〜グラムナートの錬金術士2〜
「ヴィオラートのアトリエ」とは? 「ヴィオラートのアトリエ」とは、錬金術士を主人公にしたRPG「アトリエシリーズ」の第5作にあたる作品です。今回の物語の舞台は、前作と同じグラムナートですが、主人公像は大きく変わりました。今までの主人公は、何らかの形で錬金術に学問として携わっていましたが、今回の主人公の「ヴィオ」は、ごくフツーの田舎娘です。ある日の両親が紙が届くのに半年も掛かるような新天地に越してしまうと、ヴィオは「カロッテ村を離れたくない」(大好物のニンジンの採れない場所になんか行きたくない!)という一心で、両親から与えられた猶予期間の3年間で錬金術のお店「ヴィオラーデン」を成功させて一人立ちするんだ!と意気込む。お店を繁盛させて、ついでに、過疎化に悩むカロッテ村の村おこしの立役者になって、この村を見違えるような立派な街に発展させれば、きっと両親は帰ってきてくれるから…それが、「ヴィオラートのアトリエ」のあらすじです。 時間の制約が生む緊張感と、行動の制約が生む愛着 今作の特色としては、シリーズ初期の基本に立ち戻ってゲーム期間を「3年間」に限定したことにより、これがいい緊張感を生んでいます。毎日残り日数がカウントダウンされていくのに軽い焦りを覚えながら、目先のイベントをこなして、お店の発展と村おこしにひたすら精を出していると、やってる事は単純作業の繰り返しでも、スキルの向上によってどんどん行動範囲と世界が広がっていくので、飽きるということがありません。それに、このゲームはとにかくテンポが良すぎて「止め時」が見つかりません。まず、起動の早さからして素晴らしい。うざったい企業ロゴも技術ロゴも全部スタートボタンでスキップできてしまう、今までありそうでなかった大胆さが素敵です。セーブもロードも超高速、全ての読み込みもボタンレスポンスもノンストレスです。基本的なことですが、こういう細かい配慮がトータルの充実度に直結しています。 今までは採取と調合の繰り返しで、アイテム図鑑を埋めるかイベントを追うくらいしか楽しみが無かったのですが、今回の新要素となる「錬金術のお店経営」、これが非常に難しくて面白い。序盤は商売の相手が貧乏な村人なので、現金取引よりも物々交換の方が多いし、口コミでお店の評判を上げるためには利益度外視で値切り上等。当然儲かりまへん。どんなに極上の品物でも、同じ商品ばかり売っていても客に飽きられてしまうし…仲間をお店番を頼むこともできますが、お店経験値が溜まりにくくなるし、商品棚の補充まではしてくれないので、遠出もほどほどにしてお店に帰ってこなければならない。でも、評判を上げて来客数を増やすためには、現地に乗り込んでの営業活動も必要だし、調合の材料の採取も必要だし…「お店」への愛着が行動の制約につながってしまう、この匙加減が実に難しい。でも、この手探りの試行錯誤がこのゲームの醍醐味なんですけどね。 たゆまぬ進化と、独立独歩のサービス精神 私は、このアトリエシリーズを初代「マリーのアトリエ」からずっと愛好してきたわけですが、私が好きなのは、ゲーム自体だけでなく、開発元のガストのサービス精神溢れる作品フォローの姿勢にこそあるのです。ひとつの作品を作り続けていくことで、世界観もシステムも強化してゆき、安定の中にも常に新しい試みを盛り込み、待たせすぎることなく程よい間隔を置いてシリーズを発売し続ける。これは単純な事ですが、ファンにとってはこれに勝るサービスはありません。そんな「日本的物づくり」の長所が良く現れている、稀有なゲーム会社だと思います。それだけでなく、ガストは「ザールブルグどっとこむ」という自社WEBサイトを積極的に活用して、ここでしか買えないオリジナルグッズのネット販売も行っています。外注任せの単なる利益回収機構でしかないメディアミックスとは違い、ガストはファンからの声に応えてグッズを製作し、最繁期にはプロデューサ以下、社員総出で梱包作業…ここまでやってもらって、これに応えないようではファン道が廃るというものです。 人気の理由その2は、過剰なまでのサービス精神です。「ヴィオ」の予約特典は、歴代アトリエシリーズの名曲を全25曲62分11秒も収録したサントラCDであり、単体でお店に3000円で売られていてもファンなら買うだろうと思える代物です。しかも、予約したらその場で渡してしまう(つまり、購入しなくても貰える)という太っ腹ぶり。「ヴィオ」の限定版の内容について週刊ファミ通で企画公募した時も、いくつか候補を挙げて意見をまとめようとしていましたが、結局「せっかくだから全部入れちゃいました」という結果になりました。どう考えても+3000円に収まる内容じゃないんだけどなぁ…漢ですね! 商売上はどう考えても利口なやり方とは言えません。しかし、私はそんなガストが大好きです!このように、ファンは投資家として買い支えるだけでなく、厳しく審査と要求をし、製作側は良質な作品とサービスの向上をもってそれに応える。そんな関係を構築できるゲーム会社がひとつでも多くなってくれることを切に願います。 First written : 2003/07/23
Last update : 2003/10/24 |