受けているのは、必然と言えるのかもしれません。定価については正式発表はなかったものの、おそらくPSPと差をつけるために2万円以下に抑えてくるでしょう。

     次に、SCEの次世代携帯ゲーム機「PlayStation Poratble(以下、PSP)」について。初めて公開された実機を見た感想は…はっと見ではワンダースワンにも似ているけど、中身はソニーの本気がぎっちり詰まっています。16:9のワイド液晶の発色は、「はめこみ合成なのか?」と疑いたくなるほど美しい。GT4などのビックタイトルはPSP版も発売され、FF7の映像作品もPSPでも供給され、世界で99社・日本でも34社がすでに参入を表明するなど、携帯ゲーム市場を独占する王者:任天堂に対して、一気に攻勢を掛ける体制は着々と整えられているようです。ただし、ソニーとしては、次世代ゲーム機というよりは、「21世紀型のウォークマン」として売り出して、独自規格の光ディスク「UMD」を売り込みたいという思惑があるようですが… コナミのソフト戦略の中枢を担う北上さんは、「映画をいつでもどこでも鑑賞できると売り込むのは馬鹿げている。映画は集中して観たいもの」という風に、PSPの戦略位置付けについて苦言を呈しているように、業界内でも疑問の声がないわけではありません。バッテリーの稼働時間ついても疑問が残りますし…価格の発表はありませんでしたが、赤字覚悟で普及促進を図ってくることでしょう。

    ※E3情報については、紙媒体での情報が出揃う来週末に、改めて考察したいと思います。


    ■mini Review

     【せんせいのお時間(5)特装版】 ももせたまみ / まんがライフMOMO 
     原作のノリの良さを上手く再現しているテレビアニメ版も絶好評の「せんせいのお時間」の最新刊は、通常版の他に、巻末に収録された何点かのカラーイラストと、興津高校の生徒手帳が付いてくる限定版バージョン(特装版)も販売されています。5巻では、日本のオタク文化に憧れてやってきた、新キャラのアメリカ人短期留学生「アンソニー」君の登場によって、例年通りの季節・行事ネタにも新たな視点での面白さが引き出されています。必然的にオタクの師匠:渡部くんの出番が多くなって、オタクネタのギャグも多くなっているのも嬉しいポイントです。「目の前の締め切りで手一杯で、先のことなんて考えられない」というオチは…同業者(?)としては他人事ではありませんなぁ…みかセンセは、丸顔ネタでどんどんお子様化しているような気も…でも、面白いからオールOK!アニメもいいけどマンガもね。→「せんせいのお時間」レビュー

     アニメ版の好評で原作の人気と知名度も急上昇中なのですが、残念ながら、アニメ版の放映がテレビ東京のみなので、全国レベルでの人気の盛り上がりはどうなのか…となると多少不安はあります。放送地域の拡大を強く希望!

     【おみたま通販便】 ももせたまみ(漫画) & 南央美(エッセイ) 
     みかセンセ役の声優:南央美さんが、まんがライフMOMOに連載中の通販生活エッセイ「通販BINちゃん生活」と、原作マンガの作者のももせたまみが、南央美さんを主人公にしたコミック「おみたま」を1冊にするという、夢の競演(コラボレーション)が実現した単行本、それが「おみたま通販便」です。アニメ版で急に人気が出たかのように思われることある「せんせいのお時間」ですが、元々はドラマCDで結構昔から支持を集めていたんですよ。ドラマCDとしては異例の24作も作られる長寿作品になっていますからね。そうしてシリーズを長く続けてこれた秘訣は、南央美という人となりが、容姿・背格好・性格を含めて、みかセンセそのまんまの「はううっ」な人であったからでしょう。娘煩悩なパパさんってとこまでそのまんまだし…通販生活エッセイとしても楽しく読めますが、「せんせいのお時間」との関連をあれこれ考えながら読むのも一興かと。「おみたま」女子高編では、キリスト教系の女子高で挨拶が「ごきげんよう」…って、本当にあるんだ「マリみて」みたいな学校(笑) アロマ講座で知り合ったステキなマッチョガイ(でも乙女)のローズさんのような変り者と出会ってしまったりと…どこまでもマンガみたいな人が演じる(素のまま?)キャラが面白くないわけがありません。南さんファンだけでなく、アニメから入ってきた新規ファンにもオススメしたい1冊です。

     【マリア様がみてるDVDコレクターズエディション1】 アニメ公式サイト 
     「マリア様がみてる」のDVDシリーズのリリースは先月から始まっていましたが、このシリーズには通常版の他に、完全予約限定版のコレクターズエディション(以下、CE1)も存在します。通常版のvol.1とvol.2を収録しているため、通常版とはナンバリングと発売時期がずれているのでご注意下さい。CE1の特徴は、とにかくデカイということ。DVD時代になって標準サイズはコンパクトになったのに、わざわざレーザディスクサイズを採用しています。その巨体を生かして、カバーの中面には、ひびき玲音先生の描き下ろしイラストをフルカラー・フルサイズで収録しているものの、映像特典の「マリア様にはないしょ。」は、通常版の初回生産版に収録されているものと同じなので…限定版としての価値の妥当性には多少疑問が残ります。もっとも、コレクターはそんな事は気にしないものなのでしょうけど…さて、この巨大なケース、どこに収納したらいいものやら…

