「Missing Blue」とは?
ノベルタイプの恋愛アドベンチャーゲームのジャンルで、一部に根強い人気を持つ、トンキンハウスの「Lの季節」。その世界観を受け継いだ新作、それが「Missing Blue」です。 シンプルで繊細な渡辺明夫さんのイラストに惹かれて興味を持った人もいるでしょうし、私のように声優さんのサイン&握手会の整理券が目的だった不純な(?)動機の人も、新規のファンも、なんにせよ偶然であれこのゲームに触れることが出来たのは幸運でした。今時50時間以上も飽きずに遊べるアドベンチャーゲームなんて、なかなかありませんからね。世界観やキャラクターに直接的な関連はないので、「Lの季節」未経験者でも問題なく楽しめます。(かくいう私も「Lの季節」未経験者ですしね)。 幻想への誘い、現実への回帰 物語の舞台は、現実と幻想の狭間に存在する、不安定な移ろい行く世界。主人公は9人のヒロインたちと関わっていく中で、徐々にこの世界の正体に気づいてゆき、無意識のうちに世界の行く末を選択していくことになります。幻想の世界を捨て現実の世界に戻るのか、現実の世界を捨て幻想の世界に進むのか、それとも、このまま現実と幻想との狭間の世界に安住するのか?それがこのゲームの主題である「幻想への誘い、現実への回帰」の意味です。 このゲームには魅力的なキャラクターが多数登場します。攻略対象の9人のヒロインは勿論のこと、脇役たちもいい味を出しています。36代目桃太郎(趣味はポエム)とその一味とか、性格極悪の妖精エリス(武器職人)とか、謎の武器仲買人愛菜稚ちゃん(謎だらけ)とか… そもそも、ヒロインたちも騎士道娘だったり、ナマハゲだったり、人魚だったり…と、かなりぶっ飛んだ設定で負けていません。それでも不自然に感じさせない、この世界観と演出は貴重なものだと思います。 選ぶという痛み この作品はかなり特殊な構造になっています。1回のプレー時間は5〜6時間と標準的なのですが、1人のヒロインのシナリオイに対して、常に3〜4人のキャラの話が割り込んでくるわりに重複が少なくてスキップしにくいので、展開が冗長に感じてしまい、泣き所での盛り上がりに少々欠けてしまうという短所もあります。 ギャルゲーの目的は、究極的には誰かと結ばれるためにある以上、選ぶことのできる「人と答え」は1つだけです。しかし、「ただ一人を選ぶ」ということは痛みを伴います。 このゲームの舞台は、主人公の空想が生み出した現実と幻想の狭間の世界なのだから、結果として選ばれなかったヒロインたちは、この世界から消滅(退場)することになってしまうのですが、その時に酷い罪悪感を感じてしまいます。後ろ髪を引かれる思いで、「すまん!次は君を選ぶぞ!」と思わせる演出はとても面白いのですが、選んだヒロインよりも、消えてしまったキャラのことが気になってしまう場合もあるのが困りものですが… 何かを選ぶということは、何かを捨てるということであり、真実を求めるということは、心地よい夢から覚めることです。分岐選択肢型のゲームシステムそのものを逆手にとって、「選ぶという痛み」を表現しようとしたのは意欲的な試みだったと思います。即効性の感動は薄いけど、後でじわーっと染み出してくるような不思議な感覚を味わうことが出来ました。奇跡とかお約束な展開とか、即効性の演出技法が多用されるたり、突飛な設定が氾濫するこの手のジャンルにあって、こういうやりかたも「あり」だと思います。 First written : 2001/09/01
Last update : 2003/10/31 やったことのある人にしか分からないMBヒロイン選評
|