高機動幻想ガンパレード・マーチ
PS販売:SCE   2000/9/28 発売
 戦術・育成  学園戦闘SLG  120時間 
開発:アルファシステム
無名の奇跡

 2000年9月28日、PSでひっそりと一本のゲームが発売されました。「俺の屍を越えてゆけ」などの開発会社として知られるアルファシステムの若手スタッフが作り上げたそのゲームは、ゲーム雑誌各誌ではそれなりに高い評価を得たものの、完全に無名の存在でした。発売前の広報宣伝活動は一切行われず、電撃以外のゲーム雑誌はろくに記事にすらされませんでした。そのゲームの名は、学園戦闘シミュレーションゲーム「高機動幻想ガンパレード・マーチ」(以下、GPM)。

 しかし、ネットを中心にした評判が口コミ的広がり、じわじわと支持を伸ばし、限りなくゼロの広報宣伝予算にも関わらず、ゲーム不況のこのご時世で約18万本というスマッシュヒットを記録しました。そしてついには日本ゲーム大賞にノミネートされ、優秀作品賞を受賞してしまったのです! それはまさに、まさに無名の奇跡と呼ぶに相応しいものでした。

果てしない自由の先にあるもの

 第二次世界大戦の最中、何の前触れもなく現れた人類の天敵「幻獣」との50年にわたる戦争に惨敗を続け、追い詰められた人類。幻獣軍の攻勢によってユーラシア大陸を失った人類が、起死回生の手段として決議したのは、熊本要塞による本土防衛と学徒強制召集であった。学徒召集された少年少女らによる急造部隊…そのひとりがこのゲームの主人公「速水厚志」15歳である。戦時下という非日常と、学園生活という日常野中で、戦場で生き残るために訓練を重ね、束の間の平和な学園生活を謳歌する。それが、ガンパレードマーチの概要です。

 このゲーム最大の特色は、考えられるあらゆる行動の自由を保障することによって、あらゆるプレースタイルを可能にしている点です。やりたければ何でもできるけど、やりたくなければ何もしなくてもいい。授業に出なくてもいいし、仕事しなくてもいいし、訓練しなくてもいいし、気に入らない奴がいたらブン殴ればいいし、恋愛は二股も三股もやりたい放題…なのです。強制は一切ありません。主人公の活躍如何では、人類の存亡を左右することもできてしまいます。

 やり方によっては非常識な鬼畜プレーも可能です。司令官になって激戦区を転々としたり、別れ話のこじたキャラや気に入らないキャラを作戦会議で歩兵に降格して敵に突撃死させたり、整備士に配置換えして戦場に出なくてもいいし、靴下ハンターになって倒錯した趣味に走ったり、守銭奴になってひたすら金儲けに走ったり… 死にさえしなければもう、なんでもありなのです。

 よく、「自由度が高いゲームは何から手をつけていいかわからない」という状態に陥りがちだが、GPMは誰もが自分のプレースタイルを見つけることができます。センス溢れる台詞と世界の謎と、あらゆる趣味のツボを抑えた魅力溢れるキャラクター達。ふと気がつけば「自分色に染め上げたGPMスタイル」が見えてきます。

 果てしない自由の先にあるもの…それは自由という個性です。

物語が終わり、ゲームが始まる

 世界の謎を夢中で追いかけて戦場を走り抜けるファーストマーチ(1周目)が終わると、爆笑と脱線のセカンドマーチ(2周目)が始まります。今までNPCだったキャラを主人公として選択可能になり、主人公の視点が変わることで意外な一面が見えてきます(特に前主人公の速水厚志の印象が…)。さらにディープにGPMの世界にはまってしまい、気がつくと100時間なんてあっという間! 最近のゲームはつまらないと歎いている歴戦のゲーマー達に、ぜひオススメしたい、歯ごたえのある至極の逸品です!

 最高のゲームの定義は百人百様だと思う。では、その最大公約数的な定義とは何なのか? それは「何百万本売れたのか」「映像がすごいかどうか」などで計れるものではないと思います。最も大切なのは「最高の『いれもの』を用意すること」ではないだろうか? ゲームとは、架空の物語であると同時に箱庭なのです。本当に楽しいゲームというものは、その世界に触れているだけで楽しいものです。同じ事を何度やっても楽しい。それが最高のゲームというものではないでしょうか?

 GPMは自由度を突き詰めることでゲームが本来持っていた楽しさをプレーヤーに思い出させてくれる、偉大な作品だと思います。このゲームに触れることのできたプレーヤーは幸せ者です。また、このような傑作を正当に評価し、私がGPMを購入するきっかけを作ってくれた日本ゲーム大賞に深く感謝したい。

 物語が終わり、ゲームが始まる… 繰り返される永遠の日常の中にこそ、最高の楽しさはあるのかも知れませんね。

First written : 2001/06/01
Last update : 2003/10/21