     TVアニメ版のマリみて(以下、アニみて)の評価については、すでに多くの同人誌で知っていたので、祥子様の目が青いことも、声優さんの声の合う合わないについても、静止画ではどうにもイメージが合わなかった作画についても、「まぁ、そういうもんだ」と納得した(諦めた?)上で鑑賞することができました。声についてはそのうち慣れるでしょうけど、柏木のホスト声だけは、ちとやりすぎという気も…それと、リリアンの校舎ってあんなに和風でいいのかな?という気も。薔薇の館の外観もイメージに合わないような…瓦葺きはないだろうと。古さの中にも歴史の重みを感じさせる明治初期の西洋建築、というイメージだったんですけど…あ、そうそう。この世界にまったく免疫の無い人は、アニメ版を観てみてから小説版を読んでみようかな?などと考えてはいけません!絶対に! ロサ・キネンシス・アン・ブウトン・プティ・スール(紅薔薇のつぼみの妹)などの専門用語が連発される最初の数分だけで、観る気をなくすでしょうから…小説→同人誌→アニメ、この順番で楽しむことをオススメします。

     さらに細かくチェックしていくと…第1巻の内容を3話にまとめるという構成上、原作のいくつかのシーンが、残念ながらカットされています。蔦子さんが機転を利かせて祐巳ちゃんを新聞部の取材から逃がすシーンでの「ナツメさん」、カレーの試食に祐巳ちゃんの分も用意されていたことで山百合会のメンバーとして認められていることを実感するシーン、祐巳ちゃんのシンデレラの衣装の胸に詰め物をするシーン、柏木が「自分は男しか愛せないけど結婚はするから、さっちゃんは好きに男を作っていいよ」と、かつて祥子様に言ったシーン…このように、さりげないキーポイントが抜けているし、終盤での間の取り方にもいくつか疑問があるし、祐巳ちゃんの百面相はもっと賑やかでもいいような…

     もっとも、これだけ細かく指摘できるということは、それだけ「マリみて」の世界が好きでしょうがないという証明でもあるわけですけど。さて、次は「黄薔薇革命」での由乃さん大活躍に期待しましょう。

     【週刊ファミ通 5月28日号(vol.806)】 エンターブレイン 
     すでにネットニュースで、世界最大のゲーム展示会「E3」の最新情報が飛び交っている中では、どうしても雑誌媒体の速報では物足りなさを感じてしまいますが…とりあえず、発表に合わせて情報を開示することになっていた、大手メーカーの何作かについては記事紹介されていましたが…心躍らんラインナップですなぁ…海外市場を強く意識した洋ゲーテイストが、数点の写真を見ただけでプンプンしてきます。アメリカの展示会なんだから、北米向けのタイトルを投入するのは至極当然なのですが、最近の海外向け和製ゲームというものは、ゲームの仕組みは20年前くらい前からほとんど変わらずにリメイクを重ねただけで、そこにハリウッドの雰囲気を観よう見真似で厚化粧してみせただけ。そんな印象しかありません。それは、和洋折衷というより、自分たちの文化が持つ美徳を見失って市場に迎合しているだけ、という風にしか思えません。詳しくは、雑誌メディアでE3情報が出揃う、来週号にて分析したいと思います。

     「2004 CESA 一般生活者調査報告書」のデータ分析に、興味深いデータが載っていました。「ゲームを文化だと思いますか?」という質問に対して、思う:46.1%、思わない:39.3%、という結果が出ています。この結果をCESAは「近年、ゲームを文化として位置付ける気運が高まっている結果」と分析していますが、本当にそうなんでしょうか?これは、ゲーム文化論者の私としては、少々物足りない数字です。ゲームにもっとも親しんでいるはずの10代の年齢層に、「ゲームは文化だとは思わない」と回答した人が多かったのも無理からぬことです。彼らにとっては、生まれた時から当たり前のようにゲームというものがあり、ゲームの大半は続編の続編ばかりであり、3年5年に1本あるかないかの革新的な作品の出現を待つというサイクル…要するに、感覚的には漫画週刊誌の連載を読む、程度のものでしかないのです。映画のように毎週毎週新作・大作が封切られてヒットを出し続ける、なんて市場は、ゲームの世界では幻想しかありません。遊び手の眼は、作り手が考えている以上にシビアですからね。緩慢な市場衰退を続ける国内市場の現実に目を背けて、水が低きに流れるがごとく海外市場にこぞって逃げ出しといて、文化を名乗るなんておこがましい!どうせ統計を取るなら、もっと現場の現実に即した声を性格に拾っていただきたいものである。


