monthly Manga Review
かしましハウス
作者 : 秋月りす
本誌 : 月刊まんがライフオリジナル
単行本 : 全8巻

かしましハウスとは?

 古今東西、四人姉妹の物語はたくさんあります。小説だけでなく映画やドラマにもなっている。元はやはり『若草物語』でしょう。作者談によると、この「かしましハウス」も「若草物語」から思いついたものです。しっかり者の長女、元気な次女、やさしい三女、おちゃめな四女。というキャラクター設定もそのままに、秋月流に四人姉妹を描いたら、こんなんなってしまいました。

 ロマンチストで少女趣味に走りがちな長女『ひとみ』はジュニア小説家。でも、夢見がちな割りにリアリストだったりもする。 男勝りの体力と性格でいつも元気はつらつ次女『ふたば』はOL。でも、妙なところで負けず嫌いだったりもする。 いつもぼーっとしているか寝ている謎多き三女『みづえ』は女子大生。でも、時々妙に鋭くて寝ていても幸運が転がり込んでくる。 ホットでクールなしっかり者四女『よもぎ』は小学生。でも家族のなかでは一番大人。 娘4人に囲まれた男やもめのお父さん(名前不明)。つい寂しくて飼い犬にはメス犬なのに「ゴロー」と名前を付けてしまったりもする。

 どこにでもありそうでなかなかいない、幸せそうだけどちょっと変な家族の日常生活。それが「かしましハウス」なのです。

平凡という才能

 この漫画にはストーリなんてありません。まったり、のんびり、さっぱり、ちゃっかり、しっかり、だらだら、ほのぼの家族生活。なんでもない日常でも、個性の強い4人が集まれば、それだけで十分楽しい。365日、日常生活のすべてがネタになる。肩の力を抜いた自然体で作者自身が描いている姿が、読者の目に浮かぶようです。

 平凡という幸せ。それは誰もが薄々感づいていることなのですが、雑多な毎日と喧騒に追われているうちにいつしか忘れてしまいます。今の自分を愛することができず、「本当の自分はこんなものじゃない」と現実から目を逸らし、背伸びばかりしている。そんな疲れた現代人の心に、この作品は「平凡という才能」もあるのだということを思い出させてくれます。