「るーこの世界」とは? 「ToHeart2」のヒロインの一人「るーこ・きれいなそら(ルーシー・マリア・ミソラ)」は宇宙人である。調査任務の途中で遭難し故郷に帰る手段を失った彼女は、辺境の惑星地球の少年:河野貴明(主人公)に拾われる。それは、あまりにも微笑ましい未知との遭遇だった。ほとんど「るー」と「うー」ばかりの会話なのに、いつの間にか相手の気持ちが分かるようになる不思議な信頼関係と、るーこを故郷の星:両親の元に帰してあげたいという想いと、それが45光年を隔てた永遠の別れを意味するものだという葛藤を描いた原作版シナリオは、ファンから高い評価を受けました。 今回ご紹介する「るーこの世界」は、もし初めからるーこが宇宙人であることを周囲が知っていたら?という「if」を描いた同人誌であり、すっかり地球の文化や風習に溶け込んで、宇宙人らしからぬ宇宙人になったるーこと、優しく見守るうーたちとの間に繰り広げられる、ちょっと傍迷惑でノロケでご馳走様な日々を描いた学園ギャグパロディです。 るーことうーの傍迷惑な日々 この「るーこの世界」では、いくつか原作の設定に一部手が加えられています。1つはるーこが宇宙人であることを全員が知っているということ。もう1つはW幼馴染のこのみとタマ姉がるーこと貴明の関係を優しく見守っていること。また、キャラ間の呼び方も若干修正されています。これらは、パロディをパロディとしてより楽しむために必要なものであり、ポーカーフェースで宇宙天然ボケをかます、るーこの「なんでもありキャラ」という美味しい特性を活かすためにも、さじ加減は難しいですが「それが自然であること」として受け止められる素地を作ることが必要なのです。 だからこそ、さりげなく織り込まれたマニアックな特撮宇宙ネタも(熱が90℃で変身するとかセイザーXジャンプとか)、るーこがポーカーフェースであることを逆手に取ったノロケオチも、女性が苦手だと言う貴明の女運を占ったるーこが「運命とは自分の力で切り開くものだ」と言いつつスネしまうオチも…この作品で描かれるすべてのパロディの要素は、作者の「あったらいいな」である同時に、ごく自然に読者にとっての「あったらいいな」になれているのだと思います。 セカイはキレイにゃ、終わらない! そんなある日、るーこは故郷に送る手紙を書いていた。全宇宙に自分のことが知れ渡る報告書とあって、アレもコレも書いてくれと周囲はてんやわんやの大騒ぎ。たが、1枚の手紙は既に観察対象に選んだうー(貴明)のことで埋め尽くされていた。はいはいそゆ事ですか、とどっちらけご馳走様ですと見守る仲間達からもらった、「手紙が届きますように」という祈り「るー」の力…しかし、報告が果たされるということは、るーこの任務終了:帰還を意味するものでもある…夜天を切り裂いて飛んで行く紙飛行機。ほんの少しだけ貴明が願ってしまった「届かなければいい」という思いは… ゲーム原作版のるーこシナリオは、「離れていても心はひとつだ」という主人公(貴明)のカッコ良さが光りましたが、それゆえに最後の一線で感情移入し切れなかった部分があったのも事実であり、個人的には等身大の恋愛像としてはもう少し女々しくてもいいのかな?と私も思っていたので、このラストエピソードはまさにぴったりでした。このラストエピソードにはしっかりとギャグでオチが付いていますが、それがこれからも続いて行く、騒がしくも幸せな日常への確信になっているように思えます。「変わらないこと」は案外難しくてとても大切なものだと、改めてじんわりと実感させてくれる逸品です。 ※このページで使用している画像は、GM研が作者様より直接使用許諾を受けているものです。 |