GM研ゲーム大賞2003


■「GM研ゲーム大賞2003」とは?

 GM研ゲーム大賞とは、その年に発売されたゲームに対して、GM研が最高の敬意を表して勝手に表彰しているものです。この賞そのものには何の権威も特典も影響力もありませんが、ユーザーの声を完全に無視して企業サイドの都合の良い出来レースと成り果てたCESAのゲーム賞に比べれば、1ユーザーがあきれるほどの時間とお金と労力を費やして、消費の最前線で作品を見聞き・選び抜き・遊び抜いた、実際の体験に基づく「生の声」を反映している個人による表彰の方が、遙かに信頼に足ると言えるのではないでしょうか?


■ゲームデザイン部門賞(nominate)

 【脚本賞】 
 ・テイルズ オブ シンフォニア
 ・ミッシングパーツ3
 ・ロケットの夏

 脚本賞=シナリオ賞にノミネートされたのは、上記の3本です。壮大な世界の謎を描き、悲痛で重いテーマを正面から突破して見せた「テイルズ」のシナリオは見事だったし、シリーズ3部作の完結編としての役割を十二分に果たした「ミパたん3」も良かった。そして、本来ならば表彰対象期間から洩れてしまった「ロケットの夏」も、特例措置として緊急ノミネート!ダークホースの登場で賞の行方は?

 【演出賞】 
 ・悪代官2 -妄想伝-
 ・魔界戦記ディスガイア
 ・ロケットの夏

 トータルでの演出を評価する演出賞には、上記の3本がノミネートされました。妄想パワーを爆発させて、トホホな妙技に磨きをかけた「悪代官2」。愛と勇気と行動力という伝統を打破して、冗談みたいな新種のお笑い路線を確立した「魔界戦記ディスガイア」。そして、限られたスペックで演出効果を最大限に引き出した「ロケットの夏」。稀に見る激戦となった演出賞の行方は?

 【設定賞】 
 ・悪代官2 -妄想伝-
 ・テイルズ オブ シンフォニア
 ・ファイアーエムブレム烈火の剣

 細部に渡るこだわりやトータルでのコンセプトを評価する設定賞には、上記の3本がノミネートされました。アイテム解説の一字一句に至るまで徹底してふざけ倒す「悪代官2」。圧倒的な完成度を持つ世界を構築し、遊び手が能動的に世界を楽しむことを可能にした「テイルズ」。前作との繋りという縛りの中でも魅力的な世界を再構築してみせた「FE」。横一線状態のこだわり賞の行方は?

 【企画賞】 
 ・ボクらの太陽
 ・DEAD OR ALIVE Xtream Beach Vollyball
 ・MELTY BLOOD

 企画が実現した事そのものの意義を評価する「企画賞」には、上記の3本がノミネートされました。冷夏という不運はあったものの、新しい発想の面白さをみせた「ボクたい」。Xboxはこのためにあった!とさえ思える「DOAX」。TYPE-MOONと渡辺製作所、同人界が生んだ両巨頭による夢の競作「メルブラ」。最高の企画は誰の手に?

 【美術賞】 
 ・Wind -a breath of heart-
 ・プリンセスホリデー
 ・魔界戦記ディスガイア

 トータルの視覚デザインを評価する「美術賞」には、圧倒的に繊細な背景画と陰影と色彩感覚を発揮した「Wind」と、明るくて柔らかくてシンプルな色彩で正統派ファンタジー世界を描いた「プリンセスホリデー」と、3D全盛のご時世に職人芸の2Dドット絵のテイストを守り、チビキャラを生き生きと描いてみせた「魔界戦記ディスガイア」。三者三様の視覚意識へのこだわりの行方は?

 【システム賞】 
 ・ヴィオラートのアトリエ
 ・True Love Story Summer Days, and yet...
 ・魔界戦記ディスガイア

 インターフェースの使い勝手や読み込みの軽快さ、さらにシステムバランスを含めて評価する「システム賞」には、止め時がつかめないほどの超高速レスポンスを実現した「ヴィオ」。現実とゲームを割り切ってシステムのシンプル化を成功させた「TLS-S」。モード間での読み込み以外で完全な読み込み無しを実現した「ディスガイア」。この3本がノミネートされました。最高のシステムの条件とは?

 【エフェクト賞】 
 ・プリンセスホリデー
 ・魔界戦記ディスガイア
 ・ロケットの夏

 ゲーム中でのさりげない演出効果(エフェクト)を評価する「エフェクト賞」には、コミカルタッチのカットインCGという手法を効果的に使った「プリンセスホリデー」と、レベルアップ時のガッツポーズや多彩な技とアクションで楽しませてくれた「ディスガイア」と、矢印や効果音でさりげない演出効果を引き出した「ロケットの夏」、この3本がノミネートされました。別名:いぶし銀大賞の行方は?

