GM-ken Manga Review
魁!クロマティ高校とは? 皆さんは、「ミスターマガジン」という漫画雑誌が、かつて存在していた事をご存知でしょうか?雑誌名を知っている人は漫画愛好家の10%くらい、実際に読んでいた人は, その3%にも満たないという、非常にマイナーな雑誌でした。何故過去形なのかと言うと、この雑誌は2000年1月に休刊になってしまったからです。知る人ぞ知る個性的な作品を数多く輩出してきた雑誌であり、当時、私はこのマイナーな漫画雑誌の休刊を心から残念に思ったものです。 しかし、この突然の休刊によって、連載作品も連載作家も宙に浮いてしまいました。有力な作品は他誌に乗り換えたりできたが、救われないのはマイナーながらも独特の世界観を守ってきた個性派作家たちである。今回紹介する 「野中英次」氏もそのひとりです。「ドリーム職人(全3巻)」 「課長バカ一代(全7巻)」という実績があったものの、発行部数は少なく増刷もかからず絶版寸前というありさま… 休刊とともに引退説も囁かされる中、野中氏は誰もが予想しなかった意外すぎる大栄転を遂げることとなったのです。それが、週刊少年マガジンで連載を開始した、「魁!!クロマティ高校」だったのです!
「魁!!クロマティ高校」は6ページのショートギャグ漫画です。絵柄は、シリアス:池上遼一系。ジャンルは、ギャグ漫画…のはずです。なぜ明言できないのかというと、この漫画が、今までに無かった種類の不条理ギャグ漫画だからです。 そもそも、タイトルからして理解不能です。なぜ「クロマティ」なのか?札付きワルの巣窟の高校という舞台設定でありながら、バイオレンスな展開は一切ありません。比類なきお馬鹿サン集団なのに、話していることは結構まともだし、むしろ男気すら感じてしまいます。 しかし!その「まともさ」と「常軌を逸するお馬鹿さん」が結合した時、どうしようもない強烈な笑いが込み上げてくるのです。2コマごとに腹のよじれるような笑いが、ページをめくるたびに、思考を停止させるようなカウンターパンチが襲ってくる。こ、これは凄い!狂気にも似た凄まじいギャグ漫画「論理脱力系ギャグ漫画」の発明です! 予想を越える大反響 「クロマティ高校」の単行本第一巻の初版発行部数は、週刊少年マガジンでは異例の少なさでした。誰もが、この漫画が売れるなんて思ってもいなかった。マガジン編集部はもちろん、担当編集者でさえも、そして、作者本人ですら売れるなんて思ってもいなかった。しかし、いざ蓋を開けてみると、売り切れ店続出ですぐさま大量増刷が決定!同時に、絶版も同然だった野中氏の過去作品にもスポットライトが当たり、野中英次作品は一躍書店の平積みコーナーに…まだまだ日本の漫画愛好家たちの眼は死んでいなかったのです!そして、あれよあれよと言う間に第26回講談社漫画賞を受賞。そして、誰もが信じなかったアニメ化までも実現してしまいました。漫画史上に残る快挙か?それとも暴挙かも? それにしても、この漫画の笑いの種類には、狂気じみた一面があるのも事実です。この漫画で笑えるということは、私自身がそういう狂気を秘めているからなのだろうか?そういう不安に駆られてしまうほど強烈なパワーが、この漫画にはあります。まぁ、騙されたと思って一度読んでみて下さい。おそらくそれはあなたにとって、かつてないギャグ漫画体験になるでしょう。それがあなたに合うかどうかは別問題ですが… 肌が合わないからといって「騙された!」と怒らないで下さいね。こういうものが好きで好きでしょうがない人間も世の中にはいるのですから… First written : 2001/04/01
Last update : 2003/01/24 愛称:のなー 星座:蟹座(らしい) 性格:死ぬほど面倒くさがり、なげやり 略歴
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