ギャルゲーム批評 2006年1月号
同人誌サークル:O山出版(おーやましゅっぱん)
 批評  ギャルゲー批評  年1回発行 
作者:YAS O山、陸奥ナガト、田原豊、焼けぷ、他

(C)2000-2005 O山出版

「ギャルゲーム批評」とは?

 最近はすっかり生産量が減ったものの一応ゲームレビューサークルでもあるGM研が、ほぼ唯一に近い信頼を置いているレビューサークルであり、批評に臨む自分自身のスタンスを見直して初心に帰るために、毎年必ず読むことにしている同人誌があります。それがO山出版の「ギャルゲーム批評」です。本誌の厳しくも辛辣な批評のすべては、ギャルゲーというジャンルへの深い愛に裏打ちされたものであり、単なる感想でも評論でもなく、遊び手としてこのジャンルの可能性を最後まで諦めない覚悟の現れであり、未来への提言でもあるのです。ギャルゲーム批評についての詳細は、ギャルゲーム批評2005年1月号のレビューも併せてご参照下さい。

娯楽の中のギャルゲー

 今回の特集「娯楽の中のギャルゲー」は、まさに今の私にぴったりすぎるテーマでした。人並みの三十路らしく仕事に忙殺される中、限られた時間での娯楽として、ゲームという娯楽が選択肢としていかに脆弱なものか、私は気づいてしまいました。2005年に買ったゲームは一桁になり、遊んだゲームは片手の指で足りる…辛うじて購買意欲を保っているギャルゲーでさえ、買っても時間を使って遊ぶほどの動機にはならない現実…いつの間にかゲームに何も期待しなくなっていた自分がそこにいました。20年以上ゲームを当たり前のように遊んできて、こんな気持ちになったのは初めてでした。確かに、ギャルゲーが無くても人は生きて行けます。ギャルゲーだけがゲームの全てではありません。それでも、ギャルゲーのみが与えうる楽しみがあることを我々は知っています。だからこそ考えてみよう。娯楽の中のギャルゲーとは何なのかと?

 そもそも、ゲームは知的遊戯と言えるのかどうか?娯楽としてどのような位置づけであるのか?そこから論考を進めて行くと、ヒロインという存在を攻略していく過程そのものが、遊び手たちによって紡がれる物語となるギャルゲーという新ジャンルが生まれ、熱狂的なギャルゲーブームがかつて巻き起こったことは決して偶然ではないと理解できる。その刺激はゲームの可能性の最先端だったのですから。だが、ギャルゲーはブームに驕り知的遊戯としての進化の方向を見誤ってしまった。売上に直結する「物語」に特化する手段を…過剰なまでに賛美されたテーマと個人名。異常なまでに個性化されたキャラクターと、消費され尽くしていく属性。どんなに優れていても二の次の評価しかされないゲームシステム…かくしてギャル「ゲーム」と呼べる作品の減少とともに、ジャンルが衰退の一途を辿って行ったのも、至極当然の結果であると言えます。だか、だからこそ、今こそギャル「ゲーム」であることが必要なのです。何しろ、ギャルゲーが終わる日までタイムリミットはそう多くは残されていないのですから…

ギャルゲーが終わる日〜タイムリミットは、あと3年〜

 あと3年でギャルゲーは終わる…これは何の根拠もない話ではありません。現状のギャルゲー業界が年率30%近いペースで縮小して行く中でも辛うじて産業として体裁を保てているのは、ギャルゲーが単品としては「多利薄売」な商売であるからです。制作費が安く単価が高く表層上の萌え要素だけで売れて、数千本で元が取れるのだから、作品の質より量が優先されるのは短期的なビジネスとしては当然といえます。

しかし、そのお手軽さにあぐらをかいたメーカーの粗製濫造によって、単品としては「多利薄売」なものを、業界全体としては「薄利多売」なものにしてしまったのです。娯楽としての進化を怠ってきたことは、長期的な視点では致命的と言えます。悪貨は良貨を駆逐するという言葉の通り…売れるべきもの、評価されるべきものを埋もれさせて来たこの10年間の失敗は、最早取り返しようがないところまで来てしまった。2006年末に市場投入され、3年後には本格移行するプレステ3体制によって制作費は確実に上昇する。ゲーム人口の減少によって販売数は減少する。他のジャンルの進化に取り残される。そうなった時、一体いくつの企業に本当のギャル「ゲーム」を作れる環境が残されているのか…

 ギャルゲーは消える。大変悲しいことですがこれは歴然とした事実なのかも知れません。特集記事は「炎は消えても灯火は守られる。それを信じたい」と結ばれています。しかし、本誌をすべて読んだ後には決して悲観的な印象ではありませんでした。正しく評価されていないだけで、こんな状況下であっても優れたゲーム性を持つ数本のギャル「ゲーム」が存在していることを証明してくれたソフト批評スペシャルと、本誌が長年提言し続けている「電撃G’sマガジン新企画室」に溢れるアイディアの数々…実現性はともかくとして、個人にはまだこれだけの活力があり、ギャルゲーへの希望を捨ててはいないのです。現状を嘆いていられる猶予期間はもう終わった。明日を求めるなら自ら武器を持って立ち上がれ!この手の魔法は未来を打ち抜く力。想いを照らす小さな光はきっと心の中にある。戦い続けることを諦めない諸兄必携の逸品です。

※画像使用許諾:2006/01/20
First written : 2006/02/09
Last update : 2006/08/17

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