    ■COLUMN

     【プロ野球2004の展望(パリーグ編)】
     先週のコラムでは、今年のプロ野球セリーグの展望について書きましたが、今週は引き続きパリーグについて各チームごとの戦力分析をしてみたいと思います。混迷を極めるセリーグとは違って、パリーグの戦力構図は至って単純です。西武とダイエーの2強と、その他4チーム。ただし、今年は3位までに入っていればプレーオフに進出できるという新しい制度が導入されたため、上位2チームも安穏とはしていられないし、実質上の残り1つの席を巡って4チームによる3位争いも激化することになるでしょう。確かに、シーズン終盤まで緊張感を保つことで消化試合は減らせるだろうけど、現場でやってる選手たちにとっては、1年間戦ってきて1位になることが=優勝ではない、ということに違和感を覚えるでしょうねぇ…そこで緊張が切れてしまい、余力を残したセリーグのチームに大敗…なんてことにならねば良いのですが…

     まずは、5/16現在では首位を独走中の西武について。松井稼頭央がメジャーに移籍し、カブレラが骨折で出遅れたこともあり、打力の低下は避けられないという見方が大半だっし、開幕当初は連敗が続いていたにも関わらず、若手の台頭によって誰もが予想しなかった首位独走。ロッテがなぜか解雇したフェルナンデスは思わぬ大活躍だし、松井稼頭央の後継者として我慢して使うつもりだった中島の才能は一気に開花したし、長年の課題だった伊東監督以後の正捕手の座も、細川でほぼ確定できました。投手陣も大沼が先発で使える目処が立ったし…このチームのスカウトマンは本当に良い仕事をしますねぇ…これで、いまひとつ調子に乗り切れない松坂が復調して、カブレラが戦線に復帰すれば、このまま最後まで独走しそうな気配もあるけど、厄介なのは今年から導入されたプレーオフ制度です。どんなに独走しても、プレーオフで敗退すれば優勝を逃すという理不尽な制度の犠牲第一号にならねば良いが…

     次は、ダイエーについて。オフシーズンは本社の経営問題で大揺れに揺れたものの、昨年とほぼ同じ戦力を維持したままシーズンインできました。小久保の理不尽な無償放出については、元々戦力に入れなくても優勝できたわけだから、チーム力という面では影響はありません。それを差し引いても、相変わらず打線の破壊力は健在です。しかし、斉藤・和田・新垣・寺原などの怪我人続出の投手陣もあるし、ルーキーに任せなくてはならない抑え投手陣のコマ不足はもっと深刻です。村松の抜けた穴も意外と大きくて、ホームラン以外で点が取れなくなってしまったのも痛いところ。他チームが軒並み話題性のある新戦力を整備してきただけに、現状維持が精一杯のダイエーの苦戦は免れないだろう。でも、今年は1位になる必要は必ずしもないのだから、短期決戦に照準を合わせたチームの調整さえできれば、十分に勝機はあると言えるでしょう。

     次には、日本ハムについて。北海道への本拠地移転とメジャー帰りの新庄効果で、人気面ばかりが注目されていたけど、4月の打率が4割を超えたセギノールと、日本の野球に順応してきたエチェバリアの両大砲と、坪井、木元、高橋、など打線の破壊力は相当のものです。怪我で調子に乗れていない小笠原が復調し、投手陣が整備されれば、3位に食い込むことも十分可能でしょう。新庄は数字だけ見れば相変わらずですが、広い札幌ドームでは守備範囲の広さは重要だし、ムードメーカーとしても貴重な存在です。ただし、怪我がちな選手が多くて選手層が薄くて、シーズンを通して安定した戦力を維持できないのが難点です。

     次は、ロッテについて。開幕当初は連勝街道を突っ走っていたが、守護神:小林雅の乱調で連敗に歯止めが掛からず、韓国期待の星:李も極度の不振で2軍落ち。野球浪人から復帰した小宮山や、まだ以前の迫力を取り戻せない黒木に頼らざるを得ないコマ不足の投手陣。オリックスの井原監督との間に勃発した遺恨のせいなのか、オリックスには全敗と相性の悪さも露呈。これでは上位を狙うのはなかなか難しいだろう。バレンタイン采配がマジックを再び起こせるかが焦点に?

     次は、オリックスについて。チーム打率3割を超える爆発的な打撃力を誇るものの、9点取っても10点取られて負ける防御率の悪さは致命的です。抑えの速球王:山口も安定感に欠けているし、阪神から獲得したムーアもなかなか調子が上がらないし、マック鈴木はどうにもこうにも…ああ見えて意外と気が短い武闘派の井原監督が、どーしようもないフロントに痺れを切らしてブチ切れるのではないかとの心配が…

     最後に近鉄について。オフシーズンは球団命名権の売却失敗騒動を起こしたり、大阪ドームから撤退との噂も流れるなど…チーム全体の華のなさは更に加速してしまいました。年間50本前後を計算できていたローズが抜けた打線の迫力不足の感は否めない。若き大エース岩隈が投手陣を引っ張り、阪神から移籍してきた川尻は活躍しているものの…抑え投手不在で接戦を落とすケースが多く、3位以内に入るのは難しい情勢です。

     さて、シーズンが終わった頃どんな結末を迎えていることやら…


    文責:GM研編集部編集長 gonta