 【OPムービー賞】 
 ・Wind -a breath of heart-
 ・テイルズ オブ シンフォニア

 オープニングムービーの出来栄えを総合的に評価するこの賞には、新海誠アニメーションと、ハーモニカの旋律と、長谷川めぐみの歌声が奇跡の融合を果たした「Wind」と、ProductionI.Gの精鋭スタッフ60〜70名が10分のアニメを半年もかけて作り上げた、歌詞と完璧にシンクロする秒間30コマアニメの「テイルズ」。極めてハイレベルな一騎打ちとなった賞の行方は?

 【作曲賞 : 】 
 ・エンディング(True Love Story Summer Day, and yet...
 ・Painfull Rain (ミッシングパーツ3

 最も印象に残ったゲームBGMに贈られる「作曲賞」には、クリアの余韻と切なさを描く岩垂節が如何なく発揮された 「TLS-S」のエンディングテーマ曲(タイトルそのまま)と、 シリーズ最高の名場面で使われた「ミッシングパーツ3」の「Painfull Rain」、この2曲による一騎打ちとなりました。真の名曲とは、聴くたびに名場面を思い出させる記憶の鍵となりえます。記憶の印象派の頂点に立つのはどっち?

 【主題歌賞】 
 ・夜霧の悪代官 (悪代官CD)
 ・Wind (Wind -a breath of heart-
 ・Starry Heavens (テイルズ オブ シンフォニア

 最も優れたゲームの主題歌に贈られる「主題歌賞」には、 上記の3曲がノミネートされました。まさかまさかのCD化で、プロデューサーみずからコーラスで参加している「夜霧の悪代官」。アニメ・歌詞・楽曲、さらに最高の歌声がプラスされた「Wind」。単なるメジャータイアップ曲ではなく、day after tomorrowの良さを引き出した「Starry Heavens」。 最高の一曲に輝くのはどれ?

 【やり込み賞】 
 ・Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!3
 ・実況パワフルプロ野球10
 ・魔界戦記ディスガイア

 ゲームのやり込み度(中毒性)を評価するこの賞には、 「サカつく3」「パワプロ10」「ディスガイア」、この3本がノミネートされました。いずれも100時間越えを保証できる高い中毒性を持つ作品ばかりであり、遊べば遊ぶほど味が出てくる性質があります。やり込み人だけではなく、時間をかけて1本のゲームを遊ぶことの楽しさを教えてくれる、最高の1本とは?


■キャラクター部門賞(nominate)

 【主演男優賞】
 ・羽流内匠頭助兵衛 (悪代官2 -妄想伝-
 ・ロイド・アーヴィング (テイルズ オブ シンフォニア
 ・真神恭介 (ミッシングパーツ3

 ゲームキャラクター部門「主演男優賞」には、前作に引き続き悪代官をパワフルにトホホに好演してくれた、悪役商会の千本松喜兵衛氏。熱くて真っ直ぐな等身大の勇者を演じきった「テイルズ」のロイド。一人前の探偵として事件を解決してみせた「ミッシングパーツ3」の真神恭介。確かな存在感で遊び手の期待と感情移入に応えてくれた3者の頂点に立つのは誰?

 【助演男優賞】
 ・弁天堂菊蔵 (悪代官2 -妄想伝-
 ・キャプテン・ゴードン (魔界戦記ディスガイア
 ・チャック (ロケットの夏

 名作は名脇役の存在があってこそ!最も印象に残ったゲームの脇役に贈られるこの賞には、クールでダンディなおじさま「弁天堂菊蔵」を演じてくれた、悪役商会の立花十四朗氏。ディスガイア最強のお笑いキャラを演じてくれた、キャプテン・ゴードン。お笑い担当だけじゃなくて、美味しいところをちゃっかり持っていった「ロケットの夏」のチャック。超個性的な3人による異種格闘技戦の勝者は誰?

 【主演女優賞】
 ・夏海 千星 (ロケットの夏
 ・香奈城 歩 (ロケットの夏
 ・セレン (ロケットの夏
 ・ベルチア (ロケットの夏
 ・はるひ (ロケットの夏

 その年で最も印象に残ったゲームのヒロインに贈られるこの賞ですが、今年の選考では大波乱が起きてしまいました。なんと、ノミネートされた5人すべてが同一作品から選出されてしまったのです。しかも、この5人という数字は、「ロケットの夏」のヒロイン全員の人数と同じです。それほどまでに、この作品が魅力的だったというわけですが… 前代未聞の大乱戦となった今年のベストヒロインの座は誰の手に?

