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Review circle gmken. He whispers some words in your heart, and makes your gentle OTAKU days.
GM研
RE TAKE
同人誌サークル:スタジオKIMIGABUCHI
 ジャンル:新世紀エヴァンゲリオン 
作者:きみまる

「RE TAKE」とは?

 劇場版エヴァの最終シーンであるサードインパクト後の赤い海のほとりで、アスカの首に手をかけたシンジにアスカが何かをつぶやいた瞬間…シンジは病院のベットの上で目を覚ました。それはシンジがディラックの海に取り込まれて救出された直後であり、何もかもが今までどおりだった。すべては夢だったのだろうか…だが、リプレイのように再び繰り返される使徒との闘いの中で、シンジは逃げずに闘うことを決意する。今度こそ、大切な物を失わないために。今度こそ、後悔しない一歩を踏み出すために…

 あれは夢だと思いつつ、シンジは悲劇を繰り返さないように自らの意志で闘い、そして自分の気持ちに気づき、アスカと向き合い想いを遂げ結ばれる…だが、そこに現れたのは、夢だと思っていたあの赤い海のアスカの幻だった。自分だけ勝手にやり直して、何も知らない「私」を抱いて救った気になって逃げているのだ、あれは夢ではなかったのだと冷酷な真実を突きつける。アスカを選び、シンジに拒絶された綾波は自殺未遂を図り、シンジは自責の念に駆られ精神を病み始めていく…再び繰り返される過ちと、本当の始まりを迎えるための物語。それが「RE-TAKE」なのです。

世界が私達に未来を約束をしてくれないなら、
私達が未来の約束をしよう

 アスカの幻と罪の意識に苦しみ壊れていくシンジに手を差し伸べたのは、今を生きるアスカだった。世界が誰も私達に未来を約束をしてくれないなら、私達が未来の約束をしよう、と。結婚を誓ったシンジとアスカ。アスカに宿った小さな命を守るために、今を守るために闘うと…だが、それは決して叶わない幸せという願いだった。シンジを使徒から守るために、アスカは自爆コードを自ら起動させて消えてしまった。「ごめん…ね」という言葉を残して…

 全ての世界で私達は必ず出会い、例外なく恋に落ちたり傷つけあったり深い関わりを持つことになる。それは何度も繰り返されてきた、決して消えない罪。出口の無い絶望…本当の私達は、ずっとあの場所にいるのに…それでも、真実を知っても、シンジは戦い続ける道を選ぶ。もう声が届かなくても。しっかり生きてからじゃないと死ねないから。たとえ勝ち目がなくても。たとえ、そこに僕の未来がなくても…

行こうアスカ。僕達の未来へ

 ちなみに、この作品にはシリーズ完結後に全年齢版も発行されていますが、私は敢えて成年指定向けのオリジナルの方でレビューを書かせていただきました。18禁指定作品を滅多に取り扱わないGM研では異例とも言えるこの選択は、狂おしいほどに相手を求める行為がこの物語では必然であり、テーマを語る上で不可欠な要素であると判断したからです。※だからこそ、エロなしでも構成できた全年齢版も素晴らしいと言えます。もし可能であれば両方お読みいただければ幸いです。

 レビューを書くにあたって、アスカ視点の総集編である「0」から、後日談の「After」まで一気に読み返しましたが、涙が止まりませんでした。でも、最後までこの胸を締め付ける痛みと苦しみから目を背けることはできませんでした。自ら為すべき事に気付いたから。闘う事自体に意味がある事を知ったから。命を賭ける価値があるものを見付けたから…絶望と苦闘の果てに、二人がやっとたどり着いた場所…最高のフィナーレは、言葉で言い表せるものではありませんでした。全年齢版の総集編3のカバー裏に日本語訳が収録されている、アスカがドイツ語で自らの意志で語った誓いと、陽にかざした左手…ただ言葉もなくその笑顔を見守りたくなる、もうひとつの結末。この傑作を見逃すことなかれ!