「みずいろ」とは? パソコン18禁ゲーム市場で「White」「銀色」を続けてヒットさせて、「ねこねこ信者」と呼ばれる独特なファン層を持つブランドに成長した「ねこねこソフト」の第3弾にして、初の家庭用移植作品、それが「みずいろ」です。PCエロゲーという淘汰の激しい市場を勝ち抜いてきた中堅ブランドが、敢えて「普通さと日常性(あくまでエロゲー基準比ですが)」を前面に打ち出したこの作品は、ねこねこソフトの名を広く一般に知らしめる出世作となりました。 今回の家庭用移植においても「過剰サービスのねこねこソフト」の異名は健在であり、新キャラ・新シナリオの追加はもちろん、おまけの不条理ギャグサウンドノベル「探偵 片瀬健三郎」や、ソフトと公式ガイドブックに連動した応募者全員サービスCDなどなど、声を付け足すだけの手抜き移植がのさばるこの業界にあって、「みずいろ」のような例は稀有な存在と言えるでしょう。 独特の文法と強烈な存在感 この作品の最大の特徴は、独特の文法と強烈な存在感を示すキャラクターにあります。「しょんぼり」とか「どきどきどき」とか「ぐっすん」とかとか…擬態語を声に出して表現してみたり、「ポンコツさん」とか「マイ妹」とか「目覚まし機能付き幼馴染」などなど、萌えゲーム市場の最前線で磨かれた独特のセンスが軽快&痛快で笑いっぱなしです。 システム面でみてみると、過去パートの選択肢によって、現在パートでのヒロインが確定するオムニバス方式なので、ルートによってキャラクターの設定すらもまるっきり変わってしまいます。しかし、ギャルゲーのシナリオは普通、シナリオごとに担当者が違うのだから、シナリオ間の整合性を取るよりも、まったく別物と割り切って設定にバリエーションを持たせる効果を狙うのは面白い手法だと思います。でも、その分、核となるべき設定が弱くなってしまい魅力が分散してしまうというデメリットもありますが… 離れえぬよう、流されぬよう、ぎゅっと… 主題歌のサビでもあり、作中にもさりげなく効果的に使われていて、作品全体のテーマにもなっているのが、「離れえぬよう、流されぬよう、ぎゅっと…」という言葉です。互いの気持ちが離れてしまわないように、平凡な日常に思い出が流されないように、繋いだその手をぎゅっと握り締める…今の穏やかな日常が変わらずいつまでも続いていくことを願いながら、それを言い訳にして、いつまでも過去に縛られて変われない自分・一歩踏み出す勇気が持てない自分がいる。淡く揺れる白の掛かった青(みずいろ)の季節… それが「みずいろ」です。 日常会話部分が長すぎて中だるみするとか、選択肢の意味が希薄でゲーム性に欠けるとか、終盤の展開が読めてしまうとか、粗探しを始めたらキリがありませんが、強い刺激や濃い味付けばかりが目立つこのジャンルにおいて、「みずいろ」には一服の清涼剤のような存在意義があるのかも知れません。ある程度はギャルゲー文法のお約束や特殊属性の知識が必要なので、決して万人受けする作品ではありませんが、ギャルゲーに疲れてしまった方や、刺激に慣れてしまった方に、是非オススメしたい逸品です。 First written : 2002/03/24
Last update : 2003/11/03 みずいろ ヒロイン選評
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