 【助演女優賞 :】
 ・紫光院霞 (Wind -a breath of heart-
 ・るり姉 (True Love Story Summer Day, and yet...
 ・エトナ (魔界戦記ディスガイア

 名ヒロインが輝くのも、攻略不可の脇役ヒロインの存在があってこそです。この賞には、「Wind」で脇役ながら抜群の人気を博した、お嬢さまキャラの「紫光院霞」。「ディスガイア」のダークな設定を、次回予告の嘘みたいなノリで最高のお笑いに変えてしまった「エトナ」。主人公の姉として強烈な存在感を示してくれた「TLS-S」のるり姉。以上の3人がノミネートされました。メインヒロインを圧倒してしまいかねない、女の戦いの行方は?


■GM研ゲーム大賞2003 受賞作発表!

 【脚本賞 : ロケットの夏】 
 脚本賞に輝いたのは「ロケットの夏」。先日の秋のCレヴォで先行無料配布した「創刊準備号」では、影もカタチもなかったのですが、これは、その頃までは発売日の関係上、2003年のノミネート対象になっていなかったからです。私がこの作品に出会ったのは、ゲームの発売から約1年後、同人誌「がんばれ美月さん」に触発されたときでした。表彰規定に抵触するのは確かですが、しかし、この素晴らしき作品とその出会いを評価できなくて、ユーザー表彰のどこに意義があるのか!…というわけで、大賞の規定を「発売年」から「体験年」に変更する特例措置により、急遽参戦が可能になりました。このようなパワーを持った作品に出会えた事に深く感謝したい。

 【演出賞 : 魔界戦記ディスガイア】 
 演出賞に輝いたのは「魔界戦記ディスガイア」。個性的な3本による甲乙付け難い接戦となりましたが、やはり、会社のブランドイメージを一新してしまうほどの新鮮な演出の驚きを与えてくれたこの作品に、演出賞を贈る事に決定しました。演出とは表面的な美しさではなく、チェレンジャー精神に裏打ちされた、センスとコンセプトなのです!

 【設定賞 : 悪代官2 -妄想伝-】 
 設定賞に輝いたのは「悪代官2」。このような異彩を放つ作品が続編を出せるというのは、大変喜ばしいことです。どうしても前作と比較されてしまいますが、比較論さえ圧倒してしまうほどの妄想パワーで突き進んで見せたチャレンジ精神に敬意を表します。

 【企画賞 : DEAD OR ALIVE Xtream Beach Vollyball】 
 企画賞に輝いたのは「DOAX」。最高峰の3Dアクション技術とマシンパワーを使って、水着ギャルの描写に心血を注いで見せた、天晴れな馬鹿馬鹿しさ、これを評価しないようでは漢(おとこ)が廃るというものです。ただ、惜しむらくはXbox専用のため、ほとんどの人が体験できないことにありますが…

 【美術賞 : Wind -a breath of heart-】 
 美術賞に輝いたのは「Wind」。レビューでは散々酷評してしまいましたが、それもこれも素材個々のクオリティの高さを惜しんでこのことなのです。キャラの立ち絵が貧相に見えてしまうほど圧倒的な美しさを見せ付けた「Wind」の背景画と色彩感覚には、溜息さえ出てしまいます。

 【システム賞 : 魔界戦記ディスガイア】 
 システム賞に輝いたのは「魔界戦記ディスガイア」。133時間も遊んだのにまったく苦に感じさせないのは、快適なシステム設計があったからこそ。敢えてCD-ROMを使ってスピードを追求したその設計思想に、技術者として最大の敬意を表したいと思います。

 【エフェクト賞 : 魔界戦記ディスガイア】 
 エフェクト賞に輝いたのは「魔界戦記ディスガイア」。受賞理由は他の賞のノミネートとほぼ被ってしまいますが、チビキャラのちょこまかとした豊かなアクションによるさりげないエフェクトと、派手なのにテンポのいい必殺技の大胆なカットインエフェクトも、そのどちらも素晴らしかったです。

 【OPムービー賞 : テイルズ オブ シンフォニア】 
 OPムービー賞に輝いたのは「テイルズ オブ シンフォニア」。藤島康介キャラの魅力を完璧に引き出し、歌詞と楽曲と歌声に完全にシンクロするアニメのインパクトは絶大でした。たぶん、あのOPアニメを使ったCMを見なかったら、私がこの作品の購入に踏み切ることはなかったでしょう。コレットの純度100%の”照れ笑い”を一度は見ておいて欲しいものです。

 【作曲賞 : Painfull Rain(ミッシングパーツ3)】 
 作曲賞に輝いたのは、ミッシングパーツ3の挿入歌「Painfull Rain」。この曲はそれのみで聞いたら、何の変哲もない陰鬱なバラードにしか聞こえません。しかし、最高の名曲とは、最高の場面で使われてこそ、その威力を発揮するものです。ネタバレになるので詳しくは書けませんが…携帯着メロ配信を強く希望!(もちろん昔版で)

 【主題歌賞 : Wind(Wind -a breath of heart-)】 
 主題歌賞に輝いたのは「Wind」。これはもうダントツでした。ほぼ毎日聞き続けているのに、まだ飽きません。ドンマッコウの歌詞、ハーモニカの旋律、長谷川めぐみのボーカル、最高の素材が最高のバランスを示してくれています。ここにさらに新海アニメが加わるというから凄過ぎです。ゲームの主題歌としてこれ以上ない名曲と言えるでしょう!

