「ななか6/17」とは? 「ななか6/17」、これは「ななか じゅうななぶんのろく」と読みます。主人公の霧里七華は、成績優秀だが勉強以外に興味がなくクラスメイトとの協調性もない、17歳の女子高生だった。そんな七華の幼なじみの凪原稔二は「怒髪の稔二」の異名を持つ不良で、事あるごとに説教する七華を疎ましく感じていた。ある日、些細な言い争いから稔二は七華に絶交を告げてしまい、そのショックでよろめいた七華は階段から転落して意識を失ってしまう。なんとか意識を取り戻した七華だが、何やら様子がおかしい。記憶喪失かと思って名前を聞いてみると…「きりさとななか、6さい」幼児退行によって精神だけが6歳の頃の七華に戻ってしまったのだ。早くオトナになろうと焦りすぎて、大切なものを置き去りにしてしまった17歳の七華とは正反対で、無邪気な6歳の七華の明るさが、稔二を雨宮を、そして周囲の人々にも「まじかるドミ子」の魔法のように、夢と勇気を与えて変えてく。ココロやすまるピュアハートストーリー、それが「ななか6/17」なのです。 行き当たりばったりが功を奏したギャクコメディ? 八神健作品としては最長の単行本12巻、TVアニメ化もされて、名実共に八神健の代表作になった「ななか」ですが、第1部では続々と登場するキャラクターたちの存在感が強烈すぎて、ギャグパートとストーリパートとのバランスがなかなか定まらなくて、個人的にはこういう脱線文法は好きだけど、作品論としてはいかがなものか?と思わないでもなかったし、第1部完結の第8巻で、雨宮さんが留学してしまい、七華までアメリカに行ってしまって、どうなることやらと心配していたのですが…3ヶ月の充電期間の後に再開された第2部では、完結に向かう愛憎のもつれたハードな流れと、読みきりギャグテイストとが交互に訪れるため、ギャップがさらに激しくなってしまいました。これは良くも悪くも、他誌のように編集者サイドがガチガチにプロットを押し付けたりしないチャンピオンらしいといえばらしい作風なんですけど…でも、今にして思えば、実はこのアンバランスさこそが、この作品の魅力の秘密だったのか知れません。 しあわせな作品の、しあわせな結末 完結へと向かっていく物語の流れは止められないのに、敢えてその流れを忘れさせるようないつもの楽しい世界(日常)がいつもそこに存在することが描かれていて… だからこそ、やがて何かひとつを選ばなくてはならない時が訪れる事実が、なお一層辛くなるのです。 おそらく、このラストシーンは作者自身も最初から想定していたわけではないでしょう。個性的なキャラクターたちが作り上げた世界に引っ張られた先の必然として生まれた結末(というより、これからも続いていくであろう作品時間の中の1シーン)と言えるでしょう。しあわせな作品の、しあわせな結末…「ななか」は、作者にとっても、登場人物にとっても、読者にとっても幸福な作品になれた、稀有な作品だと思います。 Last update : 2003/06/27
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