「スタパミン」とは? 年季の入ったゲーマーの方々には、かつてファミコン通信の編集者として、アーケードゲームや旧ゲーム帝国の担当者として活躍していた方としても知られている「スタパ齋藤」氏。その後フリーライターに転身してからも、アスキーのパソコン雑誌を中心に仕事を続けているので、最近の人には「ロシア人みたいにデカくて髭で衝動買いの人」としてのイメージの方が強いかも知れませんね。もっとも、印象的なその風貌だけではなく、本業の文章の方も個性的すぎるほど強烈なスタイルなので、スタパ氏のファンであろうとなかろうと関係無く、その独特の芸風の文章は一度読んだら忘れようがありません! 本書は、スタパ氏独特の文章と終始変わらぬハイテンションで綴られている、パソコン関連のエッセイです。公式の書籍紹介のフレーズに「高いパフォーマンスと低い信憑性を備えた、新世代の笑いがここにある」と大真面目に書いてある通り、本書の目的は学習教材でも製品レビューでもありません。むしろ、パソコンにまつわる、そういう小難しくてマニアックな部分を笑い飛ばすためにあるものなのです! ハイテンション衝動買い技術者エッセイ 前代未聞の高血圧文体で綴られる本書では、他の技術系エッセイでの常識は何一つ役に立ちません。句読点が異常に少なくて、ネタ振りからオチと自己完結まで一気に畳み掛ける独特の文章といい、雑誌掲載時の誤植を直さずにそのまま単行本に収録して、誤植じゃないと主張してみる注釈を加えて、それさえも笑いにしてしまう芸風といい、図解やデータなどの小ネタの端々で炸裂するバカバカしいセンス(褒め言葉)といい、そのすべての要素が力技であり特濃の極みです。「最強に強まった」「大疲労」「大購入」「〜ですな」とか、火曜サスペンス劇場風の湯煙・美人女将・殺人・家政婦などコピーセンスといい、読んでいるとついついスタパ口調が移ってしまいそうです。実際、GM研所長こと私は、スタパ氏の文章に強く影響を受けていることを公言していましね。 基本的にパソコンを知っている方がよりディープな笑いを楽しめる仕様になっていますが、もちろん普通の方でもお笑い本として楽しめると思います。かといって、技術書として全く役に立たないというわけでもありません。ロジックでガチガチになった頭を柔らかくしてリラックス。そして、メインはギャグでも先駆者の言葉だからこそ、技術解説としての信頼性も生まれているのだと思います。 ギャグでも先駆者の言葉だからこそ生まれる信頼性 本書は一応、パソコンについてのエッセイ…という形態を取っていますが、キャッチココピーの段階で「パソコン使っていると破滅しちゃうんだヨ!」「パソコンなんざ、ダメだ!ダメだ!ダメだーっ!」「パソコンなんてやめちまえ!」とか、「勉強なんて全然したくない!」「パソコンは気合だ!」…と、技術書の存在意義を全面否定してしまいます。もっとも、それは作者自身の過剰すぎるテクノロジー好きがもたらした衝動買い欲求を抑えることなく、破滅しかねないほどデバイスを買いまくってしまう経験則から出た言葉なので、読者にとってはその断定さえ笑いのひとつとして受け取ることができるのです。 計画購入派の私のような人間には、迷わず衝動買いが出来る人への憧れみたいなものが多少なりとあると思います。スタパ氏みたいに電気店で衝動欲を刺激する製品に出会うと気を失って、気が付くと自宅にその製品が!…という気持ちよすぎる買い物のスタイルは まさに、「衝動買い技術者」を名乗るに相応しいと敬意を払いたくなります。スタパ氏の場合は、それが仕事として成立しているわけなので、芸が身を助けているわけですが、一般人が同じことをすれば芸で身を滅ぼしかねません。そんなスタイルを願望として本で読むことで衝動欲求を満たし、なおかつ笑えるということは、すごく貴重な体験になると思いますよ。 First written : 2004/11/21
Last update : 2004/12/25
スタパミンシリーズ
・スタパミン ・スタパミンGOLD ・スタパミンBLACK ・スタパラノイア ・スタパミンXP日本語版 |