魔法先生ネギま!
マンガ作者:赤松健
 学園・魔法  魔法少年学園ラブコメ  1〜17巻 
連載:週刊少年マガジン

「魔法先生ネギま!」とは?

 イギリス:メルディアナ魔法学校の全課程を若干10歳で首席卒業した少年:ネギ・スプリングフィールドは、自身の父であり、千の魔法を使いこなす最強の魔法使いと謳われた「サウザンドマスター」に憧れて、「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」になることを目指していた。人のために陰ながらその力を使って役に立つ…その修行のためネギに課せられたのは、日本で中学校の先生になることでした。祖父の友人が学園長を務める麻帆良学園女子中等部にやって来たネギは、そこで英語教師をすることになったのだが…ネギの教え子になるのは、31人もの個性的で多感な中学二年生の女子生徒たち!果たしてネギは無事に修行を終えて、立派な魔法使いになれるのか?「AIが止まらない」「ラブひな」の大ヒットで”オタク系お約束ラブコメ”の第一人者と呼ばれるようになった赤松健が送る、魔法少年学園ラブコメ、それが「魔法先生ネギま!」(以下、ネギま!)なのです。

数は力なり!?極まりしお約束という名の王道

 本作の最大の特徴は、1クラス31人ものキャラクターひとりひとりに詳細な設定を持ち、31人すべてに声優さんが設定されていて、アニメ化前にキャラクターごとのCDが毎月リリースされるという…完全無欠のメディアミックス対応仕様となっている、圧倒的な物量の凄みにあります。作画の面でも、効果的に使われるモブ(群集)シーンの物量と、背景画の描き込みは、とてもではありませんが週刊連載のクオリティであるとは信じられないほどです。赤松マンガのお約束路線を何度もネタにしてきた好敵手(?)久米田先生でさえ、ここまでやられてしまうと白旗宣言…(誤解なきよう注意書きしておきますが、これはお互いにネタにされることを楽ししんでいたやり取りだったので、ファンの人は本気で怒ったりしないように願います。このお笑いマンガ抗争の歴史は、こちらを参照してください。

 少し話が逸れましたが、ともかく、この作品が描いて見せた数の力は圧倒的なものでした。萌えマンガ花盛りの昨今にあって、萌え要素の過剰なミックスはキャラクターの無個性化を招く悪循環に陥ってしまいがちなのですが、「ネギま!」は敢えて萌え要素を1人1人に分散し、個性=キャラという不可分の存在として成立させるという、基本に忠実な王道路線を選んだのです。お約束を極めた者だからこそ、売れっ子になったからこそ実現できた、物量と個性化のバランスの妙。それが「ネギま!」の大きな魅力だと思います。

31人の萌えキャラより存在感のある、たった1人の少年

 とはいえ、本作は従来の赤松マンガとは明らかに違う側面があります。ネギは可愛いし頭もいいし才能もある。これは今までの赤松マンガにはいなかったタイプの主人公です。こういう優等生タイプよりも、母性本能をくすぐるダメダメな主人公の方が、読者としても共感しやすいし、ギャグとしても使いやすいし、成長の度合いが目に見えて分かるので、物語を描き易いのは事実です。しかし、従来の手法のままでは本作は駄作と呼ばれていたと思います。

 31人もの個性的な生徒たちの魅力を描くためには、中心となる主人公の存在が魅力的である必要があります。思春期真っ只中の少女たちx31に比類する、思春期前の純粋さと熱血さを持つ少年マンガのような存在。そのギャップがあるからこそ、お約束のお色気や好きという気持ちに嫌味がないし、振り回されつつも芯の強さを感じさせることができるから、「ネギ君カワイイ」がやがて「ネギ君カッコイイ」になっていくのです。

 31人の萌えキャラより存在感のある、たった1人の少年像を創り出す… それは、萌え系ラブコメマンガでは革命的なことではないでしょうか? 赤松ラブコメは読み手を選ぶという先入観が強すぎるようですが、本作は従来のそのイメージを変えるだけのパワーを秘めた作品だと言えるのではないでしょうか?

First written : 2004/11/14
Last update : 2004/12/25