サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜
DC販売/開発 : セガ / オーバーワークス / レッドカンパニー
 恋愛・ドラマ  ドラマチックADV  28時間 
プロデュース:広井王子、キャラデザ:藤島康介

Dreamcast最初で最後の名作

 今やセガの看板タイトルとなった「サクラ大戦」。ドラマチックアドベンチャーというゲームジャンルを確立し、マルチクリエータ「広井王子」の指揮のもと、TVアニメ・OVA・CD・舞台歌謡ショー・クリスマスディナーショー・桂由美ブライダルショーなど、ゲームの枠を越えたあらゆるメディアで、作品世界の展開を行ってきました。ゲーム単体の販売本数は平凡ですが、「サクラ大戦」がゲームの文化的地位の向上に大きな貢献を果たしたことは、その功罪は別として、ゲーム史に残ることでしょう。

 1998年4月の「2」発売以来、丸三年ぶりの待望の新作、それが「サクラ大戦3」なのです。妥協を許さないクオリティの追求には、長い研究と熟成期間が必要でした。しかし、その代償はあまりにも大きかった…看板タイトルの不在で不振を極めていたDreamcastの生産中止と、セガのハード撤退宣言。かつて、ゲーム業界から足を洗うことを決意していた広井王子氏をゲームの世界に引き戻した「サクラ」の生みの親:製作総指揮者:入交昭一郎社長の引責辞任。そして、セガ最大の理解者:大川功会長の急逝… かつてない逆風の中、「3」は発売されました。Dreamcast最初で最後の名作として…

花の都に咲く、もうひとつの花組

 「3」の物語の舞台は、「2」の一ヵ月後、フランスは巴里 (パリ)。20世紀初頭の巴里は、花の都と形容するに相応しい芸術・科学技術・歴史と伝統を誇る先進都市であった。その巴里に一人の日本人が降り立った。彼の名は「大神一郎」。大神は、対降魔迎撃秘密部隊:帝国華撃団花組の隊長として、二度の帝都大戦を勝利に導いた功績により、新たに創設された「巴里華撃団」の隊長に着任することとなったのです。

 設立されたばかりの巴里華撃団の初仕事は、隊員探しから始まった。強い霊力を持つ5人の新隊員は、いずれも非常に強い個性の持ち主だった…機関銃を乱射する突撃暴走天然シスター「エリカ」、決闘上等!斧を振り回し誇りに生きる名門貴族令嬢「グリシーヌ」、元気はつらつサーカスの人気者少女「コクリコ」、懲役1000年!稀代の女大悪党「ロべりア」、喪服の花嫁は大和撫子「北大路花火」…人一倍「個」を重んじるフランス人に、チームワークを教えるのは困難を極めました。

 そんな大神のピンチに現れたのは、日本からやってきた帝国華撃団花組のメンバーたちでした。先輩としてチームワークの大切さを教え、臨時コーチを務め、時には危険な別働隊に志願すうr。そんな先輩の姿に多くを学び、巴里華撃団はようやくチームとしてまとまり、強大な敵に打ち勝つことができたわけです。巴里華撃団がひとり立ちする…それは同時に、大神の任務終了と日本への帰国を意味していた…果たして、巴里の恋の行方は?(それはあなたの行動次第です)

もう一歩先へ… 進化の極地へ

 「3」でもっとも驚かされたのはグラフィックの美しさ。アニメーションとCGとポリゴンの融合。このシリーズ開始以来の設計思想は、今ここにひとつの完成を見たといっても過言ではないでしょう。通常の2次元グラフィックも、ブラウン管の発色限界を超える美しさ!これは最早鬼気迫るものすら感じてしまいます。アニメCG表現に特化したDCというハードだからこそなせる技です。

 システム面も順当に進化しています。LIPS(時間制限付選択システム)には、「アナログLIPS(行動や発言のニュアンスを微調整)」が導入され、単純な選択肢にはない緊張感と奥の深さを実現。戦闘システムには、行動力という概念と作戦(風・林・火・山)が直結し攻防が一体化。戦闘時のマス目もなくなり戦術要素を強化。ユーザーからの要望の強かった必殺技CGのキャンセルも導入され、一部の隙も無い完成されたシステムへと進化しました。

 Dreamcastというハードの市場性を捨ててまでして作り込んでいた意味がようやく分かった気がします。商売の論理では明らかに落第だけど、職人の論理としては尊敬するしかありません。もう一歩、もう一歩先へ…その飽くなきクオリティ追求の姿勢が生み出した進化の極地、それが「サクラ大戦3」なのです!

そして「サクラ大戦4」へ

 セガがついにハード事業から撤退してしまったため、セガのゲームが今後あらゆるハードで遊ぶこそができるようになるでしょう。歴史上初めてセガのゲームが国民的ゲーム機にデビューするのです。当然、その看板タイトルのひとつとして「サクラ大戦」シリーズに寄せられる期待は大きい。新規のファンを獲得するためには、前作までの物方を継承するか捨て去るかのいずれかが必要となります。今後セガがいかにして「サクラ」シリーズを世に広めるプロセスを踏むことができるかどうかが重要です。ただ単純に「1〜3」をPS2に移植すればいいというものではない。新規ファンにとってそれは経済的にも時間的にも負担が大きすぎます。

 DCで「サクラ4」を出すのは非常に難しい決断だったと思います。シリーズにひとつの区切りを付けることによって、サクラ大戦はキャラクターゲームから脱却してそのゲーム性の真価が問われることになるでしょう。最高の質を持ちながら環境に恵まれないこの名作に正当な評価を、陽の当たる場所を与えて欲しいものです。

First written : 2001/04/01
Last update : 2003/10/27