ときメモとは? 「ときメモ」とは、「ときめきメモリアル」の略称であり、誰もが認める家庭用ギャルゲーの金字塔と呼ぶべき存在です。ギャルゲーというゲームジャンルに市民権をもたらし、ゲームキャラクタービジネスの基礎を築いた功績は、功罪ともにあれど、正当に評価されて然るべきものだと思います。 「ときメモ1」は約60万本、「ときメモ2」も約38万本という、ギャルゲー業界では桁違いの実績を誇る、押しも押されぬトップブランド、それが「ときメモ」だったのです!(過去形) そのシリーズ最新作「ときメモ3」には、3Dポリゴンを2Dアニメーションにリアルタイム変換する「トゥーンレンダリング」、音声合成技術「EVS」を更に進化させた「Emotional Voice System 2」など、数々の最先端技術が投入されました。史上初のゲームの小口証券化「ときめきメモリアルファンド」では約7億7千万円もの投資を集め、主題歌にはZARDを起用するなど、発売前の話題づくりは十分に見えました。しかし、いざ蓋を開けてみれば、実売本数は前作比で過半数割れの15万本にも満たないという大惨敗を喫してしまったのです。その原因は一体なんだったのでしょうか? 最先端技術は進化という名の夢を見るか? まずはシステム面から見ていきましょう。世間では激しく叩かれている「トゥーンレンダリング」によるキャラクターですが、実際にゲームをやってみると意外と気にならなくなりました。でも、効果的な「動き」の演出が出来ているとはとても言い難いし、モーションキャプチャーではなくて手作業でモーションを作成しているため、シーンによっては不自然な動きがあったり、動きそのものの作り込み自体に大きな差が出てしまっています。しかし、エンディングでは最強の武器になりました。告白の場面での、高鳴る鼓動を抑える深呼吸、もじもじ、どきどき、うるうる…今までは想像力で補完してきた部分を、こうして視覚で表現された時の破壊力は凄まじいものがありました。要は使い方次第ですね。 「EVS2」は完璧に期待外れでした。「2」では会話から独立した呼びかけ程度にしか使われていなかったので粗が目立たなかったが、「3」では会話の一部としてEVSが組み込まれている。しかし、会話の文意に合わせてイントネーションを使い分けられないようでは、会話としてはまったく成立しない。自分の名前を肉声で呼んでもらえる喜びよりも、不自然な形で自分の名前を使われる不快感の方が勝ってしまいます。…まだまだ夢のゲームには程遠いですね。 趣味コマンドやデート時の服装選択やパラメータがレベル制になっていたりして、ゲームシステムも結構変わったけど、手触りは良くも悪くもいつもの「ときメモ」です。しかし、1人あたりの攻略必要時間は約10時間にも及び、全キャラクリアには8人×10時間=約80時間もの時間が必要です。多分、レビューの義務感が無ければ、私も攻略を途中で投げ出していたことでしょう。超大作にもほどがあります! 平凡という個性 では、キャラクターの面では「ときメモ3」はどうだったのか?個別の詳細については別記のキャラクター選評を参照してもらうとして、全体の印象としては、「普通」ですね。何処かのゲームで見たような…いや、そのまんまの設定がやたらと目に付き、最初の頃は他のゲームのキャラの名前で呼んでいました(花火君とか、志保とか、あかりとか、舞とか…(誰とは言いませんけどね))。世間で酷評されているよりは萌えられると思いますが、他のギャルゲーと同じ種類の萌えを期待しない方がいいかも知れません。 「1」では才能に特化した人格を、「2」では個性に特化した人格の面白さを見せてくれた。では、「3」はどうなのか?…敢えて言うなら「平凡」という人格でしょうか?プロデューサー:メタルユーキ氏は、「プレイヤーの琴線に触れる現実味のあるキャラ作りを目指した」と言っていましたが、既存ヒットゲームの萌え要素を所構わず寄せ集めた結果、独自色の欠片も感じられない没個性化を招いてしまいました。恋愛シミュレーションゲームが究極的に「現実感」を理想とするのは正しいあり方かもしれませんが、それは諸刃の剣です。