monthly Book Review
戦争論2
作者 : 小林よしのり
出版社 : 幻冬舎

現在進行形の思想闘争漫画

 「戦争論」とは、現在進行形の思想闘争漫画「新ゴーマニズム宣言」の特別書き下ろし版であり、前作「戦争論1」は大東亜戦争肯定論をぶち上げて70万部を超える大反響を巻き起こしました。徹底的な客観的資料分析によって南京大虐殺・従軍慰安婦問題の論拠を一蹴し、戦後50年余りに渡って歪め続けられてきた日本の現代史に大きな一石を投じました。

 それから3年。その続編である「戦争論2」では、さらに深く踏み込んで、なぜ日本は戦争をしなければならなかったのか?を当時の世界情勢を踏まえて冷静に分析し、誰が何のために日本の戦争犯罪をでっち上げたのか?を徹底的に追求! 20世紀最後の奇書と呼ばれ、そして21世紀では最強の奇書になるであろう、「ゴー宣」の闘いは今もなお続いているのです。

正義とは、そもそも何なのか?

 本書の冒頭はアメリカの同時多発テロ事件の分析から始まる。この作品はただでさえ誤解を招きやすいが、この冒頭は相当に危険な賭けである。この冒頭の意味を理解することが出来ない人は、この作品を読むべきではありません。544ページもの頭脳挌闘には到底ついて来れないだろうし、無理をして読んでも曲解して恥をかくだけですからね。

 当然、テロは憎むべき行為である。だが、彼らを追い詰めたのは他ならぬアメリカが振りかざす「正義」だった。自国の利益を守るためにグローバル経済を推し進め、世界の警察を自負して他国に武力介入をし、アメリカ映画と資本経済で異文化を侵略する。だが、それはアメリカにとっての正義でしかない。イスラムにはイスラムの正義がある。正義と正義が衝突した場合、戦争を回避することはできなくなる。相手を打ち負かすしか自分が正しいと証明することはできないのだから。

 正義だから勝つのではなく、勝つから正義なのだ。つまり、正義とは時と場合によって変わる強者の論理でしかない。正義の反対は「悪」ではない。正義の反対は「敵の正義」なのである。

造られた戦後と歪められた現代

 2001年は日本にとって屈辱的な外交を強いられ続けた1年だった。歴史教科書問題で中国と韓国に内政干渉を許し、小泉総理の靖国神社公式参拝への非難に屈し、テロ事件直後にはアメリカの「Show the flag」発言に右往左往するばかり… だが、この惨状を招いたのは、他ならぬ日本のマスコミと知識人たちなのだ。南京大虐殺も従軍慰安婦問題も、根拠のない虚報であったことは、すでに国際的に認められている。認めていないのは中国と韓国の「政府」と、虚報をでっち上げた日本のマスコミと、それを煽り立てた知識人と、何の裏付けもなく謝罪をしてしまった日本の政治屋だけである。

 明言しておくが、現在の日本では「反権力リベラル(左翼)」こそが体制側なのである。彼らの権力は新聞・テレビ・知識人を総動員して自由自在に大衆を操作し、政府の方針すら変えさせてしまうのだ。火のない所に煙を立てて大火事にしてしまったのは彼らである。ほんの10年前までは歴史教科書でほとんど比重の置かれていなかった戦後日本史は、この10年で馬鹿バカしいほど変わってしまった。ひたすらに日本の戦争犯罪を捏造してまで告発する内容が大量に並び、ヒステリックな学習指導要領が教育現場に押し付けられているのだ。

 日本の戦後は戦勝国の都合で「造られた」ものである。だが、自らの手で日本という国の主体性を取り戻そうとしなかったのは、日本人自身の責任である。戦前の日本を扱き下ろす謝罪外交によって、免罪符を得た気になっている知識人たちは、それがどれほど重大な歴史的蛮行であるかも知らずに、「日本」を解体してしまったのである。

失われた日本の歴史を取り戻すために

 歴史は二代途切れたら消滅する。子供や孫から理解してもらうことに絶望して口をつむぎ、あの世で戦友たちと語り合うことだけを楽しみにして余生を送っていた老人世代。そして、親世代が唱える幼稚な「平和念仏」にただ意味も無く反発して、捏造された歴史教育を受けてきた孫世代… 日本は今まさに、歴史が消滅しかねない瀬戸際に立っているのである。

 だが、この作品が老人世代と孫世代の橋渡し役になることによって、歴史は自浄作用を回復させつつある。下は10代から上は90代まで、実に幅広い層の読者がこの作品に触れて目を覚ましつつある。失われた日本の歴史を取り戻す…自他ともに認めるゴーマン漫画家:小林よしのり氏が人生を賭して取り組んでいるこの思想闘争によって、ひとりでも多くの若者が祖父母たちから受け継いだ「日本」という国の重みに気付いて欲しい。

 私達が今なすべきことは、戦前の愚かな過ちを告発することで免罪符を得ることではなく、戦前の日本人への感謝の心を忘れないことである。私達には次の世代に歴史というバトンを渡す義務がある。どうせなら、胸を張って遺したいではないか! 語り伝えること、それこそが歴史なのだから。