みすずちんパニック!
同人誌サークル:星狩座
 AIR・4コマ  WEB連載漫画  全5巻、総集編 
作者:DATE

「みずパニ」とは?

(C)2001-2003 星狩座/DATE

 「みすずちんパニック!(以下、みずパニ)」とは、同人誌サークル「星狩座」のホームページ「MULTI/MANIAX」で、大好評WEB連載されていた4コマギャグ漫画です。ゲーム「AIR」を題材にした同人誌は、コミケでも最大規模の人気ジャンルなのですが、それは同時に、激しい競争とネタの重複をも意味します。ともすれば名作であっても埋もれてしまいがちなこのジャンルですが、キラリと光るギャグセンスを持つ作品に出会いました。それが今回ご紹介するWEB連載コミック「みずパニ」なのです!

 WEB連載コミックの良いところは、読者の意見や反応をダイレクトに内容に反映できることです。実際に「みずパニ」も、連載開始から回を重ねるにしたがって、格段にネタの構成力・ギャグのセンス、ともに目覚ましい向上が手にとるように分かります。読者と作家が、ともに作品を育てていく醍醐味、それがWEBコミックというものの最大の魅力なのかもしれません。

珍獣(けもの)たちの競演狂宴 ”お笑い鳥獣戯画”

 「みずパニ」を語る上で決して外すことの出来ないのが、2匹の珍獣たちです。犬っぽい謎の異次元生命体「エリート・ポテト」と、鳥っぽい未確認生命体2号「グレート・そら」。原作ゲームでは、愛らしい(?)マスコットキャラクターたちですが、この作品の中では、2匹ともなぜか普通に人間の言葉をしゃべります(でも、2匹ともド助平でド変態ですが)。この2匹が登場するようになってからというもの、話の筋は脱線しまくりで、ギャグの応酬が1部5話構成の枠組みに収まりきらない事もしばしば。強烈な存在感を如何なく発揮して、今やすっかり「みずパニ」と「星狩座」の顔役というべき存在になってしまい、他の作品の4コマ(「はりきりプリンセス」のネロ役)にも、作品の枠を超えて出演するほどの人気キャラになってしまいました。

 でも、そんな反則みたいなギャグセンスだからこそ、私はこの作品に惹かれたんですけどね。初めて読んだときは、「なんて弾けた漫画なんだろう!」と、良くも悪くも、色んな意味で強烈な印象を受けました。しかし、ポテトとそらの「お笑い鳥獣戯画」に笑い転げているうちに、この芸風がだんだんクセになってしまいました。まずは論より証拠、興味を持った方はWEBコミックを是非読んでみましょう。

原作をどこまで崩すべきか?

 二次創作ギャグ漫画の基本は、「どこまでキャラを崩すことが出来るか」にあります。原作の世界観を活かしつつ、独自のパロディーでキャラクターにプラスアルファの味付けをすることで、ネタはいくらでも広がります。しかし、原作からあまりにもかけ離れてしまうと、読者がついて来れなくなってしまうし、おちょくりも度を過ぎると、ファンからバッシングされることもあります。非常に微妙な匙加減が要求されるジャンルですが、時には勢いだけで押し切ってしまう方が良い結果を生むこともあります。「みずパニ」は、その好例だと思います

 「みずパニ」はWEB連載という性質上、毎回見切り発車で描かれていました。推敲を重ねすぎて新鮮な感覚を鈍らせてしまうよりも、少々ネタが緩くてもライブ感覚で勢いで押し切ってしまえば、案外なんとかなってしまうものです。そして、こうして1冊の本になって改めて読み返してみると、作品というものは「点」ではなく「線」なのだと実感しました。線は真っ直ぐではつまらない。脱線も上手に使いこなせば「味」になる。「みずパニ」は、そんなパロディの基本を改めて思い出させてくれる逸品です!

※WEB連載は終了していますが、シリーズ自体は即売会限定のコピー本としてひっそりと継続されています。

※画像使用許諾:2002/01/17
First written : 2002/02/01
Last update : 2003/11/07