今その理想を語ることの出来る唯一のポジションにコナミはいた。それだけに、世相に迎合しすぎて理想を貫いて勝負をしてくれなかったのが残念でなりません。 ゲームは誰のためにあるべきか? 発売前には50万本を目標に掲げていたにも関わらず、実売は15万本にも届きませんでした。出荷本数の50%近くが不良在庫と化して店頭価格は異例のスピードで大暴落し、限定版にはプレミアムすらつかない。「ときメモ Girl's Side」の意外な健闘によって、ときメモファンドは額面上では元本割れにを免れたが、空前の好景気に沸いていた2001年冬の年末商戦とは対照的に、あまりにもお寒い結果でした。 なぜ「3」は失敗したのか?(コナミは失敗だと認めないかもしれないが)。最先端技術への疑問?ギャルゲー不況?いや、そうじゃない。それは、ここ数年間強引な支配戦略を推進してきたコナミという会社への不信感である。作品性と商品性のバランス…それはどんなゲームでも抱えている永遠の命題である。ユーザーが求めているものと、製作者が目指そうとするものとの相違…ゲームは誰のためにあるのか?そのバランスを見失った時、いかなるトップブランドであろうも、いとも簡単に没落していくのである(某Leafのようにね)。どんなにゲームの技術が進歩したとしても、「楽しい時間を過ごしたい」という娯楽の本質は変わらないはずです。私達は逞しく想像力を働かせて、ゲームに夢を見ているのです。語り手たるメーカーへの信頼があってこそ、夢は私達の中で現実となるのですから… Last update : 2002/02/01
Last update : 2003/10/21
「ときメモ3」 ”約束のあの”のキャラクター選評
※このキャラクター選評には重度のネタバレが含まれています。ゲームの楽しみを致命的に損なう恐れがありますので、ゲーム本編をすべてクリアした方、もしくは、多少のネタバレも読み流せるという方のみお読みください。なお、この注意書きを無視してネタバレ部分を読んでしまった場合の不利益に対して、GM研は一切責任は取りかねますので、あらかじめご了承くださいませ。  牧原 優紀子 CV.神田朱未さすがに正ヒロインだけあって、細かい仕草のモーションまでよく作りこまれていました(毎回くるりと振り向く動作はどうかと思うが…)。「駄菓子屋のおばあちゃん」完結編→伝説の坂での告白、に到る流れも優紀子ちゃんらしくて、涙を誘うものがありました。でも、その反面、意外な発見や攻略の達成感があまりなかったのも事実です。ときメモの歴代正ヒロインの証しである「赤毛」を継ぐ者としては、ちょっと役者不足と言われても仕方がないかもしれない。「1」のスーパーアイドル:藤崎詩織、「2」の理想の幼なじみ:陽ノ下光…この2人に匹敵する存在感があったとは思えない。親友の相沢さんとの絡みも少なくて、女の子同士の横のつながりが見えにくく、中心人物として機能させることができなかった。たしかに、「等身大の普通の女の子」がテーマの優紀子ちゃんに前作までのメインヒロインと同じような役割を演じるのは無理かもしれないが、ならばこそ、もっと別のやりかたがあったと思う。少なくとも、チェーン(連続)の1本道シナリオで、「内気な女の子の一大決心」というテーマを活かしきれるわけないのに…優紀子ちゃん自体はとてもいい子なだけに、なおさらとても残念です。 相沢 ちさと CV.川口宰曜子キャラ設定が明らかに「To Heart」の志保なのが困ったものだが(親友との関係まで同じだし)…「留学」という独自のテーマで進行するシナリオは印象が薄かったです。「2」の「光と琴子」のような「親友ゆえのジレンマ」もなかったし…ときメモの裏ヒロインの象徴である「緑髪(館林見晴:麻生華澄)」を継ぐ者としては、役者不足と言わざるを得ない。あと、非常に気になったのが関西弁の使い方で。どうも、関西弁と大阪弁との微妙な違いを混同している節がある。これは声優さんが悪いのではなく、シナリオを書いた人と演技指導をした人のセンスの問題です(むしろ、声優さんの演技の出来としては、川口宰曜子さんが一番良かった)イントネーションと文言だけで関西弁を表現できると思ったら大間違いです。