久遠の絆 再臨詔
DC
PS2
販売/開発 : FOG
 歴史・ドラマ  恋愛アドベンチャー  22時間 
キャラデザ:岸上大策

知る人ぞ知る名作
(C)1998 2000 FOG

 ゲーム雑誌「ザ・プレイステーション」や「Dreamcastマガジン(現:ドリマガ)」の読者投票で、常に高位置をキープし続けてきた作品があります。発売からすでに数年が経過し、販売本数も10万本に満たないにも関わらず、熱狂的な支持を集めている名作アドベンチャーゲーム。それが、今回紹介する「久遠の絆 再臨詔」です。

 このゲームの元祖であるPS版は発売前まで全く無名でしたが、週刊ファミ通のクロスレビューで殿堂入りを果たして、にわかに注目を集めました。しかし、弱小メーカー故の知名度の無さと資金力の弱さから、宣伝も出荷も十分にできないまま、年末商戦の大波に飲み込まれてしまいました。しかし、少ないながらも熱烈なユーザーの支持を受けて、遂にDCでのリメイク完全版の発売が実現したのです。

久遠の愛と嫉妬と憎しみの果てに…

 この作品は、輪廻転生を繰り返す愛の物語です。しかし、それは決して甘美な愛ではなく、血と罪と嫉妬と憎しみにまみれた狂おしい愛なのです。使命を捨てて神を裏切って愛を選んだ天女:蛍と、闇の皇子の運命に抗う若者:安倍鷹久。二人は神の怒りに触れて永遠の刻を繰り返す罪を課せられることとなる。二人は転生して何度でも出会い、やがて自らの罪を思い出し、そして抗えない運命によって引き裂かれ、再び死に別かれる。平安の御世から1000年もの刻を経ても続く、悲劇の物語… その果てに生まれたのが主人公:御門武と、ヒロイン:高原万葉なのです。

 しかし、転生しているのは鷹久と万葉の二人だけではありません。二人に想いを寄せる人間も、久遠の刻を越えて二人を追いかけているのです。鷹久を実の兄のように慕っていた義理の末妹:賀茂桐子。鷹久に密かな想いを寄せていた叔母:泰子。蛍に想いを寄せていた鷹久の実の兄:安倍晴明。そして、鷹久を憎み続ける義理の兄:賀茂光栄。彼らは何度でも転生して他人として出会い、そして運命に引きずられるように、惹かれ合い殺し合うこととなる。狂おしい愛は、嫉妬と憎しみという激情に姿を変えて、悲劇を繰り返していく… 神去りし後、自浄の力を失い淀みと混沌の限界を迎えた現代の日本で、ふたりは輪廻を終わらせる最後の戦いに挑む…それが「久遠の絆」のあらすじです。

文学を超える可能性

 このゲームの最大の特色は、圧倒的なテキスト量にあります。トゥルーエンドに辿り着くまでには最短ルートでも10時間はかかります。しかもヒロイン3人のシナリオ+おまけシナリオもあり、全クリアにはスキップ機能を使っても20時間程度が必要です。しかし、この長大な物語であっても、中弛みすることはまったくありませんでした。それは文学の域にまで達した設定へのこだわりによるものだと思います。

 陰陽術や日本神話など、現代日本人には馴染みの無い素材をふんだんに盛り込んで、丁寧に時代背景・人間関係・感情の機微を描写されているし、巧みに構成されたシナリオは、謎を隠すのではなく、敢えて序盤に教えてしまうことで、「運命に翻弄される悲劇」を受け入れられる下地を作っています。泣く事すら許さない哀しさ、運命をどうすることもできない歯痒さ… そしてプレイヤーは自らの手を血で汚して、またひとつ、またひとつ罪を重ねていくのです…

 その反動は最後の最後で溢れだしてしまいます。それは悲しみの涙ではなく、感極まった果ての涙です。この感動・達成感・一体感は、決して小説でも映画でも味わうことの出来ないものです。ゲームには文学を超える可能性があることを証明してくれました。「最近のゲームはつまらない」などと歎いている暇があったら、この作品をプレーしていただきたい!二度とそんな台詞は吐けなくなるでしょう。是が非でも体験していただきたい歴史的名作です!!

※画像使用許諾:2002/04/12
First written : 2001/04/01
Last update : 2002/04/12