 【やり込み賞 : 魔界戦記ディスガイア】 
 やり込み賞に輝いたのは「魔界戦記ディスガイア」。私は133時間プレーしましたが、それでもなお、幻のLv40のアイテムを入手できていないし、超魔王にも勝てていないし…ゲームのすべての要素をやりつくしたとは言えないのですが、いまだに「遊び足りない」とさえ感じている自分に驚かされてしまいました。史上最凶のやり込みSRPGの看板に嘘偽り無し!

 【主演男優賞 : 真神恭介(ミッシングパーツ3)】 
 主演男優賞に輝いたのは「真神恭介」。探偵見習いから真の名探偵へ、遊び手と同じ速度で成長していった主人公像は、こういう推理モノには極めて珍しい存在だと思います。周囲のキャラがあまりにも個性的で魅力的だから、ついつい主人公は地味になってしまうけど、彼自身に人を惹きつける魅力があるからこそ、その構図は成立するのです。

 【助演男優賞 : 弁天堂菊蔵(悪代官2 -妄想伝-)】 
 助演男優賞に輝いたのは「弁天堂菊蔵」。万事につけて「ぬかりまくり」の前作の大黒屋とは一味違って、弁天堂は「クール&ダンディ」という新しい悪徳商人像を見事に演じてくれました。笑いの質さえ変えてしまう彼の存在によって、この作品は単なる続編ではなくなった、と言っても過言ではありません。

 【主演女優賞 : 夏海 千星(ロケットの夏
 香奈城 歩(ロケットの夏)、セレン(ロケットの夏
 ベルチア(ロケットの夏)、 はるひ (ロケットの夏)】 
 同一作品による独占&全ヒロインがノミネート、という異例尽くしとなった主演女優賞に輝いたのは、「全員」です。今年のCESA大賞もビックリの5人同時受賞ですよ!あまりにも好きになりすぎてしまって、冷静に順位付けをすることができなくなってしまったのです。「1人に決められないなら選考の意味があるのか」という見解もあるかもしれませんが…それほどまでにこの作品のヒロイン像が魅力的なのだと受け取っていただければ幸いです。

 【助演女優賞 : エトナ(魔界戦記ディスガイア)】 
 助演女優賞に輝いたのは「エトナ」。ディスガイアがあのお笑い路線で成功できたのも、エトナの悪魔らしく無責任に茶化して事態をややこしくする悪ノリがあったからこそ。主演のフロンよりも何倍も目立っていました。助演の気軽なポジションだからこそ魅力的に描くことができた名キャラと言えるでしょう。


■特別賞

 【お笑い大賞 : 悪代官2 -妄想伝-】 

 【アニメーション賞 : みんなのうた「笑顔」 (新海誠) 】 

 【イベント賞:
日本一ソフトウェア創立10周年チャリティーコンサートin各務原】 

 【特典王 : ヴィオラートのアトリエ(限定版)】 


■2003年最優秀作品賞

 【魔界戦記ディスガイア】 
 GM研が選ぶ2003年の最優秀作品賞の栄冠に輝いたのは、最多の8部門にノミネートされ、6部門を制する圧倒的な強さを見せた「魔界戦記ディスガイア」です。私が最も敬愛するレビュアーである、元ファミ通の副編集長:渡辺美紀さんが書いたソフトウェアインプレションがきっかけで、日本一ソフトウェアの出世作「マール王国の人形姫」と出会ってから、私はずっとこの中小ブランドの作品づくりを応援してきたわけですが、この「ディスガイア」という新たな名作によって、ついにその真摯な物づくりの精神が大輪の華を咲かせる日が来てくれたことを、ファンの一人として、レビュアーとして、とても嬉しく感じています。商業ベースでは実売で約12万本に過ぎませんが、遊び手の視点を忘れて、表面的な技術力と定番に安住する大手の50万本・100万本ゲームなんぞより、日本一ソフトウェアのような地に足の付いた活動と作品づくりの方が、遥かに評価に値すると言えるのではないでしょうか? GM研はこれからも、志あるメーカーとクリエータを全力で応援していきます!!


GM研TOPページに戻る