喋っている最中にジェスチャーを入れて、「動き」で関西弁を表現するのは、さすがに無理だったのかなぁ?(金と手間をかけるポイントがずれているのが、「ときメモ」らしいと言えばらしいと言えるのだが…)こういうチャキチャキ娘が好きな私としては、もう少し頑張って欲しかったなぁ… 橘 恵美 CV.安田未央初回プレーで偶然(一応登場法則はある)「伝説の坂」で出逢ったのがきっかけでした。前情報では特に好みの子もいなかったので、メインヒロイン格の優紀子ちゃんから攻略していこうと思っていたのですが、橘さんとの出逢いにより路線大転換!これが「最初のキャラが最高だった」という思いも寄らない結果を引き起こしました。3D風2Dアニメで女性のプロポーションを自然に表現するのはとても難しいのですが、橘さんの場合はそれさえも見事に再現していました。それに、エンディングでの橘さんの仕草の破壊力は凄すぎです!いや、それにしても、聞いてるだけで恥ずかしくなってくる初々しすぎる告白でしたな…まさか「あんな」お願いをされるとは…(※)それは見てのお楽しみということで(←ネタバレコーナーなのに?)。強くて優しくて物静かで微笑を絶やさない、袴姿が良く似合う大和撫子。この属性がお好みの方なら、橘さんのためだけに「3」をやっても損はしないかも。 御田 万理 CV.橋本涼子未来のトップすたぁお嬢様。「おだまり→お黙り!」というダジャレ全開のネーミングセンスに、旧ときメモシリーズの面影を感じつつも、平凡なキャラ作りをめざす路線の「3」のキャラクターの中では、ちょっと浮いた存在になってしまいました。「父は映画監督・母は有名女優」という親の七光りへのコンプレックスから普通の高校に進み、自らの実力を試したい…この「いかにも」な設定から展開が予想できてしまうので、ついつい攻略優先順位は下がってしましたが、凡人大集合な「3」のキャラ群の中にあっては、御田さんのような明確な野望の持ち主は、かえって気持ちが良いくらいでした。普段の高飛車な言動とのギャップはお約束ではあるけど、その効果は絶大ですね。だからこそ、足を挫いた御田さんを「お姫様だっこ」するイベント時の照れ具合がとても可愛らしく感じられたわけだし。でも、ときメモの歴代「お嬢さまキャラ」はあまりにも桁外れの金持ちだったから、御田さんには「住む世界が違う」という感覚をあまり持てなかった。伊集院家との絡みとか遊び心があっても良かったような気がするのだが… 河合 理佳 CV.服部加奈子暴走メカおたく少女。ギャルゲーのお約束「眼鏡っ娘」&ときメモのお約束「科学フェチ」という、あまりにもお約束な設定に二の足を踏んでしまい、最後から2番目の攻略になってしまいました。「1」の紐緒閣下や「2」のメイ様のように分かりやすい野望少女は大好きですが、河合さんの場合は奇妙な行動の割に野望的なものが全然見えてこなくてやる気が出なかったのですが…実際にシナリオを進めてみると意外な展開に驚かされてしまいました。連続イベント「犬ロボット:ふりくたー」で見せた、河合さんの意外な一面。なぜ彼女が執拗なまでに科学を欲するようになったのかが明らかになり、そして科学の理論だけでは得られない大切なものに気付いていく。なるほど…こういう魅せ方もアリだと思う。ただ惜しむらくは、その事件を告白に繋げる流れが十分に描かれていないことです。恋の動機付けとしてはちょっと弱いから、せめてもうワンクッション置いてシナリオを構成して欲しかったのだが… 神条 芹華 CV.皆川純子謎のミステリアス少女。他人との交流を徹底的に避け、奇行が目立ち、男気すら感じさせる竹を割ったような性格。ともかく、他のキャラと一線を画する存在です。期せずして攻略は最後まで後回しになってしまったが、ある意味では、最後の攻略にもっとも相応しいキャラなのかもしれない。「目に瞳孔がない」という独特のデザインでミステリアスさを出そうとしている試みは評価したいが、このシナリオはどうにもこうにも…連続イベント「神条さんの怪我の謎」のラストイベントには悪い意味で驚愕してしまいました。展開に驚かされたのではなく、もっと違う意味で驚きました。