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GM研
THE END OF PEPPY ANGEL
新約文書S
同人誌サークル : PEPPY ANGEL
ジャンル:新世紀エヴァンゲリオン 
作者 : (作画)桜月りん&(原作)GRAN

「THE END OF PEPPY ANGEL」とは?

 2000年夏、私は初めて一般参加したコミケ会場で、1冊のエヴァ本と出会いました。”偶然”の二文字で片付けるにしてはあまりにも幸運で、”運命”のような不確かなものでもなく…敢えて言葉を選ぶなら、ファン同士のつながりが起こすべくして起こした、小さな”奇跡”でした。本家エヴァは、劇場版で何もかも突き放して、キャラもファンも誰彼構わず傷つけて終わりましたが、だからこそ、あの日を境にして、ファンたちは求め始めたのです。自分達が本当に納得のできる「もうひとつの結末」の姿を…潮が引くようにブームが過ぎ去っても、気骨ある同人作家さん達の手によって、いくつもの可能性が紡がれ、そして、いくつもの世界と物語と結末が生まれました。

 その中でも一際眩い輝きを放ち続けた作品が、長い長い8年半もの物語に幕を下ろす日が訪れました。その名は「PEPPY ANGEL」。シリーズ名を持つことなくサークル名と同じ名称で呼ばれ、作者も読者も”煩悩”という名の愛で駆け抜けた作品です。

父にありがとう、母にさようなら…
そして、僕達が帰る場所、本当に望むもの…

 この物語では、エヴァ特有の謎の部分には触れず、登場人物たちの心の成長に主眼を置いています。その中心となるのは、シンジ、アスカ、レイの3人。孤独な魂は寄る辺を求めながら、傷つくことを恐れて他者を拒絶する。たとえ幾度愛の言葉を語ろうと、何度体を重ねようと、決して心の奥底には届かない。偽りの言葉と刹那の欲望で、真の孤独が癒されることは決してない。その優しさを、この温もりを、ただ信じられたら、どれほど楽になれるだろう…でも、心を相手に委ねれば、醜悪な自分の内面を曝け出してしまう…ゆえに、シンジとアスカは互いを激しく求め、そして激しく拒絶し続けてしまうのです。

 やがて、二人は人類補完計画の果てに、互いの心の壁(ATフィールド)を飛び越えることを決意する。それは心が砕け散るほどの痛みを伴うものである。しかし、それでもなお、二人は選択しようとしている。弱かった過去の自分にさよならを告げるために。大切な人と共に、明日を歩き始めるために…原作が描けなかった、真の心の成長の領域に踏み込んだ、もうひとつの結末。「新約死海文書」とも言うべき作品、それが「PEPPY ANGEL」なのです。

煩悩という名の愛で駆け抜けた8年半の歴史

  私はかつて、この物語はエヴァの「if」であって「if」ではない…そう書きました。そして、「もうひとつの結末」とも書きましたが、それは本編とまったく違う結末になる、という意味ではありません。この完結編での着地点は、原作とほぼ同一のものとなっていますが、そこに至るまでの「前提」が異なることで、その結末の先に続いていく「未来」はまったく次元の異なるものへと昇華されていたのです。シンジとアスカの二人は、とことん苦しみ抜いた果てに、誰もが望んでいた選択をしてくれました。父にありがとう、母にさようなら…そして、僕達が帰る場所、本当に望むもの…これ以上は、レビュアーとして私の口からは語ることは出来ません。この長大なる物語が紡いだ魂の言葉(ロゴス)を、ぜひあなた自身の目で心で確かめて下さい!

 レビューを書いている今も、674ページもの異例の特厚本の総集編を読み直して泣きそうになり…作者にとっても、読者にとっても、長年苦楽を共にしたキャラクターたちは子供同然です。終わってしまう淋しさではなく、長き旅路の果てに、「よかったね」と嬉し涙でお別れが言えたから…多くのファンの心に最高の完結を与えることができたのだと思います。

物語は続いていく。
私達が覚えている限り、どこまでも、いつまでも…