いや、正確に言うと呆れました。「おいおい!この設定は、まるっきり「カ○ン」の川○舞じゃないか!」とツッコミを入れてしまいました。いきなり物の怪バトル勃発で、愛情パワーで正義・友情・勝利ですか? これまで、何のために「普通と平凡」をテーマにして作品の雰囲気を作りをしてきたのか、ここですべて台無しになってしまいました。「お約束」という飛び道具は、時と場合を選ばなければならないのです。 和泉 穂多琉 CV.片岡千珠隠れキャラその1。趣味コマンドでWEBサイト「月の雫」を見つけてメールのやり取りをしていると登場します。哀しい過去を引きずるお嬢様であり、主人公をメル友だと気づかないまま攻略を進めていくシナリオは、難易度は高いけど新鮮で面白かった。でも、和泉さんを隠しキャラにする必要があったのかどうかには疑問が残ります。従来の隠しキャラは、通常攻略が必要ない「救済キャラ」でしたが、今回の隠しキャラ2人は、レギュラークラスのキャラと同量の通常攻略が必要です。「和泉さん=月夜見さん」という構図は、見え見えで隠すほどの裏設定でもないし、伏線としても十分に活かしきれていたとも思えません。もったいないなぁ…それが和泉穂多琉グットエンドを終えた私の、素直な感想でした。事故で失った恋人を忘れられない、というlこれまでの「ときメモ」にはなかったハードなシナリオの出来は良かったけど、「1」の館林見晴、「2」の九段下舞佳&野崎すみれ、というように、隠れキャラの演出とキャラ作りには定評のあっただけに、残念この上ない。隠れキャラには隠れキャラなりの演出方法があったのではなかろうか? そこが惜しまれてならない。 渡井 かずみ CV.町井美紀隠しキャラその2。他の女の子とのデート中に「背景」でバイトをしている渡井さんを数回見つけると、出前イベントが発生して登場します(むしろ回避する方が難しいかも?)。デート中の背景に登場するのは、「1」の館林見晴、バイト命な性格は「2」の九段下舞佳、というように、歴代の隠しキャラの特性を両方受け継いでいるキャラだと言えます。「病気で入院中の父(片親)をバイトで養う健気な少女」という設定はありがちだが、あからさまに不幸を売り物にしないで、ポジティブ元気娘を貫いてくれたので嫌味には感じませんでした。そのかわり、目新しさとか強烈な印象もありませんでした。良くも悪くも一般受けするロリキャラとしては及第点だと思いますが、それは”飛びぬけた個性がない”ということでもあります。それが「3」らしさと言ってしまえばそれまでだが、「ときメモ」という金看板を背負うにはやはり荷が重かったのだろうか… 白鳥 正輝 CV.今村卓博「ときメモ」の男キャラというものは、キザでモテモテで憎たらしいのに、どこか憎めないところがあったのですが、「3」の男キャラは揃いも揃って”ただ憎たらしいだけ”です。絶対に友達にはなりたくない白鳥正輝は、あんな外見をしてるのになぜかスポーツマンだし、実際には全然モテないので、「2」の坂城匠の時のように争奪戦になることさえなかったし、心なしかデザインもモーションも手抜きっぽいし…最後には何かあるはずだ!と思っていたけど、結局出番も少なくて見せ場もなくて、最後まで何もなかったし…いや、あったらあったで鬱陶しいだけだが…脇役がしっかりしていてこそ、主役が引き立つわけで、憎まれ役なら憎まれ役としてもっと徹底するべきだと思います。 矢部 卓男 CV.田中大文男キャラその2。シリーズ初のデブヲタキャラですが、どいうわけかモテモテです。なぜか、白鳥よりもモテモテです。このゲームの世界はどうかっているのでしょう?まぁ、だからといって、攻略の進行上では路傍の石ほどの存在感もありませんけどね。今回は女の子の電話番号は自力で聞きだすシステムになっているしねぇ…せめて、趣味コマンドのディープな部分でやべっち(嫌な相性だな)を上手く利用できるような仕組みがあれば…え?恋愛ゲームにそんなの要らないですか?そうですか。ああっ、もう!文字数も埋められないほどネタががキャラって一体…
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